アメリカ人には「ダメ」がどう聞こえる? 第45回 [Oh,my Gooodness!]

親子で英語圏に住み、現地の学校に行きながら英語を学ぶ……。3歳の娘と母親である筆者は、夫のアメリカ転勤のために、そんな理想的な環境に飛び込むことになりました。果たして本当に「子どもは英語にすぐ慣れるから大丈夫」? アメリカに住みながら英語を学ぶメリットとデメリットとは? 筆者のアメリカ生活をとおして、日本に住むご家庭では、どんな取り組みができるのか考えていきます。
※「Oh,my Gooodness!」とは、「あらまあ!」という驚きを表すことば。

早いもので4歳半になったうちの娘。食事やお友達の家に行ったときの最低限のマナー、公園で遊ぶときのルールなどがだいぶわかってきた。でもそれ以前の3歳から4歳にかけては、私が「ダメ!」と叫んで止めに入る場面が、朝から晩まで日々エンドレスに繰り返されていた。

第45回  [Oh,my Gooodness!]アメリカ人には「ダメ」がどう聞こえる?お砂場に行けばお友達に砂をかけ、ホースを見れば服や靴を水でぬらし、焼肉のたれがくっついた手でピアノにさわろうとし、よそのお宅のソファに乗って飛び跳ねる……といった具合。成長の過程でこうした時期があるのは当然のことだが、それを黙って見過ごすわけにもいかず、私は「ダメ!」「やめて!!」と叫んで止めに入ってばかり。
そして「あーあ、今日もダメって言っちゃった。でも放っておくわけにもいかないし、なんと言葉をかければいいのだろう」と反省ばかりしていた。

ちょうどそのころ、あるママ友達に「アメリカ人には、ダメっていうのは、すごく品の悪い言葉に聞こえるんですって」と教えてもらった。何というフレーズに聞こえるのか、辞書を引こうにもつづりがわからなかったので、英会話のみどり先生に質問してみると……。
「ダメっていうと、『Damn it.』に聞こえるのよ」
「それ、どういう意味なんですか?」
「『くそっ!』とか、『ちくしょうめ』とか、『知るか!』みたいな意味ね」

ガーン……。公園などで娘に対して「だめ!」と叫んでいる私は、アメリカ人には「ちくしょう!」と娘をののしっているようにしか見えないわけだ。まずい。
たぶん、そう思われていたに違いない……。ちなみに、アメリカ人のお母さんや保育士さんは、私が「ダメ!」と言いたくなるような場面で、「That is not nice.」と言ったり、怖い声で子どもの名前を呼んだりしていた。「No!」というのは、本当に危険なときだけで、めったに聞いたことがない。

もしもあなたが子どもに「ダメ!」と言っている現場を英語を母国語とする人に見られたら、「ちくしょう!」と言っているのだと誤解される可能性が大きいから、気を付けたほうがいい。
私の場合、「だめよ」ならば、「Damn it.」には聞こえない、とみどり先生に教えてもらったので、その日から「ダメ」を封印して「だめよ」とか「だめでしょ」「やめなさい」に切り替えた。英語とは関係ないことだけれど、「だめよ」と、語尾に1文字くっつくだけで気持ちが冷静になる効果もあるようだ。

プロフィール



音楽・ノンフィクションライター。中学校教諭、養護学校教諭からライターに転身。現在は音楽と教育をテーマに執筆活動を行う。著書に「りんごは赤じゃない 正しいプライドの育て方」「子どものセンスは夕焼けが作る」など。2006年3月より米カリフォルニア州在住。1児の母。

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