推薦入試導入の東大が「公平性」以上に求めるものは?
12月1日は、東京大学が初めて実施する、推薦入試の第1次選考結果の発表日。東大の推薦入試導入には、国が進める大学入学者選抜改革の先導的取り組みという側面がある。ベネッセ教育情報サイトでは、「大学入試の公平性」という観点から、東大推薦入試の意義について教育ジャーナリストの渡辺敦司氏に話を聞いた。
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東大の推薦入試に出願できる生徒は、高校の学校長が「責任をもって推薦できる者」であることはもちろん、人数は男女各1人で、男子校や女子校の場合は1人だけです。一般入試で多くの卒業生を東大に送り出してきた、いわゆる上位校ほど校内選考が厳しくなるといえ、男子校・女子校は共学校に比べて不利。「他の高校に比べて不公平だ」という声が出ても不思議はないでしょう。
しかし、それこそが東大の狙いといっても過言ではありません。
推薦入試の募集要項には、「高等学校等の生徒の潜在的多様性を掘り起こす」とあります。一見、不公平に思える入試でも、それが入学後の教育を活性化し、さらには日本の高校の可能性を広げるという、まさに「高大接続」の観点から実施しようというわけです。
入試の公平性に関して中央教育審議会は、高大接続改革を提言した2014(平成26)年12月の答申で、1点刻みの試験だけに依存した入試が公平だという社会観念を断ち切らなければならないとまで言っています。
加えて、公平性の代わりとなるのが「公正性」と指摘。「年齢、性別、国籍、文化、障害の有無、地域の違い、家庭環境等の多様な背景を持つ一人ひとりが、高等学校までに積み上げてきた多様な力を、多様な方法で《公正』に評価し選抜するという意識に立たなければならない」としています。
東大の推薦入試の定員は全学部合わせて100人で、約3,000人の募集人員に比べればわずか。一般入試で公平性も確保されているといえます。公平でない入試の導入は、公正性のために必要との意義も込められているのでしょう。
出典:東大の推薦にみる入試改革の「公平性」 -ベネッセ教育情報サイト