安全に育った日本の高校生、積極性など低く

国立青少年教育振興機構が実施した高校生の国際比較調査で、日本の高校生は「立ち入り禁止」の場所に入らないなど安全に関する意識が高い一方、積極性や危険時に冷静さを保つ意識などが低いことがわかりました。同機構は、日本の高校生の体験活動の少なさが原因の一つと指摘しています。

「ルールを守ること」の意識は高い

調査は2015(平成27)年9~12月、日本・米国・中国・韓国の4か国の高校生を対象に実施し、約7,800人から回答を得ました。

安全に関して、「海や山などでは、『立入禁止』のところに入らないようにする」は日本83.5%、米国35.8%、中国76.4%、韓国72.4%、「監視員のいない海浜や湖畔などでは泳がないようにする」は日本67.1%、米国12.9%、中国58.8%、韓国53.7%、「歩きながらや自転車に乗りながら、スマートフォンや携帯電話等を使用しないようにする」は日本43.1%、米国20.7%、中国39.0%、韓国22.8%、「道路を横断する時には、信号を守るようにする」は日本74.4%、米国47.4%、中国79.8%、韓国56.9%、「車に乗った時には、シートベルトを着用するようにする」は日本58.0%、米国72.7%、中国43.3%、韓国41.9%などで、一部を除いて日本の高校生が最も多くなっています。

その一方で、「インターホンが鳴ったり、玄関のドアをノックされたら、相手を確認してからドアを開けるようにする」では日本65.3%、米国64.5%、中国69.1%、韓国75.6%、「映画館や旅館などの施設では、非常口を確認するようにする」では日本8.5%、米国22.7%、中国22.4%、韓国22.2%、「外出する時には、行き先などを親に伝えるようにする」では日本57.2%、米国59.0%、中国68.8%、韓国59.9%など、自分自身の判断で危険を回避したり、身を守ったりするような行為について、他の3か国に比べて割合が低い項目が見られます。どうやら、日本の高校生の安全意識は、ルールや規則を守るということと大きく関係しているようです。

低いボランティア活動や野外活動の割合

「自分の意志を持って行動できるほうだ」という質問では、日本28.3%、米国48.4%、中国34.8%、韓国37.9%でした。同様に、「厳しい状況の中でも落ち着きを維持することができる」では、日本15.8%、米国33.0%、中国21.9%、韓国19.7%、「物事を慎重に考えるほうだ」では、日本26.9%、米国33.8%、中国32.2%、韓国29.4%など、日本の高校生は割合が低くなっています。

ボランティア体験について聞いたところ、「高齢者や体の不自由な人などの支援」は日本17.3%、米国49.9%、中国33.0%、韓国44.2%などとなっており、「ボランティア活動に参加したことがない」では日本16.7%、米国12.8%、中国13.5%、韓国7.9%と日本が最も高くなっています。

逆に「私は野外活動が好きだ」では日本56.5%、米国82.4%、中国83.2%、韓国73.8%と日本が最も低くなっています。

これについて同機構は、「行動半径の狭い日常生活ではそれほど危険な目に遭遇しない。日本の高校生たちは、日本という井の中の蛙(かわず)になっているのでは」と指摘しています。どうやら本当の安全意識は、野外体験など実体験の裏付けがあって、初めて意味があるものになるといえそうです。

  • ※高校生の安全に関する意識調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較
  • http://www.niye.go.jp/kenkyu_houkoku/contents/detail/i/108/

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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