親は不安を作り出している。 おおたとしまささんに聞く、「すごい親より、いい親でいる」ということ。

「親として自分はちゃんとできていないんじゃないか」
「他の親に比べて、自分はダメなのでは……」
忙しい子育てのなか、ふと不安になり落ち込んでしまう人も多いのではないでしょうか。

その不安は、自分が感じたくて感じているのかもしれません。親が抱える尽きない不安とのつきあい方、どうすればいいのでしょう。『正解がない時代の親たちへ 名門校の先生たちからのアドバイス[エッセンシャル版]』(祥伝社)の著者、教育ジャーナリストのおおたとしまささんに聞きました。

正解がない時代に親はどうする? おおたとしまささんに聞く、子どもたちに必要な3つの「生きる力」

「やり抜く力」「チームになる力」を子どもが身に付けるには? おおたとしまささんに聞いてみた

この記事のポイント

不安を感じたくて不安を見つけているのかも

「親御さんはね。不安でいいと思うんですよ。だけど少なくとも子どもの前では、自分の生きてきた道にはいろいろあったけれども間違いじゃなかったというように見せてほしい。そうすれば子どもも、挫折を味わったとしてもその先に必ず新しい可能性があると思えるひとになります」(女子学院中学校・高等学校・鵜﨑創先生)

『正解がない時代の親たちへ 名門校の先生たちからのアドバイス[エッセンシャル版]』より引用

──子どもが宿題をやらなかったり、深夜までゲームをやっていたり。「大丈夫なの?」と不安になって子どもを怒ってしまう親御さんが多いです。

おおたとしまささん(以下おおた):そういった不安は皆さんありますよね。名門校と呼ばれる学校の子どもでも全く同じです。

──そうですか。自制心が強そうなイメージがありますが。

おおた:名門校だからといって子どもが変わるわけじゃないので。テストの点数がよくとれた子どもが集まってはいますが、変わりませんよね。ゲームをやり過ぎてしまう場合、子ども自身にストレスなどの問題があれば注意しなくてはいけません。そういった問題はないけれども気になってしまう親御さんは、子どもがゲームをやり過ぎていなかったら、今度は別のことが不安になるんじゃないでしょうか。親が不安を感じたいから不安を見つけていることがあると思います

親も不安とのつきあい方を学びながら成長する

──なぜでしょう。

おおた:子どもが小さいうちから子育てにはずっと不安が付き物ですが、子どもは成長するとだんだんと手が離れていきます。それで「大丈夫なんだ」となってくるのが親の成長です。でも不安がないと「自分はいらないのかもしれない」と感じてしまう

親は不安の種を見つけようとする生き物なんですね。探せば種はいくらでもありますし。

──ありますね。

おおた:だから宿題でもゲームでも「子どもの行動を変えたい」と思ったら、自分がなぜそれについて不安に思うのかも考えてみてほしいんですね。「不安にさせてくれてありがとう。必要としてくれてるように思わせてくれてありがとね」などというふうに、親は不安とのつきあい方を学んでいかなければいけないと思います。

──でも、不安を振り払って子どもを信じようと思っても、子どもがまったく勉強をしないままのこともありますよね。

おおた:「変わらなくてもいいや」と腹をくくることが信じることだから、それでいいんじゃないですか。もし子どもに勉強してほしいと思うのであれば、「なぜ自分は勉強してほしいと思っているのか」「そこに合理性はあるのか」と胸に手を当てて考えてみてください。

これからの人生を守る考え方

──親が自分に自信をもてないことによる不安もあると思います。たとえば父親に「いい学校に行っていい会社に入ることが人生の成功」という価値観があって、母親の考えはちがう場合。母親に自信がなくて「そうなのかも?」と思ってしまい、子どもへの態度もぶれてしまうという話を聞いたことがあります。

おおた:それは子どもの前にその大人たちの稚拙な人生観をどうにかしないといけないですね。人生とはなんなのか、親自身が向き合って考えるべきです。すごい親である必要もありません。東大に入る、大企業に就職する、有名になるなどの矮小化された成功イメージにとらわれていると、子どもを不幸にしてしまいます

──自分のことも子どものことも周りと比べてしまって不安になる人も多いです。

おおた:少なくとも子どもに対して、人と比べるような声かけはやめたほうがいいですね。短距離走とか身長とか比べるシーンはいくらでもあるし、「あの子すごいね」みたいなのはあってもいいと思うんですね。「あなたもすごいよ」ってことを忘れなければ

でも比べることが人の勝ち負けや価値につながっているわけではないし、みんながかけがえのない人生を必死に生きていることは、親が子どもに小さいときから伝えてほしい。それは、単なる道徳的価値観ではありません。せこい損得勘定を寄せ付けず、その子の人生を守ってくれます。

「むしろ、子どもが『いいな!』って思うことに『いいね!』って言ってあげられる親。それが『いい親』なのかな」(鷗友学園女子中学校高等学校・大内まどか先生)

『正解がない時代の親たちへ 名門校の先生たちからのアドバイス[エッセンシャル版]』より引用

まとめ & 実践 TIPS

尽きることのない親の不安。完全に解消するのは難しいですが、いつも子どもの後ろから「いいね!」を送る気持ちは忘れずにいたいものです。

執筆/樋口かおる

『正解がない時代の親たちへ 名門校の先生たちからのアドバイス[エッセンシャル版]』(おおたとしまさ著、祥伝社刊)

プロフィール

おおたとしまさ

おおたとしまさ

教育ジャーナリスト。1973年、東京生まれ。麻布中学・高校卒業。東京外国語大学英米語学科中退、上智大学英語学科卒業。リクルートから独立後、数々の育児・教育誌の編集に携わる。学校や塾、保護者の現状に詳しく、各種メディアへの寄稿、コメント掲載、出演も多数。中高の教員免許をもち、小学校教員や心理カウンセラーの経験もある。著書60冊以上。『正解がない時代の親たちへ 名門校の先生たちからのアドバイス[エッセンシャル版]』は『21世紀の「男の子」の親たちへ』『21世紀の「女の子」の親たちへ』(共に祥伝社)を1冊に濃縮。名門校の先生たちのアドバイス決定版。

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