高校生の挑戦!アートを通じて社会課題の解決策を提案しよう。【直島アート便り】
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ベネッセアートサイト直島では、学年や行程、テーマに合わせた教育プログラムを企画し、実施しています。今回は、2020年12月に行われた熊本県立第二高等学校美術科1年生の2泊3日の教育プログラムについてご紹介します。
修学旅行で直島・犬島へ
熊本県立第二高等学校美術科では、海外での修学旅行を予定していましたが、今年は新型コロナウイルスの影響により行先をベネッセアートサイト直島に変更して、体験学習を行いました。
美術館と一体化したホテルに2泊滞在し、この場所でアートプロジェクトが始まった背景を学び、地域と関わり合うアートを体験し、そこで自分たちが気づいたことや考えたことを実践に活かす新しい提案の発表に取り組みました。
アートの役割とは何だろう?
岡山県の宇野港から船で瀬戸内海を渡り、直島へ到着した後、直島の代表的な美術施設の設計を多く手掛ける安藤忠雄氏が講演し、ベネッセアートサイト直島の活動の始まりや、アートと建築が融合する魅力、これからを生きる高校生に向けたエールが語られました。
多くの生徒が「自分で考え、行動し、道を切りひらく」ことや、「よく学び、よく遊べ」という安藤氏のメッセージを受け取り、これから出合う直島のアート作品に期待を膨らませます。
その後、ベネッセハウス ミュージアム、家プロジェクトを鑑賞し、「アートの役割とは何か」について考えたことをまとめていきます。「人の積極性に働きかけ、自分にできることを模索させるもの」「地域住民が地元を誇らしく語れるようになるもの」「豊かな心や対話力を育むもの」「問題提起をし、自分ならどう考えるのか問いかけるもの」など、多くの気づきがありました。
課題解決や理想の未来を実現するためのアイディアを表現する
研修の後半は、グループワークを行いました。現代社会で解決すべき課題の設定、もしくは実現したい未来の社会像を描き、それを実現させるための新しい作品や社会システムを考えて、発表します。地中美術館を鑑賞する時間もワークに組み込み、「自然と人間の関係を考える場所」というコンセプトを持つ美術館での鑑賞を通じて、より具体的なイメージやヒントを得て、アイディアに肉づけしていきます。
環境を変えたり新しいものに触れたりすることで、意識していなかった視点を再認識し、斬新なアイディアに繋がることもあります。
新しい作品や社会システムの提案内容や発表方法は自由とし、生徒たちは、文字、絵、タブレットを用いた写真やイメージ画を用いてプレゼンテーションを行いました。11のグループによる個性豊かな提案は、環境問題を取り上げたもの、人々の暮らしを豊かにするための工夫、現代社会の問題を投げかける新しいアート空間の提案など多岐に渡り、グループ間でも互いの考えに刺激を受ける時間となりました。
どの提案も直接的にメッセージを発信するのではなく、周りにいる人や鑑賞者が自ら考え行動するための契機を促す機能であるという点は共通しており、安藤忠雄氏のメッセージや直島の作品を見て考えたアートの役割をアクションプランに反映していたと言えます。
また、地中美術館での体験を振り返りながら、自分だけの光の作品を作るワークショップも行いました。色や形を用いた製作のワークを導入することで、表現の手法や経験値が広がります。
3日間の経験で得られたもの
最終日の3日目は、同じく瀬戸内海にある犬島のアートプロジェクトを訪問しました。直島とは島の資源や人々の暮らしも異なる環境で島固有の背景を学び、作品鑑賞や島民の方々のお話を通じてこれからの暮らしについて考える時間となりました。
このプログラムでは、3日間で様々なアートに触れ、自分なりの考えを深めたり、仲間と知恵を出し合ってアイディアを形にしていくグループワークに取り組んだりすることで、思考力や発想力を発揮することができました。限られた時間ではありましたが、ベネッセアートサイト直島で体験し考え挑戦したことは、これから自分の将来の道を切り開いていく生徒たちにとって、自信に繋がる経験になったのではないでしょうか。
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