お子さまの将来に備える学資保険とは?に関する基礎情報まとめ
お子さまが生まれるとどうしても気になるのが、教育費のこと。幼稚園・保育園から大学まで全て私立に通った場合はおよそ1,677万円、すべて公立の場合でも約500万円かかるとされています(平成24年、文部科学省調べ)。お子さまが2、3人いるご家庭ともなると、マイホームを購入する費用、場合によってはそれ以上のお金が、教育費として必要になってくるのです。ここで心配になるのが、「コツコツと預貯金をするだけで、それだけの資金を貯めることができるの?」「もし子どもを残して親が先に亡くなってしまうことがあったら、教育資金の確保はどうしたらいいの?」ということではないでしょうか?
このような心配事を解決するために存在する保険商品が、「学資保険」というものです。
学資保険ってそもそも何?
学資保険は、お子さまの教育費を確保するとともに、満期までの期間中、さまざまな保障が受けられる保険商品です。
例えば、満期を迎える時期をお子さまの大学入学時期に設定しておけば、大学入学にかかる費用を学資保険で準備することができます。そして、預貯金と学資保険の大きな違いは「もしも、親が早くに亡くなったり、高度障害などを負ってしまった場合、それ以降の保険料の支払いは免除されるとともに、想定していた学資金を満期の時点で受け取ることができる」ということです。預貯金で学資金を用意する場合は、途中で親が亡くなってしまうと、そこから先、お金を貯めることが非常に難しくなるのです。
学資保険には、
・満期時に一括して学資金を受け取るタイプ
・途中でも「祝い金」などの形で一部の金額を受け取ることができるタイプ
があります。
満期時に一括して学資金を受け取るタイプの方が、返戻率が高い傾向があります。ただ、返戻率の高さというメリットは「保険料の払い込みを、契約通り毎月きちんと行った場合」に得られるものです。それまでに家庭の経済状況が苦しくなり、保険料を支払えなくなっては意味がありません。経済的な不安があるというご家庭では、途中で「祝い金」を受け取るタイプを選んでおくのもひとつの方法です。
学資保険は必要なの? メリット4つをわかりやすく解説!
そもそも、学費というのはどのくらいかかるのでしょうか? 文部科学省が隔年に行っている「子供の学習費調査(平成24年)」(※1)によると、次の通りです。
・幼稚園……公立で約23万円,私立で約48万7,000円
・小学校……公立で約30万6,000円、私立で約142万2,000円
・中学校……公立で約45万円、私立で約129万5,000円
・高等学校(全日制)……公立で約38万6,000円、私立で約96万7,000円
義務教育である中学校までとは違い、高校に進学する頃からは、お子さまの進路も多様化していきます。日本政策金融公庫が行なった「教育費負担の実態調査(平成26年度)」(※2)によると、「高校入学から大学卒業までに必要な入在学費用」として880万円が必要というデータもあります。
また、自宅を離れて下宿をするということも考えると、
・自宅外通学を始めるための費用として平均45万円
・大学生への年間仕送り額は平均140万円、大学4年間で約560万円
がさらに必要になるとされています。
大学進学が当たり前となって久しいこのような時代に学資保険を利用するメリットとは、いったいなんなのでしょうか?
◆メリットその1 返戻率の高さ
【返戻率(%)=(満期保険金+祝い金など)÷(支払う保険料の総額)×100】
この数値が高い商品ほど「同じだけの保険料を支払った場合に、受け取ることのできる金額が大きくなる」といえます。
≪給付金の例≫
・アフラック「新しい教育費の貯めかた WAYS学資プラン」の場合
契約から18年後に解約して解約返戻金を受け取る場合
月払保険料16,915円、累計払込保険料3,044,700円、解約払戻金3,314,350円、返戻率108.8%
(http://www.aflac.co.jp/education/)より
・フコク生命「みらいのつばさ」ステップ型
保険料払込期間:17歳、保険期間:22歳満期の場合
月払保険料9,493円、払込保険料総額1,936,572円、受取総額2,100,000円、返戻率108.4% 幼稚園入園祝金5万円、
小学校入学祝金5万円、中学校入学祝金10万円、高校入学祝金10万円、大学入学祝金70万円、成人祝金10万円、満期保険金100万円
(http://www.fukoku-life.co.jp/ad/gakushi/)より
現在の日本では、預貯金の金利が非常に低く、ゆうちょ銀行の通常貯金の金利は0.03%(2015年11月現在)となっています。それに対し、学資保険の保険料を満期まできちんと支払った場合、返戻率は100%を超え、なかには110%台の返戻率を誇る商品もあります。学資金として、できるだけ多くの資金を確保できるに越したことはありませんので、この点は大きなメリットです。
◆メリットその2 他の預貯金との境目がはっきりする
