教育動向 高専で地域の課題解決

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少子高齢化や地球温暖化などの社会課題を解決するには、モノやサービス、仕組みなどで新たな価値を生み出す「イノベーション(革新)」が必要といわれます。
その拠点として、高等専門学校(高専)に期待が高まっています。なぜでしょうか。具体的な取り組み例から見ていきましょう。

この記事のポイント

エンジニアを育てる教育機関

高専は、実践的・創造的な技術者を養成することを目的にした高等教育機関です。
ロボットコンテストやプログラミングコンテストの全国大会で、校名を目にしたことがある人も多いでしょう。

学科は学校ごとに異なり、機械、電気、情報工学、建築、商船などがあります。高校と同じように中学校を卒業してから、入試を経て入学します。
高校との違いは、5年制であること(商船学科は5年6か月)、学生寮があること、1年次から専門科目の授業や実験・実習を重視することなどです。

卒業後は、就職はもちろん、より高度な技術を学ぶ2年制の「専攻科」への進学、さらに大学への編入学と、多彩なのも特徴です。
全国に国公私立合わせて58校あり、約6万人の学生が学んでいます。

AIを活用し課題解決

近年の高専では、高い技術力と若者の柔軟なアイデアを、さまざまな地域課題の解決に生かす試みが活発です。

たとえば香川高専の学生は、心拍数や呼吸数、室内画像などを合わせて解析し、入院患者や高齢者の状態を把握するシステムを開発しました。
病院や施設での人材不足解消につながるといいます。

東京工業高専では、画像データを、独自開発した人工知能(AI)モデルで解析し、自動で点字に翻訳する「点字翻訳エンジン」を提案しています

起業家への道も

こうした学びを積極的に起業につなげるのも、高専の特徴です。

長岡工業高専発のベンチャー企業では、アナログ機器のさまざまな形の目盛りをAIでデジタル化する産業用小型AIカメラシステムを開発しました。
新型コロナウイルスワクチンの冷凍庫や、ロケットの燃料保管庫の温度管理システムに採用されています。

政府も、高専生の起業を応援しています。2022年度には、すべての高専1校あたり約1億円を補助して、ものづくりとAI、課題解決をキーワードに、高専生が自由にチャレンジできるよう「起業家工房」の整備に充てています。

まとめ & 実践 TIPS

2023年4月には徳島県に、私立の「神山まるごと高等専門学校」が開校して話題を呼びました。
国内では約19年ぶりの新設校で、テクノロジーとデザイン、起業家精神を学ぶことを掲げています。コンピューターや機械、ものづくりが好きな中学生なら、進路の選択肢として検討してもいいでしょう。
高専は約60年前、即戦力となる中堅エンジニアの育成を目的に創設されましたが、今や就職はもとより進学でも有利といわれています。
さらに時代の変化とともに、新たな価値を創造する場としても注目が集まっているのです。

(筆者:長尾 康子)

文部科学省 2023年版 科学技術・イノベーション白書
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpaa202301/1421221_00014.html

文部科学省 高等専門学校(高専)について
https://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/kousen/index.htm

プロフィール


長尾康子

東京生まれ。1995年中央大学文学研究科修了。大手学習塾で保育雑誌の編集者、教育専門紙「日本教育新聞」記者を経て、2001年よりフリー。教育系サイト、教師用雑誌を中心にした記事執筆、書籍編集を手がける。

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