「親子留学」って何?【後編】~チャレンジし合うことの大切さ

小学校でも英語が教科化されるなど、英語教育への関心が高まる中、親子で英語圏に出かけて、気軽に生きた英語にふれられる「親子留学」が注目されています。
前編に続き、今回は、実際に親子留学に行かれた親子の体験談もまじえ、参加するにあたって保護者が注意すべき点について豊田先生に伺います。



子どもは体験から学ぶのが得意

海外に行くなら、ある程度英語を話せるようになってからのほうが効果的では……という考え方もありますが、たとえ話せなくても、子どものうちに海外体験をさせることには意味があります。
まず、音を聞き取る能力は子どものほうが優れている、という点が挙げられます。成長するにつれ、聴覚は母語寄りにチューニングされ、日本語にはない外国語の音を聞き取る力は下がっていきますから、幼いころに生の英語にふれておくのは効果的です。
また、子どもは論理の組み立ては苦手ですが、感覚をフル稼働させて体験から学ぶことが得意です。生活の場のコミュニケーションにおいては、聞き取れる言葉をつなげて推測したり、ジェスチャーをまじえてなんとか言いたいことを伝えたりするなど、五感を総動員することが必要ですが、そういう力は「まちがえないように」と頭で考えて行動しがちな大人に比べ、子どものほうが勝っているのです。ただし、突然、まったく日本語の通じない環境に置かれると、子どもはパニックを起こしてしまいます。
ですから、保護者と共に安心して生の英語にふれられる「親子留学」は、初めての海外経験としては理想的といえます。



まずは、飛び込んでみること

では、実際に「親子留学」をする場合、注意すべき点は何でしょうか。
まずは2013年にオーストラリア・ケアンズで行われた、現地小学校訪問イベントに参加した浅見裕子さん・花(はな)ちゃん(参加当時小学1年生)に、体験談を伺いました。

--参加のきっかけは?
浅見さん:小さいころから、海外を身近に感じられればいいなと。普通の旅行とは違って、現地の小学生と交流できるというところが魅力だなと思いました。

--事前には、どんな準備をされたのですか?
浅見さん:英語の自己紹介を、一緒にがんばって練習しましたね。主人の案で、花が前から習っていた空手の型も披露したんですけど、皆さんたくさん拍手してくれて……。
花ちゃん:緊張しました(笑)。
浅見さん:主人は「俺も見たかった!」って、悔しがっていましたね(笑)。はきはきと自己紹介している娘の姿をビデオで見て、「本当に行かせてよかったね」と言っていました。

--他に、何か準備されたことはありますか?
浅見さん:特に何も。「バディ」(相棒)として、アーシャちゃんという5歳の女の子と組んで、アボリジニアートや、イースター・エッグを探すゲームを一緒にやりました。娘は英語を習ってはいても会話は難しく、全然しゃべれるレベルではありませんでしたね。でも、何か心では通じるものがあったみたいで、30分もしないうちに絵の具を分け合ったり、ジェスチャーで卵の場所を教え合ったり、楽しそうにやっていました。本当に、子どもは強いですね。むしろ大人のほうが大変だったかもしれません。たまたまアーシャちゃんのお母さまが日本語もできるかたで、私もアメリカで生活した経験があったのでずっと楽しく話せていたんですけれど、英語は得意じゃないし、バディの親御さんと共通の話題がなくて困ったというかたもいらっしゃいました。

--ケアンズの小学生と交流されてから、お子さまはどう変わったと感じていらっしゃいますか。
浅見さん:大きくなったら留学したいと言い始めて。そのせいか、それまでもやっていた、パソコンを使った小学生向けの英語教材はもちろんのこと、何にでも積極的に取り組むようになりました。アーシャちゃん宛てに、英語でお手紙を書いたり、おばあちゃんの家に一人でお泊まりに行ったり(笑)。前は一人でお泊まりは心細くてすぐ泣いてたんですけど、そのくらいできないと留学なんて無理だと思ったんでしょうね。

--将来の夢は?
花ちゃん:英語のできるお医者さん!
浅見さん:夢です、夢(笑)。でも、よい経験ができたなって。たとえ英語ができなくても、飛び込んでみれば、結果はあとからついてくるんじゃないかなって思います。



「子どもの中から出てくる言葉」を大切に!

「通じ合えた!」という感動が、外国語の学習にはいちばん大切です。そのことが、この体験談からもよくわかりますね。
言葉は本来、心や体の動きと共に出てくるものです。痛い時は「イタッ!」「Ouch!」と叫んでしまいますし、おなかがすくと「腹減った~」「Hungry…….」と力の抜けた声が出る。子どもは、そういう全身を使ったコミュニケーションが得意です。保護者の方は、ぜひ子どもたちの中から出てくる言葉を大切にしてあげてください。外国語学習には、「聞く」「理解する」といった知識のインプットだけでなく、自分が言いたいことを「表現する」アウトプットが大切なことが、最近の研究からもわかっています。たとえば外国人と接して感じたことを、その場でお母さんに「日本語で話す」だけでもよいのです。それが英語でも表現できるようになれば、すばらしいことです。
レストランで注文できた、買い物ができた、友達と気持ちが通じ合えた……そういう体験は、自己肯定感、自信につながります。それは、生きる力そのものともいえますね。



親子でチャレンジし合って

「親子留学」を検討していらっしゃる保護者のかたにおすすめしたいのは、何より「ご自分が楽しむ」ことです。異文化にふれる驚きを子どもと同じ目線で共有して、楽しんでください。そして、できるだけ積極的に現地の人と話してみてください。どんなにブロークンな英語でもかまいません。親の姿を見て、子どもも「失敗してもいいんだ」と安心しますし、自分から進んで話してみる勇気もわいてきます。そして、子どものチャレンジする姿を見たら、「お母さんが小さい時はそんな英語言えなかったよ! すごい!」などとすかさずほめてあげてください。むしろ親のほうが、子どものバイタリティに驚かされるかもしれません。そうやって楽しい時間を共有するのがいちばん。親子でチャレンジし合い、その感動を伝え合う体験もまた、コミュニケーション力の基礎になるのです。


プロフィール

豊田ひろ子

豊田ひろ子

東京工科大学教授。専門は言語教育学、児童英語教育、バイリンガリズム。幼児の英語学習の習熟度調査や、公立小学校の英語活動のボランティアに取り組んでおられます。

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