学費を預貯金で準備する場合、気をつけなければならないことがあります。他の理由でお金が必要になったとき、「少しくらい融通してもいいよね」と学費部分を使ってしまう点です。
もしも学資保険の保険料として支払っておいたなら、むやみに使ってしまう心配がなくなります。
◆メリットその3 ご両親の万が一の事態にも備えられる
学資保険には、ご両親が死亡したり、高度障害を負ったりした場合などに、それ以降の保険料支払いを免除するとともに、学資金はそのまま受け取ることができるという保障がついているものがあります。
預貯金をコツコツとしている場合は、万が一ご両親が亡くなった場合、その時点で預貯金も増えなくなってしまうのです。
◆メリットその4 生命保険料控除が受けられる
学資保険の保険料として支払ったお金は、生命保険料控除の対象となります。預貯金に関しては、このような控除がありませんので、「節税になる」という点でも学資保険のメリットが大きいでしょう。
学資保険の注意点
預貯金は「預金保険制度」の対象なので、金融機関がもしも破たんした場合でも、1金融機関1預金者あたりの元本1,000万円までと、その利息等については保護が受けられます。しかし、生命保険会社が経営破たんをした場合には、このような保護が受けられません。そのため学資保険に加入する前に、保険会社の経営状態等についても、確認が必要でしょう。
また、学資保険自体のデメリットではありませんが、ご両親が生命保険に加入している場合も多いかと思います。生命保険の給付金額を決めるときは、「遺族の生活費、学費、住宅に係る費用…」と考えて、金額を設定したことでしょう。「学資保険で給付が受けられるのにもかかわらず、生命保険でも学費部分をカバーしていた」なんてことが起こるかもしれません。すると、必要以上の保障を設定しているため、必要以上に高い生命保険料を支払うことになりますので、注意が必要です。
数ある中から比較して自分に合った学資保険を選ぶには
お子さまに必要な学費は
・幼稚園や学校は公立、私立のどちらに通わせたいか
・大学進学を希望した場合、遠方で下宿するという可能性も考えるか
・奨学金などの利用をどう考えるか
といった、さまざまな条件によって違ってきます。
そして、「学費のすべてを学資保険で用意しなければならない」という決まりはありません。例えば、「預貯金が十分あり、生活を賄えるだけの収入もある」という場合には、預貯金を取り崩さずにお子さまの入学・進学に備えておき、学資保険は利用しないという方法も考えられるのです。
まずは「お子さまに、どのような教育を受けさせたいか」を考えましょう。
次に、文部科学省の「子供の学習費調査」などの統計情報をもとに、必要な費用を見積もります。そして、
・預貯金などでどのくらいの金額をカバーできるか
・奨学金や教育ローンの利用についてどう考えるか
・親に万が一のことがあった場合、生命保険などでカバーできる部分はどのくらいあるか
を考えて、学資保険で準備する金額を決めましょう。
また、月々の保険料支払いについても検討しておきましょう。学資保険のもつ「返戻率の高さ」「万一の場合の保障」などのメリットを受けられるのは、「月々の保険料をきちんと支払い続ける」ことが前提です。もしも、経済的な状況の変化により、保険料を満期まで支払えず解約すると、解約返戻金が支払った保険料の総額を下回る場合や、ゼロということもあり得ます。
自分に合っているかチェックする方法
どの保険商品がご自身やお子さまのためになるか、検討するためのチェックポイントをご紹介します。
まず、ご両親が高齢であったり、健康上のリスクが大きくなるのではと心配な場合は、早めに学資保険に加入しましょう。学資保険には年齢制限があったり、ご両親やお子さまの健康状態によっては加入できないケースもあります。
ご両親が高齢の場合は、定年退職を迎える時点で、まだお子さまが学生というケースもあります。その場合は、払済日が早めにやってくる学資保険を選ぶのがよいでしょう。
学資保険は、満期日までに「祝い金」を受け取ることができるタイプと、満期日に一括して学資金を受け取るタイプがあり、後者の方が返戻率は高いです。ただ、保険料を支払っている間は、手元の現金が少なくなりますので、「大学入学時点で満期を迎える学資保険の保険料支払いのために、小学校や中学校の時点で、十分な準備をしてあげられない」ということになっては、お子さまがかわいそうです。ご家庭の経済状況と照らし合わせて、どちらのタイプを選ぶかを考えましょう。
学資保険以外の方法
【預貯金】
預貯金は「自分の資産」ですので、お子さまの学費として使用することも全く差し支えありません。これから、コツコツと預貯金をしていきたいという場合は、学費用の口座を日常生活で使う口座と分けるなどの方法で「つい、使ってしまった」ということがないよう、気を配りましょう。
【資産運用】
学資保険に加入すると、その保険料をもとに保険会社が資産運用を行ってくれますが、この資産運用を、そもそも自ら行ってしまうという方法もあります。
