多様な個性を肯定する教育への転換を政府が検討中 専門家が解説
明治から戦後を通じて、日本の成長を大きく支えてきた公教育。だが、学級を中心とした一斉授業など、「集団の教育力を生かした指導」には長けていても、「多様な個性に応じたきめ細かい対応」はまだまだ十分でないことも確かだ。そこで、政府の教育再生実行会議では、これまでの教育の強みは引き続き大事にしながらも、「多様な個性が長所として肯定され生かされる教育」に転換することを検討しているという。教育ジャーナリストの渡辺敦司氏に詳しく聞いた。
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発達障害を例に考えてみましょう。文部科学省の推計によると、通常の学級で特別な配慮を必要とする発達障害の児童生徒は6.5%で、40人学級なら2〜3人いる計算になります。発達障害は「発達の凸凹」ともいわれるように、なかなか他の子のようにできない「凹」がある一方で、飛び抜けた才能を示す「凸」を持っていることも少なくありません。しかし、集団教育を中心とする通常の学級内では、単に「変わった子」というだけでなく、「困った子」「扱いにくい子」とされることも少なくありません。これに対して欧米などでは、そうした子どもを「ギフテッド」(先天的に与えられた才能を持つ子ども)と捉え、マイナス面よりもプラス面をさらに伸ばす教育が盛んに行われています。
障害者とされる人でも、最近では「アール・ブリュット」(生<き>の芸術)の担い手として注目が集まっています。これも、普通の人のようにできないことに注目するよりも、普通の人ではできない才能を生かしてもらおう、という発想です。また、障害者雇用を増やして細かい作業にも集中して取り組むなどの特性を生かしてもらい、売り上げを伸ばす「ダイバーシティー」(多様性)の発想を取り入れた企業も出始めています。
また、外国をルーツに持つ子どもはグローバル人材の卵になる可能性を秘めていますし、貧困家庭に育った子どもは、人の痛みがわかるだけに、支援される側から支援する側に回ることができれば、大きな力を発揮することでしょう。政府が掲げる「1億総活躍社会」の実現のためにも、教育面の一層の充実が期待されているのです。
出典:これからは「長所を伸ばす教育」も重視へ -ベネッセ教育情報サイト