コミュニティ・スクールが約2,000校に 当初の理念と「ずれ」も-斎藤剛史-

文部科学省の調べによると、保護者や地域住民が学校運営に参画する「コミュニティ・スクール」は2014(平成26)年4月現在、前年度より349校増えて全国で合計1,919校になったことがわかりました。同省は2012~16(平成24~28)年度の5年間でコミュニティ・スクールを公立小中学校の約1割に当たる3,000校にする目標を掲げていますが、教育関係者の間ではその実現に懐疑的な見方が少なくありません。しかし、このペースでいけば期間内の達成はともかく、その目標数の実現自体はあながち夢ではないようです。

コミュニティ・スクールは、教職員・保護者・地域住民などから成る「学校運営協議会」が教育の基本方針・教育課程・学校予算などの承認権、教員人事に関する意見具申権などを持つ学校のことです。2005(平成17)年度からスタートしましたが、当初は全国で17校にすぎず、11(同23)年度でも789校しかありませんでした。ところが、2012(平成24)年度に1,183校と急増し、13(同25)年度も1,570校に伸びて、とうとう14(同26)年度には1,919校にまで増えました。急増の背景には、2011(平成23)年3月11日の東日本大震災の影響があります。震災で学校が住民の避難所として大きな役割を果たしたことから、「地域と共にある学校」が見直され、地域と学校の連携を図る方策としてコミュニティ・スクールが評価されたことが、急増の大きな要因と言えます。

コミュニティ・スクールの内訳を見ると、幼稚園94園(前年比32園増)、小学校1,240校(同212校増)、中学校565校(同102校増)、高校10校(同1校増)、特別支援学校10校(同2校増)となっています。コミュニティ・スクールを指定している教育委員会は4道県(前年度同数)、187市区町村(前年度比34市区町村増)で、このうち公立学校の全部をコミュニティ・スクールにしているのは東京都世田谷区など55市区町村です。また、京都市や岡山市など14市が40校以上の公立学校をコミュニティ・スクールにしています。
このようにコミュニティ・スクールは増加しているものの、公立学校をすべて、あるいはそのほとんどをコミュニティ・スクールに指定する自治体が多いため、全国的に見れば一部の市町村に偏っているのも事実です。しかし、今年度から教育委員会の判断で自由に土曜授業ができるようになり、地域・保護者・地元民間企業などと連携した学習活動が求められていることから、コミュニティ・スクールのさらなる拡大が期待されています。

ただ、コミュニティ・スクールの「学校運営協議会」は法的には大きな権限を持っているものの、実際は保護者や地域住民による学校支援などに重点を置いた「学校応援団」的な取り組みをしているところがほとんどです。逆に言えば、強い権限を持つ本来のコミュニティ・スクールは、日本の社会風土に合わなかったのかもしれません。その意味で、拡大とともにコミュニティ・スクールの理念も当初から大きく変質しつつあると言ってよいでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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