首長の関心は学力向上といじめ対策 学校統廃合もテーマ

2015(平成27)年4月から施行された改正地方教育行政法は、教育委員会制度の見直しの一環として、市区町村長など首長が主宰する「総合教育会議」の制度を新設しています。文部科学省の調査結果で、7月までに約8割の市区町村が総合教育会議を開催し、学力向上やいじめ対策、学校統廃合など、多様な問題を首長と教育委員が協議していることがわかりました。

大津市の中学生いじめ自殺事件などを契機に、教育委員会の責任のあいまいさ、隠ぺい体質などが批判され、教育委員会制度の大きな見直しが行われました。注目されるのが、「民意の代表者」としての首長の意向を教育行政に反映させるため、首長と教育委員会が協議する総合教育会議を新設したことです。調査によると、改正法施行の4月から7月までの間に総合教育会議を開催した自治体(予定を含む)は、都道府県・政令指定都市のうち95.5%、市区町村のうち77.5%に上っています。市区町村では2割以上の自治体がまだ開催していませんが、これは4月に統一地方選挙があり、首長が交代したなどの事情があるようです。

開催済みの総合教育会議(6月1日時点)の議題を見ると、同会議での協議を経て策定が義務付けられている、教育の「大綱」(策定者は首長)に関することを別にすれば、市区町村では「学力の向上に関する施策」がトップで、次いで「学校等の施設の整備」「いじめ防止対策」「学校の統廃合」「子育て支援」などの順となっています。教育行政の中でも、学力向上といじめ防止対策について、多くの首長が強い関心を持っていることがうかがえます。
保護者や地域住民の立場から見ると、学校統廃合が総合教育会議の主要なテーマの一つとなっていることも見逃せないでしょう。文科省は、首長が策定する教育の「大綱」の中で学校統廃合、少人数教育の推進、学校の耐震化などの方針を記載することができると通知しています。改正法施行により、学校統廃合については今後、首長の意向が強く反映されるようになりそうです。

一方、「教材費や学校図書費の充実」「少人数教育の推進」などを総合教育会議のテーマにした自治体は少数でした。多額の予算を必要とするような内容は、総合教育会議でもなかなか議題に上りづらいのが実情のようです。
総合教育会議では、議事録を公開することが努力義務とされています。同会議を開催済みの自治体の全部が議事録や議事要旨を作成していますが、それをホームページで公開している自治体は市区町村の75.4%にとどまっています。

教育委員会制度の改革では、政治的中立性が必要とされる教育行政に対して、首長が過剰に介入することを懸念する声も一部にあります。「民意の代表者」である首長が教育行政についてどのような方針を示し、具体的にどのような注文をつけているのかを知るためにも、保護者などは今後、首長が主宰する総合教育会議の議論の内容に関心を持って注目していく必要がありそうです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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