「地域とともにある学校」って何? 文科省が事例集作成

高齢化などによる影響で、地域の力が失われつつあると同時に、少子化による学校統廃合なども、大きな問題となっています。これに対応するため、文部科学省は、地域と学校の連携・協働を推進するための事例集を作成しました。同省が打ち出した「地域とともにある学校」の狙いとは、一体何でしょうか。

中教審答申の意味するものとは?

中央教育審議会は2015(平成27)年12月に、「新しい時代の教育や地方創生の実現に向けた学校と地域の連携・協働の在り方と今後の推進方策について」「チームとしての学校の在り方と今後の改善方策について」の各答申をまとめました。これらは、それぞれ「地域とともにある学校」答申、「チーム学校」答申と呼ばれています。

地域との連携などは、従来から「開かれた学校づくり」などの名称で進められていました。「地域とともにある学校」答申はさらに一歩踏み込んで、地域の人々と学校が教育目標やビジョンを共有して、一緒に協働するパートナーとなる「地域とともにある学校」を求めています。

具体的には、地域全体で学校を支えるための「地域学校協働本部(仮称)」の設置、地域住民や保護者が学校運営に参画する「コミュニティ・スクール(学校運営協議会)」の推進などが挙げられています。これらは、子どもたちの教育という共通の目標に向けて協働することによる「学校を核とした地域づくり」を狙ったもので、政府の掲げる「地方創生」の一環に位置付けられています。

また、「チーム学校」答申では、スクールカウンセラーなどの「専門スタッフ」の他に、地域住民や保護者なども「チーム学校」の一員として協働することが求められています。地域住民や保護者が、パートナーとして学校と協働することで、学校教育の在り方を変えようというものです。

両答申のポイントは、子どもたちの教育のために、地域も保護者も、積極的に学校と協働すること、それにより学校教育の在り方を変え、さらに衰退しつつある地域の活性化を図ることだといえるでしょう。

文科省作成の事例集、地域による「学習支援」などを示す

文科省が作成した事例集では、地域学校協働本部やコミュニティ・スクールなど、取り組みのモデルケースとなる20事例が集められています。たとえば、東京都杉並区立杉並第一小学校支援地域本部では、「朝先生」として週2日、授業開始前の職員朝会をしている時間に、地域の人々が「計算チャレンジ」などの指導をして、その様子を、教員と情報共有しています。

また、東京都葛飾区立葛美中学校支援地域本部では、「夜間補充教室(がんばらナイト)」として夜間の無料補充学習教室を学校内で週2回実施し、地域住民や保護者などはプリント採点、登下校時の見守りなどを、ボランティアとして行っています。この他、大阪府豊能町立吉川中学校区学校支援地域本部では、放課後や長期休業中の学習支援を地域住民で実施している他、野球やソフトボールなどの部活動の指導も支援しています。

社会や時代の変化に対応することを、学校は求められています。これからは、「地域とともにある学校」として、地域住民や保護者などの学校の関わり方自体が見直されていくことになるかもしれません。

  • ※「地域と学校の連携・協働の推進に向けた参考事例集」について
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/28/04/1370496.htm

(筆者:斎藤剛史)

プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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