運動部活動は今後どうなる

もう1月も終わりですが、運動部に加入している中学1・2年生のお子さんは連日、寒さに負けず、活動に取り組んでいることでしょう。ところで運動部活動をめぐっては、その教育的意義が国内外で高く評価される一方、過熱化による体や勉強への悪影響、顧問となる教職員の多忙化など、心配も少なくありません。次期学習指導要領の在り方を検討していた中央教育審議会でも、部活動の扱いが課題になりました。部活動は今後、どうなるのでしょうか。

中学校の4割が土日に休養日を設けず

運動部活動をめぐっては、2016(平成28)年6月、教職員の多忙化解消策を検討していた文部科学省のタスクフォース(特別作業班、TF)が、生徒の健全な成長を促す観点からも、休養日の設定を徹底するなどの「大胆な見直し」を求めていました。

スポーツ庁が昨年12月に発表した2016(平成28)年度の「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力テスト)では、初めて部活動の休養日に関する質問項目を入れました。中学校のうち、学校の決まりとして部活動の休養日を設けていたのは77.6%と大半を占め、設けていないのは22.4%と4校に1校ほどでした。ただし、休養日が「週に1日」だけなのが半数を超えており、とりわけ土日に休養日を設けていない中学校が42.6%もありました。ただ、質問紙調査の回答期限が6月末だったこともあり、TFの提言後、さらに休養日を見直した学校もあったことでしょう。

スポーツ科学の観点からも、適切な休養日を設けることは、競技力向上に不可欠です。今後の調査結果と、更なる見直しが期待されます。

授業と関連付け、地域も巻き込んで

部活動の扱いが悩ましいのは、それが「学校教育活動の一環」なのに、生徒の自主的・自発的な参加で行われる「課外活動」である……ということです。生徒の自主的・自発的な活動ということは、教職員も「自主的・自発的」に顧問を引き受ける……というのが建前です。しかし少子化に伴う小規模校化で、1校当たりの教職員数も少なくなっています。全国体力テストの学校質問紙調査でも、部活動の顧問は「全員が当たることを原則としている」と回答した中学校が87.5%を占めました。自分が体験していなかったり、指導したことのなかったりする競技でも、ほぼ強制的に割り振られることが少なくないという実態が、ここからも読み取れます。

2015(平成27)年12月の中教審答申では、「チーム学校」の一員として、外部から「部活動指導員(仮称)」を招き、指導や引率を担ってもらうことを提言していました。自民党などには、スポーツ指導員の国家資格化を目指す議員立法を検討する動きもあります。

次期指導要領をめぐる答申では、部活動に関して、教育課程との関連を図り、適切な運営を推進する観点から、(1)複数の中学校を含む地域単位で運営体制を構築する(2)教育課程内の教育活動と同様、生徒の「主体的・対話的で深い学び」の視点を明確化する……との考え方を示しています。

しかし、全国体力テストの学校質問紙調査では、生徒の運動やスポーツに関して、近隣の学校間で連携をしている中学校は45.7%と半数にとどまっています。体育の授業で学んだことを発揮する場としても、保護者や地域住民も巻き込んで「持続可能」な部活動の在り方を真剣に議論するべき時に来ているといえます。

※中教審答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」部活動関連部分
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/004/siryo/__icsFiles/afieldfile/2016/12/12/1380469_3_2_1_1.pdf

※2016年度全国体力・運動能力等調査結果
http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/toukei/kodomo/zencyo/1380529.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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