20歳以上の人を対象としたNISAが既にスタートしていますが、2016年には0歳〜19歳の人を対象としたジュニアNISAがスタートします。NISAは100万円、ジュニアNISAは80万円までの投資枠から得られた譲渡益・分配金・配当金について、税金が非課税となりますので、より有利な資産運用ができます。
ただし、ジュニアNISAは、18歳まで払出をしないことが非課税の前提であり、途中で払出が行われると、それまでに生じた利益について、遡及しての課税が行われます。
また、資産運用を考えるなら「損失を出す」というリスクも、常に意識しなければなりません。損失を出した場合、その結果をお子さまに背負わせることになりますので、よく考える必要があります。
【奨学金、教育ローン】
いずれも「お金を借りて、入学・進学する」という方法です。日本学生支援機構の調査によると、大学生(4年生昼間部)の学生の半数以上が奨学金を利用しており、大学院生になると60%を超える学生が奨学金を利用しているという統計が出ています。
奨学金や教育ローンは、「いずれ返済しなければならない」ものです。そのため、できるだけ少額の借入れで済ませ、返済の負担を軽くするようにしましょう。
【一時払い終身保険】
最近は、祖父母が孫のために学資保険に加入することも増えています。ただ、年齢制限の問題で祖父母が加入できない場合には、一時払い終身保険の活用を考えるのもよい方法です。学資保険はおおむね65歳〜70歳くらいまでの年齢制限が設けられていますが、一時払い終身保険ならば70歳〜85歳と、年齢制限が緩い場合が多いです。
【贈与】
平成25年度税制改正において平成25年4月1日から平成31年3月31日までの間に、祖父母等から孫への教育資金の一括贈与が、1,500万円まで非課税となる制度が設けられました。信託銀行などで教育資金口座を開設するなどの手続は必要ですが、一括して贈与ができることから、
・贈与を早くに完了しておくことができ、祖父母の健康問題などに左右されなくなる
・留学や飛び入学などで教育資金の必要なタイミングが変わった場合も、対応しやすい
などのメリットが考えられます。
ただ、祖父母の方から「贈与する」と言ってくれるなら、贈与を受けやすいですが、祖父母に向かって「贈与してほしい」と頼むのは心情的に難しいかもしれません。
そして、祖父母の生活費を確保したうえで、余裕部分を贈与するという方法をとることも大切です。
学資保険と「子ども保険」の違いって何?
子ども保険は従来、
・医療保障をメインとしながら、学費の準備もできる
・お子さまが誰かを怪我させた場合などに、その損害賠償にかかる費用をカバーする
という保障重視のタイプが主流でした。
しかし最近では、「子ども保険」という名称でありながら、学費の準備を主眼とするタイプのものもあります。逆に「学資保険」という名称でも、保障が充実したものもあるので、名称だけで「貯蓄性重視の商品か、保障重視のものか」を判断するのは難しくなっています。
よくある疑問Q&A
Q.入るタイミングはいつ?
A.学資保険は加入条件が定められており、ご両親の年齢・お子さまの年齢が高くなると、加入できなくなる可能性があります。特にお子さまが7歳以上になると、加入できない商品が増えてきますので注意してください。
また、出産前に加入することもできる学資保険もあり、子育てで忙しくなる前に加入できるというメリットがあります。
Q.ひとり親家庭にも学資保険は必要?
A.もちろんひとり親家庭でも、お子さまの進学に備えて資金準備ができる方が安心です。ただ、学資保険は「満期まで解約しない方が有利」な商品です。万が一、ご自身も他界し、お子さまだけが残される場合に備えるために、収入保障保険に加入するなど、生活費の確保についても検討しましょう。
Q.進路変更(留学・飛び入学など)に備えるには?
A.「大学進学時にお金を準備できるように」とばかり考え、1本の学資保険だけで資金を準備していると、留学や飛び入学などの進路変更時に、資金準備ができにくくなります。例えば「学資保険と預貯金」など、2つの方法で学費を準備しておけば、進路変更にも対応しやすくなるでしょう。
学資保険は、お子さまの学費を準備するために返戻率が高く役立つ商品です。ご両親に万が一のことがあり、収入が途絶えた場合にも備えることができます。
しかし、「学費のすべてを学資保険で準備しなければならない」と決まっているわけではありません。また、いったん加入すれば、その後長らく毎月の保険料の支払いを続けていくことになります。
お子さまの教育に必要な資金はどのくらいか、そのうち学資保険で準備しなければいけない金額がどのくらいかを検討し、月々の生活に無理が出ない範囲で加入することが大切です。
参考:
※1「子供の学習費調査(平成24年)」
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001051974&cycode=0
※2「教育費負担の実態調査(平成26年度)」
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/
kyouikuhi_chousa_k_h26.pdf