子どもの自信を高めるには 心がけたいかかわり方
長年にわたり、日本の子どもたちの「自己肯定感」の低さが指摘されています。「自己肯定感」とは、ありのままの自分を受け止めたり、自分の可能性を信じることができる感覚のこと。子どもたちが学習者・生活者として自立していくうえで大切なものです。そのため、現在進められている教育改革においても、主体的・対話的に学習を進める上で、重要な要素とされています(「学びに向かう力」)。
ここでは、2015~2017年に、東京大学社会科学研究所とベネッセ教育総合研究所が共同で実施した親子パネル調査(同じ親子を毎年追跡する調査)の結果をもとに、子どもたちの「自己肯定感」の現状と、それを高める要素をご紹介します。
1.「自分に自信がある」子どもは小学生で5~6割
この調査で「自己肯定感」をはかる項目の1つとして尋ねた「自分に自信がある」かどうかに着目してみましょう。図1は、全国の小学1年生から高校3年生の子どもたちに、「自分に自信がある(自信を持っている)」かどうかを尋ねた結果です(小学1年生から小学3年生の子どものことは、保護者に回答してもらっています)。
これをみると、「自分に自信がある」子どもは、小学1年生で6割で、残りの4割の子どもは「自信がない」という結果です。また、学年が上がるとともに「自分に自信がある」の比率は下がり、小学6年生までは5割台ですが、中学1・2年生は4割台、中学3年生から高校2年生は3割台になります。
子どもたちにとって、自分に自信を持つことは、なかなか難しいようです。
2.2年の間に、自信を持つようになった子どもが1割強
では、子どもたちは、一度持った自信を、その後も持ち続けられるのでしょうか。
図2は、「自分に自信がある(自信を持っている)」の比率が比較的高い小学1年生から小学3年生にかけて、子どもが「自信を持ち続けているかどうか」という観点でデータをまとめたものです。
これをみると、2年の間、「ずっと自信がある」子どもは意外に少なく、約4割(39.3%)です。同じ子どもが、ずっと自信を持ち続けているわけではないことがわかります。また、2割強(21.8%)の子どもは、「ずっと自信がない」ままであり、課題と言えそうです。
ただし、ここで特に注目したいのは、2年の間に「自信がない→あるに変化」した1割強(11.8%)の子どもたちです。誰でも自信を失うことがあるでしょう。しかし、子どもたちは、何かのきっかけで、また自信を持つことができるようになるのです。保護者や周囲の大人がそれをサポートできるとよいでしょう。
3.勉強を好きになることや保護者のかかわりが自信を持つことに影響
では、子どもたちが自信を持つようになったり、持ち続けたりするには、どうすればよいでしょうか。
図3をみると、勉強が「嫌い→好きに変化」した子どもは、他の子どもに比べて、「自信がない→あるに変化」している比率が高く(17.9%)、「ずっと自信がある」も3割強(32.1%)です。子どもが、新しいことを知る楽しさを知ったり、効果的な勉強方法を身につけたりしながら、勉強を「好き」になることは、子どもの自信につながるようです。
また、図4をみると、ふだん、子どもが失敗したときに、保護者が「はげます」かかわりをしているほど、子どもが自信を持っている(自信がある)ことがわかります。子どもが勉強を「好き」になるような働きかけや、子どもの挑戦・失敗などを認め、はげますかかわりが有効だと言えるでしょう。
また、図5は、保護者自身の意識と子どもの自信との関連をみたものです。保護者自身が「努力すればたいていのことはできる」と、努力の効果を感じているほど、子どもが自信を持っている(自信がある)という結果であり、保護者自身の意識の持ちようも子どもの自信に関連しています。
子どもたちが「自己肯定感」を持ったり、持ち続けたりするのが難しい現状において、保護者や周囲の大人には、子どもたちが自分の良さに気づき、自信を持って未来を切り開いていくための支援が求められます。自信を持っている子どもが比較的多い小学生の時期から、自信をキープしたり、自信を持てるようになるための働きかけやかかわり方をしたいものです。
<調査データ>
・東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学びに関する親子調査2015」、同「親子調査2016」、同「親子調査2017」(2015~2017年実施)
https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5279
※小中高生の「自己肯定感」(自分の良いところが何かを言うことができる)について分析し、プレスリリースを行っています。合わせてご覧ください。