国立大に通うといくらかかる?学費やそれ以外の費用は?授業料等減免と給付型奨学金も

  • 教育費

学費やそれ以外の費用は?大学無償化って? 国立大に通うといくらかかる?

大きな教育費がかかる大学進学。「国立大は、私立大と比べて費用が安いって聞くけど、今って実際どれくらいなの?」と気になる保護者のかたもいらっしゃるかと思います。

そこで今回は、国立大に通うことになった場合の、学費やそのほかに必要な費用についてご紹介します。また、大学無償化とも呼ばれる、「高等教育の就学支援新制度」についても見てみましょう。

この記事のポイント

国立大で4年間にかかる学費は242万5,200円

標準額を採用している国立大の場合、入学金と4年分の授業料を合わせると242万5,200円です。この金額が高いか、安いかは、教育資金の準備状況によって感じ方が異なるかもしれませんが、私立大に進学した場合の半分程度、あるいは半分以下の授業料ですむのが現実です。

ここからは、国立大の学費の内訳を見ていきましょう。

まず、授業料について。国立大の年間授業料は、文部科学省によって標準額が決められています。標準額は53万5,800円で、2005年度に現在の金額に改定されてから、15年以上据え置きの状態です。

しかし、2024年7月現在、東京大では授業料の引き上げが検討されており、2024年11月までに決定・公表することが発表されています。今後、ほかの国立大でも授業料の値上げが検討される可能性もあるかもしれません。

授業料の標準額は20%まで増額が認められており、東京芸術大のように年間授業料が60万円を超える国立大もあります。また、入学金にも標準額が決められていて、国立大では28万2,000円。多くの私立大で必要な施設設備費は、原則として国立大ではかかりません。

また、私立大では在学中にかかる費用が6年間で2,000万~5,000万円ともいわれる医学部の学費も、国立大の場合はほかの学部と同様、標準額あるいは標準額プラス数万円程度に抑えられます。

「数千万円の学費負担はできないけれど、どうしても医師になりたい」という学生の中には、何年も浪人をしながら、国立大医学部をめざすケースがあるのもうなずけますね。

塾代、浪人の費用、下宿代……国立大の学費以外でかかるお金

国立大学の学費以外でかかるお金

在学中の学費だけを単純に比べれば、私立大に通うより国立大のほうが安くすむケースが多いでしょう。しかし、国立大を受験し進学するからこそ、かかりやすいお金もあります。それが、「塾代」「浪人する際の予備校代」「一人暮らしでかかる生活費」です。

塾代
大学入学共通テストを受ける際、私立大のみを志望する学生に比べて、受験する科目数が多くなるため、塾代の負担は国立大を志望する学生のほうが割高になる傾向があります。

浪人する際の予備校代
国立大のみを志望している場合、志望大に合格できなければ浪人する可能性も高くなります。浪人の1年間は、「入会金+授業料+諸経費+夏期・冬期講習など」で年間100万円以上かかることも多く、これは私立大文系学部の「初年度学生納付金等平均額 」である約120万円に迫る金額です。

もし浪人をして国立大に進学した場合、浪人費用が加算され、私立大の学費総額との差は縮まります。

一人暮らしでかかる生活費

※独立行政法人日本学生支援機構が行った「令和4年度学生生活調査結果 」より作成

上表は、「令和4年度の学生生活調査」(独立行政法人日本学生支援機構)の中から、生活費のみを抜粋したものです。

国立大に通う学生の食費や住居費、光熱費の年間平均額は、52万1,000円。一方、私立大に通う学生の年間平均額は28万8,700円になっており、国立大に比べて年間約23万円低くなっています。

このことから、国立大の学生は親元を離れて暮らしている人が多く、一人暮らしをするとなるとお子さまにかかる生活費が大きくなることが想像できます。

塾代の負担や浪人の可能性、一人暮らしでの生活コストなどを踏まえると、場合によっては、国立大が圧倒的に安いとは言いきれないでしょう。

一人暮らしをさせる余裕はないけれど、学費負担が抑えられる大学進学を望む場合、公立大を選択する方法があります。公立大の学費負担は、国立大とほぼ同じ水準ですし、地元の公立大であれば、自宅から通えて生活費も抑えられる可能性があります。

また地元の公立大に通う場合、地元出身者は入学金に軽減措置が適用される公立大もあるため、一度調べてみましょう。

授業料等減免や給付型奨学金で負担が軽くなることも

授業料等減免&給付型奨学金 高等教育の修学支援新制度で負担が軽くなることも

最後に、大学無償化などと呼ばれることもある、「高等教育の修学支援新制度」について見てみましょう。

高等教育の修学支援新制度とは?
高等教育の修学支援新制度とは、2020年度に導入された学習意欲のある子どもたちへの進学支援で、住民税非課税家庭とそれに準ずる家庭は、授業料・入学金の免除または減額と返済不要の奨学金が給付される制度です。

【国公立大の授業料等減免と給付型奨学金】

※文部科学省資料 より作成
※年収は両親・本人・中学生の家族4人世帯の場合の目安。基準を満たす世帯年収は家族構成により異なる
※私立大の支援額とは異なる

上表のように、4人世帯の年収(目安)では380万円以下程度が制度の対象になります。なかでも住民税非課税家庭であれば、国立大にかかる入学金や授業料が全額免除されるうえに、給付型の奨学金ももらえます。新制度は、家計に余裕がないお子さまでも、大学進学をあきらめずにすむ設計になっているのです。

2024年度からは対象範囲が拡大され、所得制限はあるものの多子世帯(満18歳未満の子どもを3人以上扶養している世帯)の学生も対象になりました。2025年度からは多子世帯の所得制限が撤廃され、さらに大学等の無償化支援が拡充される予定です。

高等教育の修学支援新制度2つの注意点
高等教育の修学支援新制度には、注意点が2つあります。
1.制度を利用できるのは高校卒業後2年先まで
2.大学での成績や出席率が悪いと支援が打ちきりになる可能性あり

この制度の対象になるのは、高校を卒業してから2年先まで。つまり、3回以上浪人をしてしまうと住民税非課税家庭であっても、この制度から外れてしまいます。また、入学時点で制度の対象になっていても、取得単位数や出席率が悪い場合は、翌年は制度の対象から外れる可能性もあります。

収入基準だけではなく、成績も加味されることをぜひ覚えておいてください。

まとめ & 実践 TIPS

私立大とは違い、国立大が標準額を採用している場合、学費は入学金と4年分の授業料で242万5,200円です。この金額は、私立大に進学した場合の半分程度、あるいは半分以下ですむ計算になります。

ただし、塾代や浪人の際の予備校費用、一人暮らしの生活費など、学校に納める費用以外のお金もかかる可能性があります。4年間の費用がどれくらいかかるのかを知っておき、計画的に学費の準備を進めていきましょう。

海田幹子

海田幹子

2級ファイナンシャル・プランニング技能士。教育・育児、マネー等について執筆。現在、小学生2人の子育てに奮闘中。

  • 教育費

子育て・教育Q&A