変化の激しい時代を生き抜く人材を育成 経済学部、経営学部の教育改革最前線【変わる大学】
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いま、世の中はAIやIoTなどのスマートテクノロジーの発達により、激しいスピードで変化しています。これらの技術が発達する一方、将来的にAIやロボットに人間の仕事を奪われると言われますが、正確には人間の仕事のやり方が変わるということです。
そのような社会で求められる能力とは、一体どのようなものでしょうか。また実社会のビジネスに近い学びとされる経済学や経営学における大学での学びは、どのように変化しているのでしょうか。
そこで今回は、教育改革を大きく進める成蹊大学が昨年度改組・新設した「経済学部」「経営学部」の取り組みをご紹介します。
新2学部3学科で、突き抜けたスキルを持つ尖った人材を育成
2020年4月、成蹊大学の経済学部が改組され、専門性をより高める新しい2学部3学科体制に生まれ変わりました。これまでの経済学部を再編し、新しい経済学部と経営学部を設置。経済数理学科・現代経済学科・総合経営学科の3学科(※1)が始動しました。
AIなどのスマートテクノロジーの登場により、人間の仕事が奪われるのではないかと危惧する声もあります。しかし、人間だけが持ち得る力が3つあります。
1つ目は、物事を多面的に見て総合的に判断する総合的思考力。2つ目は、ひらめきやインスピレーションで意思決定する創造的思考力。そして3つ目は、意思や感情を伝達する真のコミュニケーション能力です。
成蹊大学ではこれらの人間にのみに備わる能力を磨き上げて、激変する社会で生き抜く力を養うことをめざしています。
世の中の変化が加速する中で求められているのは、突き抜けた力を持つ尖った人材です。変化の激しい社会におけるさまざまな課題を解決するには、得意な専門分野を持つ人が、自分の能力や特長を生かしながら、他の専門分野の人たちとチームを組んで協働することが必要です。
ある領域なら誰にも負けないという突き抜けた力を持つ尖った人材が集まってチームを組むことによって、総合的思考力、創造的思考力を最大限発揮することが可能になります。成蹊大学の新しい2学部3学科では、専門性を持ちつつ、他者と協働できる人材を養成していきます。
数理的思考ができる次世代のリーダーを養成する、経済学部「経済数理学科」
経済学部「経済数理学科」(※2)は、これからの時代に不可欠な数理モデルに基づく経済分析とICT社会を支えるデータ解析により、経済現象や社会問題の本質を理解する手法を身に付けることを目的としています。
経済学には基礎理論であるミクロ経済学とマクロ経済学の2つがあります。経済数理学科では、この2つの経済学の数理的側面を重視しつつ、系統的に学びます。
これらを通して、経済数理モデルを構築して分析していく手法を身に付け、国際貿易・企業間競争・金融マーケットなどの研究や、少子高齢化・環境・不平等などの社会問題の解決のために応用します。
例えば、かき氷を販売するビジネスでは、かき氷の販売数と気温のデータを解析し、それらの相関関係を表す回帰直線を求め、気温によって販売数を予測することで利潤を増加させながら、フードロスを減らすこともできます。
このような回帰分析と呼ばれる手法は、「計量経済学」で学ぶ基本的な手法であり、またAIの機械学習の分野でも必須となっています。「計量経済学」を基礎から応用まで、1年次から3年次にわたって体系的に学修できるのは経済数理学科ならではの特色です。
また、1年次から徹底的なデータ分析、プログラミング演習を行うとともに、学科の基盤となるミクロ経済学・マクロ経済学・計量経済学などの世界水準の経済学も修得します。このような学びを経て、経済学・データ解析の専門家として、理系・文系の枠組みを越えて「経済現象」を解き明かし、立ちはだかる社会問題を解決に導く次世代のリーダーを養成します。
他者と協働して課題を解決できる人材を養成する、経済学部「現代経済学科」
経済学部「現代経済学科」(※3)は、複雑かつ多岐にわたる現代の社会問題がどのように存在し、その原因はどこにあるのかを考えていきます。現代の経済社会や企業の課題を地域コミュニティの視点とグローバルな視点から考察し、持続可能な社会づくりに貢献することを重要な目的としています。
現代経済が抱える問題は、1つの国の経済を分析するだけでは十分に明らかにすることができません。グローバルに国内外を比較・分析するとともに、ローカルな視座も学び、「グローカル」な発想、もしくは「トランスローカル」な発想を身に付けていくことも重要です。現代経済学科では経済社会の持続可能性を、地域コミュニティ経済領域、グローバル経済領域の2つのプログラムを通じて多角的に考察していきます。
