中学で英語が得意になる! 第5回 英語が得意になる方法(4) リスニングにはコツがある!【後編】
「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能など、ますます「使う」力が求められている中学校の英語。一方、ベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)の調査(2009年)によると、「英語が苦手」と答えた生徒は6割に上っています。英語への苦手意識を払しょくし、英語の力を伸ばすためには、何が必要なのでしょうか?
前回までに続き、このシリーズでは、「世界の100人の教師」に選ばれたこともある関西大学教授の田尻悟郎先生に、中学英語のつまずきやすいポイントとその解決方法について解説していただきます。
今回は、前回に続き、リスニング力を伸ばすルールと、さらに聞く力を高めるリスニング強化法「シャドーイング」をご紹介します。
<中学で英語が得意になる!(動画)>
6 「r母音ルール」 ~ rの後ろに母音がくると、つながって「ラ行」の音に聞こえる場合がある
<5-3.リスニングにはコツがある!(動画)>
アメリカやカナダでは、rの音は舌を丸めて発音します。その次の音を出す時は、丸めた舌をもとに戻そうとするので、自然にラ行の音が出てしまいます。
たとえば
There is →「ゼアーリズ」
There are →「ゼアラー」
のように、ラ行の音が聞こえる場合がよくあります。
聞き取り上達のためには、自分もまねをして発音のトレーニングをすることが大事なんですね。
7 「h消滅ルール」 ~ hの音は聞こえない場合がある
hの音は弱いので、聞こえなくなることがよくあります。たとえば、
I like him.
はhの音が聞こえなくなって「アイライクイム」「アイライキム」のように聞こえます。
I like her.
の場合も、hの音を抜いて「アイライクァー」のように発音しても、あまり違和感がありません。文脈の中で判断できるので、頭の中で勝手にhを補ってしまえるのでしょうね。
本当にhの音が消えて、発音しなくなってしまった単語もあります。たとえば
hour(時間)、honest(正直な)などです。
これら7つのルールを頭に入れて、次の文章を見てみましょう。
This is Ann.
(連結:「ディシーズ」のようにつながる)
Ann is a good girl.
(連結・n母音:「アンニーザ」とつながる) (小さい「ッ」:dは消えて「グッガール」となる)
She often helps her mother.
(h消滅:hが消えて「アー」と聞こえる) (タダラ:「マダ」のように聞こえる)
Her mother is a nurse at a clinic.
(タダラ・r母音・連結:「マダリザ」のようにつながる)(連結:「ナーサッタ」のようにつながる)
ルールを頭に入れて英語の歌や音声をよく聞いてみると、あ、ここにも出てきた! とお気付きになることが多いことでしょう。
家庭でできるリスニング力強化法 ~ 「シャドーイング」
<5-4.リスニングにはコツがある!(動画)>
自分もネイティブの人と同じような発音ができれば、聞き取りもしやすくなってきます。ネイティブとまったく同じように話せるようになる必要はありませんが、極力まねをすることで、発音も上手になりますし、リスニング力も伸びていくのです。
CDなどを聞きながら、ネイティブの発音のまねをして言ってみる勉強法を、シャドーイングといいます。影のようについていくという意味です。
まずは、文字を見ながらCDに合わせて、音をかぶせるように読んでいきます。これをオーバーラッピングといいます。
シャドーイングは、文字を見ません。
では、次の文章を使ってシャドーイングをしてみましょう。
I live in Tokyo now.
But I’m from Shimane.
I like my hometown.
The air is clean and the water is clear.
When I was small, I went to the river with my brother.
He swam faster than me.
私は今東京に住んでいますが、島根の出身です。
私は生まれ故郷が好きです。
空気はきれいですし、水は澄んでいます。
小さいころは、兄と川に行きました。
彼は私より速く泳ぎました。
ネイティブの発音は、「ジ エアーイズクリーン、ザ ウォーターイズクリア」
とは聞こえませんよね。発音のまねをすることで、日本語にはない音が聞こえるようになってきます。
つまり、
言える=聞くことができ
書ける=読むことができる
というわけです。
ですから、リスニングやリーディングを強くしたければ、「しゃべる」練習、「書く」練習が必要なんですね。
シャドーイングは、家庭でもできる勉強方法です。お子さまがヘッドフォンなどで教科書本文の音声を聞いてまねをし、保護者のかたは教科書を開いて正しく読めているかチェックしてあげる、という協力態勢をとるのがいちばんよいでしょう。
次回からは、教科書本文を使って、家庭で簡単に応用力を付ける方法をご紹介します。
『田尻式フォニックスかるた』 <ベネッセコーポレーション/田尻悟郎(編)/3,150=税込み> |