いじめ防止に必要な基礎知識とは 国立教育政策研究所が解説冊子

岩手県矢巾町で起きた中2いじめ自殺事件は、社会に大きな衝撃を与えました。この事件に対応して、国立教育政策研究所(国研)は、いじめに関する事項などを解説した冊子『いじめに備える基礎知識』をまとめました。教員向け資料ですが、現代におけるいじめの特徴、普段から注意すべき事項、いじめが発生した際の取り組み方などが簡潔にまとめられており、保護者などにも参考になりそうです。

岩手のいじめ自殺事件の特徴は、「いじめ防止対策推進法」の施行後の事件であったこと、連絡ノートを通じて、学級担任が子どもからSOSを受けていたのに対応できなかったことなどです。これについては文部科学省も、学校の体制の見直しを通知しました。
国研は、いじめ防止の基本方針が「全ての教職員の意識や行動の中にまでは浸透しておらず、決められた手順に従って学校として動く体制ができあがっていないこと」に問題があると指摘。いじめ防止法により、すべての学校で基本方針が策定され、対応組織がつくられたにもかかわらず、実際にはそれらが機能していないのではないかという懸念から、いじめに対する基礎知識を改めてまとめることにしました。

冊子は、「いじめの理解と定義」「いじめの発生実態」「早期発見・早期対応」など6項目から成っています。たとえば、いじめの定義や実態などでは、犯罪にあたる暴力行為、暴力を伴ういじめ、暴力を伴わないいじめの3種類を挙げ、暴力を伴わないいじめ(からかい、無視など)は、ほとんどの子どもが被害体験と同時に加害体験も持っており、被害者と加害者が常に入れ替わる可能性があることなどを説明しています。さらに、軽いふざけのようにしか見えなくても、行為の軽重で判断せず、それによる子どもの心身の苦痛の深刻さの度合いで判断しなければならないとしています。

また、いじめのアンケート調査に頼りすぎないよう、釘を刺していることも注目されます。アンケートで発見できるのは、既に起こってしまったいじめだからです。同研究所は、未然防止のため、アンケートに現れないいじめを発見するためにも、すべての児童生徒の観察を怠らないこと、個人の判断で解決せずに必ず教職員が情報を共有したうえで組織として対応することを「基礎知識」として求めています。

さらに、冊子と別に、いじめに関する教員研修用の自己点検シートも作成しました。質問にどう答えたかで、回答者のいじめに対する理解や考え方を診断するものです。たとえば、いじめられた子どもの人権を最優先するのは「少し神経質すぎる」と感じるかで「はい」と回答すると、「大人の側の認識や見解に温度差があればあるほど、いじめの加害者を勇気付けることになります」と問題点が指摘されるようになっています。

子どものいじめ問題について、保護者は十分に理解しているつもりでも、意外と知らないことも多いかもしれません。一度、『基礎知識』を読んだり、自己診断シートを試したりしてみてはいかがでしょうか。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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