変質するコミュニティ・スクールの性格‐斎藤剛史‐

中央教育審議会の「地域とともにある学校の在り方に関する作業部会」は、学校と地域の協働を進めるための方策を提言した答申案をまとめました。その内容は以前に当コーナーで紹介したのとほぼ同じで、保護者や地域住民が学校運営などに参画する「コミュニティ・スクール」(学校運営協議会)を拡大することが柱になっています。ここで注目されるのが、コミュニティ・スクールの変化です。

地域住民・保護者・教員などから成る学校運営協議会は、(1)学校運営の方針や予算を承認する (2)校長や教育委員会に意見を言うことができる (3)教員人事について教育委員会に意見を出すことができる、という3つの権限を持っています。制度の創設当時は小泉内閣による構造改革の時代で、閉鎖的な学校の在り方が社会的批判を集めていました。コミュニティ・スクールには、地域住民や保護者の代表を学校に入れることで、学校教育の閉鎖性を打破する狙いがあったことは間違いないでしょう。
このためコミュニティ・スクールについて学校関係者の間では、学校運営や人事の混乱を招くと懸念する声が根強く残っています。コミュニティ・スクールは2015(平成27)年4月現在、全国で2,389校ありますが、中教審の答申案は「地域とともにある学校づくり」のため、全部の公立学校をコミュニティ・スクールにすることを目標に掲げ、その設置を教育委員会に強く求めています。

ところで答申案は、「学校を応援し」「学校支援に関する総合的な企画・立案を行う」などがコミュニティ・スクールの役割であるとしています。同時に関係者から批判が多い教員人事の権限については「柔軟な仕組み」に配慮するとして、事実上、棚上げにすることを示唆しているほか、校長のリーダーシップを重視するため、学校運営協議会の委員を選任するに当たり、校長の意見を反映する仕組みが必要であるとも述べています。つまりコミュニティ・スクールの位置付けが、地域住民や保護者が学校運営に参画する仕組みから、地域住民や保護者が学校を支援するための制度へと変化しているのです。

これは何を意味しているのでしょう。実は現在のコミュニティ・スクールのほとんどは、教員人事の意見を出したり、学校運営に関して見直しを迫ったりするようなことをしていません。教員人事権など強力な権限を持つことには、地域住民や保護者などの間でも抵抗感が強かったからです。強い権限を持つ地域住民や保護者が学校運営に参画するという仕組みは、結局、日本の社会には根付かなかったようです。

コミュニティ・スクールを増やすことには、まだ教育関係者などの間に警戒する声があります。しかしその実態は、地域住民や保護者などによる学校支援のための仕組みづくりといえます。そのようなコミュニティ・スクールの変化を踏まえて、教育関係者や保護者などは「地域とともにある学校」の在り方を考える必要がありそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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