なぜ、小学校からの「プログラミング教育」が必要?

小学生からコンピューターのプログラミングに関する教育を充実させようと、文部科学省は有識者会議を設置して、6月中にも精力的な議論を行い、別に審議している次期学習指導要領(小学校は2020<平成32>年度=今年の1年生が5年生になる年度)に反映させたい考えです。なぜ、プログラミング教育が必要なのでしょうか。

「成長戦略」で急浮上

コンピューターは、プログラミング言語と呼ばれる特殊な英単語や記号によって動きます。今後、人工知能(AI)や、あらゆる電化製品などとインターネットをつなぐ「モノのインターネット」(IoT)などの発展が見込まれており、政府もこうした「第4次産業革命」への対応を、成長戦略の一環に据えました。それにはトップレベルの情報人材を育成する必要があり、初等中等教育(小~高校の教育)でプログラミング教育を必修化する方針を打ち出しました。

次期指導要領の審議でも、中学校の技術・家庭や、高校の教科「情報」で、プログラミング教育を盛り込む方向性が、既に固まっていましたが、小学校はノーマークでした。そこで馳浩・文部科学相は、4月に行われた政府「産業競争力会議」で、小学校からプログラミング教育を必修化するための有識者会議を開くことを表明しました。

一方で、次期指導要領では、現行の教科などの学習内容や授業時数はそのままで、かつアクティブ・ラーニング(課題の発見・解決に向けた主体的・協働的な学び、AL)といった学習形態も取り入れることにしており、授業で扱う内容があふれそうになっているくらいです。新たに教科化される高学年の英語や、中学年から始めることにした外国語活動にしても、増える週1時間分(年間35時間)を、授業のコマ数の増加ではなく、10~15分の短時間授業(モジュール学習)などといった各学校の工夫で、何とか生み出してもらうことにしました。そのうえ、プログラミング教育に特別の時間を割くということは、相当難しそうです。

思考力や問題解決力のためにも

ただ、プログラミング教育は、プログラミングができる人材の裾野を広げるという意義にとどまりません。プログラミングをするには、論理的思考力や創造性、問題解決能力が欠かせません。プログラミング教育には、そうした資質・能力を育める側面があります。それなら、他の教科などと連動させる形で、情報教育の一環としてプログラミング教育を取り入れることはできそうです。

もちろん、それではコンピューターを動かすための本格的なプログラミング教育にはなりません。一方で、有識者会議の委員にもなっている石戸奈々子・慶応義塾大学大学院准教授が主宰するNPO法人CANVASのように、子ども向けのプログラミング教育を行っている団体もあります。そうした外部団体とも連携して、児童の興味・関心に応じたプログラミング教育をどう展開するかが、大きなカギを握ってきそうです。

現代生活は、コンピューターと無縁ではいられないことも確かです。子どもたちが将来の社会で活躍できるよう、小学校段階で求められるプログラミング教育とは何かを絞り込み、情報教育を無理なく充実させるよう、期待したいものです。

  • ※小学校段階における論理的思考力や創造性、問題解決能力等の育成とプログラミング教育に関する有識者会議
  • http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/122/index.htm

(筆者:渡辺敦司)

プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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