2009年度入試で何が問われたか<社会>

難関国・私立中学受験の指導に定評のある先生による、2009年度入試問題の分析をお届けします。
出題形式、分野、頻出キーワードなど、さまざまな角度から分析し、何が問われたのかを解説しています。国語、算数、理科、社会の入試のポイントをご紹介していきますので、ぜひお役立てください。


■首都圏主要校の入試分析<社会>

1都4県(東京・神奈川・埼玉・千葉・茨城)のべ129校の2009年度入試問題の分析結果をもとにした、文教大学の早川明夫先生による、社会入試の出題傾向と今後の対策についてのお話です。
(以下は、2009年3月に開催された森上教育研究所主催「わが子が伸びる親の『技』研究会」セミナーの講演を抄録したものです。)


■社会入試の問題形式

まずは、社会入試の問題形式についてお話しします。社会科は、記号選択・用語記入の問題が中心です。これは従来から変わりありません。しかし、用語記入について漢字指定が多くなり、20年前にはほんのわずかであった記述問題が確実に増えています。2009年度は、一行記述問題も含めると、約8割の学校が記述問題を出題しています。特に女子校において顕著で、女子校だけで見ると9割近くの学校が記述問題を出題しています。

記述問題の内容ですが、圧倒的に多いのは「理由」を問う問題です。資料を提示し、それを読み取り、そこから「なぜか、理由を説明しなさい」「~するためにどのような工夫をしているか」といった出題が増加しています。

<理由を問われる記述問題の例1> 日本女子大学附属 大問1の問4

大問1は、日本と中国の関係についての出題。問4では、元軍が日本に来襲したときの様子を描いた絵が提示され、2度目の攻撃だとわかる理由が問われている。

この問題は『蒙古襲来絵詞』の一部を示して、石垣が築かれていることから、文永の役のあとだということを推測しなければなりません。

<理由を問われる記述問題の例2> 麻布 問3

さくらんぼを販売するうえで農家がどのような工夫をしているか、下の表を参考にして答える問題。


さくらんぼの値段

全国の青果市場における値段の平均値(1kg)1481円
山形県のある農家がインターネットを使って販売する値段(1kg)紙製の箱にバラで入れたもの6930円
紙製の箱に手で入れたもの13860円
木製の箱に手で並べて入れた限定品39900円


これは、「高級感を出して高く売るため」ですが、こういう種類の問題は教科書にも問題集にも出ていません。

<理由を問われる記述問題の例3> 駒場東邦 大問2の問6(2)

人とものの移動に関する出題。問6の(2)では、JRの時刻表をもとにした資料を参考にして解答する、選択式の問題。

大問2は、「交通・輸送」をテーマとした地理・歴史総合問題です。「理由」の説明を求める記述問題が多く見られます。また、問6の(2)のように記述問題ではなくても「なぜ?」を考えないと解けない問題も出題されています。身近なところから理由を深く考えさせる良問です。

このように教科書には載っていない、いわゆる想定外の問題も出題されますが、日頃から資料を見て考える訓練をすることにより「なぜ?」に答えることができるようになります。四谷大塚の『予習シリーズ』のQ&Aなどを活用するとよいでしょう。


■分野別の出題割合

社会の3分野(地理・歴史・公民)の出題割合は以下のとおりです。

地理:歴史:公民(政治国際) = 35:40:25

かつては4:4:2の比率での出題でした。地理が減少し、公民が増えたことになりますが、これは公民分野でも特に時事問題の出題が増加しているからです。時事問題の増加傾向は、今後も続くものと思われます。


■問題の難易

男子校に多かった難問・奇問のたぐいは減少傾向にあります。難問・奇問の対策は必要ありません。無視することです。入試では満点をとる必要はありません。難問対策に時間を費やすより、基礎・基本を徹底し、難問以外の基礎・基本の問題について確実に点数をとることがより大切です。


プロフィール


早川明夫

社会科入試問題研究の第一人者。大学付属中高の教頭を経て、文教大学で社会科の教員養成にあたった。現在、文教大学地域連携センター講師。主な著書に『応用自在』『考える社会科地図』『総合資料日本史』『地図っておもしろい!』(監修・執筆)ほか多数。『ジュニアエラ』の総監修者。

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