子どもが前向きになる聴き方のコツ[やる気を引き出すコーチング]

ここ数か月、コーチングをさせていただいている高校2年生の女子Mさん。最初に会った時は、非常に後ろ向きでした。「学校をやめたい。もう行きたくない。卒業まであと1年半の辛抱とか言われても、とても長くて耐えられない」。そんな話をポツリポツリと話す感じでした。
ところが、最近は、「この2週間はどうしていましたか?」と質問するなり、勢いよく話をしてくれます。「この前、石川先生と会った翌日がもういきなり最悪だったんですよー!」。話している内容はけっこう深刻そうですが、初めて会ったころより、とてもイキイキして輝いて見えます。

「いろいろあるけれど、学校は楽しいって思えるようになってきました」「最近、勉強も面白くなってきたんですよね」など、今までにはなかった言葉が出るようになりました。自分の課題を自分で解決していく子どもたちの力には、いつも心から感動します。
Mさんのこの変化を、すべてがコーチングによる効果とは思いませんが、5・6回のコーチングの中で、私がMさんに対して行っていたことを今回はご紹介します。


「相手が話したいこと」を聴く

コーチングの基本は、まず「相手の話を聴く」です。ですから、私がしていたことも、その大半が「聴く」ことでした。ひたすら、Mさんが言いたいことを受けとめながら「聴く」だけです。

Mさん:「もう学校行くのしんどいんです」
私  :「そうなんだね」
Mさん:「なんか、私だけクラスで浮いているみたいで、人間関係も面倒くさいし、休み時間も一人で、ずーっと携帯見ています」
私 :「へぇ、そうなんだ」
Mさん:「この前、テストがあったんですけれど、数学が13点だったんですよ。でも、別にもうどうでもいいかなって。勉強する意味わかんないし……」
私 :「そう思うんだね」

こんな感じです。つい、「どうしてそんなにしんどいの?」「何が嫌なの?」「友達とはまったく話さないの?」「あなたはそれで寂しくないの?」「で、勉強はもうしないわけ?」などとつっこみたくなりますが、Mさんが話をしている間は、こちらが聴きたいことは言わないようにします。「こちらが聴きたいこと」ではなく、「相手が話したいこと」を聴く。これがコーチングの聴き方です。「ask」ではなく、「listen」なのです。そうすると、相手はどんどん自分から話してくれるようになります。

先回りして解釈しない

さらに、聴き方のポイントとして、こちらの解釈を入れないようにして聴きます。たとえば、「人間関係も面倒くさいし、休み時間も一人で携帯見ています」という言葉に対して、「それは寂しいね」とか「つまらないでしょう」などのコメントはしないようにします。
「数学が13点だったんですよ」に対しても、「最悪だったね」とか「落ち込むよね」など、相手がまだ何も言っていないのに、こちらが先回りして解釈した感情を伝えないようにします。

こちらの解釈を先に伝えてしまうと、「私、寂しくないんだけれど、ぜんぜんわかってくれていない」という反発心がわいてきたり、「え? 別に落ち込んでいるわけじゃないんだけれど、本当は落ち込んでいるのかな?」と自分の本当の気持ちがわからなくなったりします。すると、面倒くさくなって、話さなくなったり、自分の気持ちを考えることをやめてしまったりします。
ただ受けとるだけで、本人が自分の気持ちを整理し、気付いていきます。自分の気持ちを全部吐き出したあとは、「もう少し、私のほうからも心を開いたほうがいいですよね」「やっぱり、卒業はできるようにがんばらないとね」と自分で言い始めます。

子どもは自分で、前に向かって考える力をちゃんと持っています。私たち大人がそれを信じて、ただ受けとめたら、自分で道を切り開いていくのです。子どもの話をただ聴いてみたらいいのです。

これからのMさんの変化がますます楽しみなこのごろです。

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,620円=税込み>

プロフィール

石川尚子

石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。近著『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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