例えば、「実践ゼミナール」では成蹊大学のある吉祥寺と北海道・十勝とをオンラインで結んだプロジェクト型授業を実施。食料自給率1200%ともいわれる帯広市を中心とした現地で活躍するさまざまな方をゲストに迎え、十勝地方の地域経済の現状を学びながら、六次産業化やグリーンツーリズムを通じた地域活性化の方策を立案しています。
また、経済学の知識と応用力をさらに深めるためには自ら現場に赴き、自身の目と耳で社会問題を見ることも大切です。現代経済学科は、経済学の知識をベースに、フィールドワークなどの実践型研究や近接学問領域の学修を通して、地域経済や国際経済におけるコミュニティの役割を発見し、他者との協働を通じて、その課題解決と発展に貢献する人材を育成します。
グローバルな視野とITリテラシーを備えた職業人を育成する、経営学部「総合経営学科」
経営学部「総合経営学科」(※4)は、経営学の知識に加え、国際的な視野と高い情報処理能力を備えることで、組織の中心的な人材として活躍し、幅広い分野で社会貢献できる人材育成を目的としています。
主軸となる経営学に加え、法律、心理学、情報分析の分野から企業経営に関わるさまざまな知識を総合的に学修します。経営学の基本領域では「戦略とマーケティング」「組織と人間」「ファイナンスと会計」の3つの領域を想定し、フィールドワークなどの実践研究を通じて、それぞれの領域ごとに基礎から応用まで体系的に学ぶことができます。
例えば、2年次の「戦略的問題解決型プロジェクト演習」では、株式会社ECOLOGGIEと連携し、将来的な食糧危機や貧困問題について考察。近年、これらの問題の解決策として昆虫食が注目されていることから、同社が目標に掲げる生物資源としての昆虫(コオロギ)を活用した資源循環型の食糧生産システムの確立をめざして、「日本における既存のコオロギの活用用途について調べる」「新しいコオロギの活用用途について提案する」の2つの課題に取り組みました。日本の食品産業の実態についての講義を受けたうえで、学生たちは昆虫食を扱っている企業への電話インタビューやSNSを活用した意識調査を行うなど、チームごとにさまざまな手段を駆使しフィールドワークを進め、コオロギの新しい活用用途について企業へプレゼンテーションしました。
総合経営学科では、このような企業が実際に抱える課題に挑むプロジェクトや、企業のマネジメント手法を学ぶ実践教育を通じて幅広く学修。企業経営の実務的知識や、それらと関連した高い情報処理能力と国際的な視野も総合的に兼ね備えた「次世代型マネジメント能力」に長けた職業人を育成します。
変化の激しい時代を、力強く生き抜く人材がここから生まれる
新しい2学部3学科では、成蹊大学ならではの新しい学びも活用して、よりグローバルに、より実践的に学ぶことができます。
例えば、2020年に導入された「副専攻」制度を活用し、「経営学を学びながら、企業経営に必要な法律の知識も身に付けたい」「経済学を学びながら、世界各国の歴史や政治を学びたい」といった学部・学科を越えた学修も可能です。
また、グローバル教育プログラム「EAGLE」では、ビジネスや実社会で求められる実践的な英語スキルやグローバルな視点を磨くこともできます。加えて、学部横断型の産学連携人材育成プログラム「丸の内ビジネス研修(MBT)」では、約7か月間かけて企業課題にチームで取り組み、実社会で生かせる協働力、課題発見・解決力などを養うこともできます。
専門性を確立させながら、これからの社会に求められるグローバルな視野、ITリテラシーといった重要なキーワードに関する最新の知識と技術を身に付けることのできる新しい2学部3学科。ここから、複雑に変わりゆく不確実な社会を生き抜く、力強い人材が巣立っていくことでしょう。
※1 成蹊大学 新しい2学部3学科
https://www.seikei.ac.jp/university/newdepts/
※2 成蹊大学 経済学部 経済数理学科
https://www.seikei.ac.jp/university/newdepts/ee/
※3 成蹊大学 経済学部 現代経済学科
https://www.seikei.ac.jp/university/newdepts/ces/
※4 成蹊大学 経営学部 総合経営学科
https://www.seikei.ac.jp/university/newdepts/gba/
成蹊大学
https://www.seikei.ac.jp/university/
本掲載情報は2021年9月時点のものです。
監修 / 進研アド
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