もう一つの「グローバル化」、外国人児童・生徒にどう接するか‐斎藤剛史‐

グローバル化は、日本人が海外に出ていくことだけではありません。逆に、多くの外国人が日本に来ることも意味しています。文部科学省は、公立学校に在籍する日本語指導が必要な外国人児童・生徒に対応するための教育研修マニュアルを作成しました。児童・生徒を理解するために必要な事項や配慮すべき項目などがリストアップされており、外国人など異文化を持つ人々を理解するうえで、教員以外の人々にも参考になりそうです。

文科省の調査によると、日本の公立学校には日本語指導が必要な外国人児童・生徒として2万7,013 人(2012<平成24>年5月現在)が在籍し、そのうち2万3,375 人(86.5%)が日本語指導を受けています。これまで日本語指導は教育課程外の活動とされてきましたが、2014(平成26)年度からは「特別の教育課程」と位置付けられ、年間10単位時間から280単位時間までの範囲内で正規の授業の一環として日本語指導を受けることができるようになり、外国人児童・生徒の負担軽減が図られています。今後、グローバル化の進展や国内の景気回復などによって、外国人児童・生徒が増加することが予想されます。それに伴って、異文化を持つ児童・生徒に接する機会が、一般の子どもたちやその保護者にも増えることでしょう。

同マニュアルは、日本語指導を行う教育関係者向けものですが、「項目解説」(外部のPDFにリンク)として外国人児童・生徒の受け入れの歴史、外国人児童・生徒と接するための留意事項や配慮すべき点など「研修項目一覧」の解説に一章を割いています。国内に暮らす外国人と付き合うための要点をリストアップしたものともいえそうです。たとえば「『子ども理解』のために」という項目では、「何気ない振る舞いや一見奇妙に思える言動」には言葉や文化の違いに起因するものがあり、日本語や日本文化を学ぶことは必要だが、それぞれの母国語や母国の文化も尊重されるべきものであると強調しています。また、日本語がつたないため学力などが低く見られがちですが、本人の知識量や母国における学習歴などをきちんと把握する必要があるとも注意しています。これらは子どもたちに限らず、大人たちが外国人と接する際にも必要なポイントかもしれません。
この他、外国人児童・生徒の受け入れの際には、母国語でのあいさつを日本人の子どもたちに教えておいたり、母国語による掲示物を貼っておいたりするなど外国人児童・生徒を歓迎していることを示す工夫をすること、教員が面倒を見ることについて「特別扱い」していると日本人の子どもたちが反感を持たないよう指導しておくことなどの配慮も説明されています。

これからは外国人児童・生徒が学校に在籍したり、地域に外国人が住んだりすることも多くなってきます。ある程度のトラブルは避けられないかもしれません。その時に、日本人の保護者たちがどう対応すべきか問われることもあるでしょう。そんな視点で、同マニュアルに少し目をとおしてみてはいかがでしょうか?


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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