知ってる?「水田」は米作りだけではなかった!?
私たちの主食であるお米は水田の稲作で収穫されます。ただ、実は水田は、お米を作る以外にも、日本人の生活のためにいろいろと重要な役目を果たしているのを、ご存じですか?古くから、日本の国土の自然の中で水田がつとめてきた役割を見ていきましょう。
水田とは?
水田とは、稲作をするための水を入れた田んぼのことをいいます。この水田で私たちが主食としているお米が収穫できるのです。ただ、実は水田を作ることで手に入れられる食材は、お米だけではありません。古来より、日本人は水田でさまざまな食材を手に入れることができました。
かつては水田で魚が捕れた?
元来、水田は、様々な魚や貝が集まってくる場所でした。ドジョウやふな、タニシなど、水田を住処にして産卵をする魚介類は少なくはなく、水田が増えるとともに、魚たちの住処もふえていく、いわば魚たちが自然に養殖される土地でもあったのです。
昭和30年代から、農薬や化学肥料が使われるようになっていったのと同時に、魚たちは水田から姿を消してしまいましたが、かつては、水田で稲作をしながら、人々はそこにすみつく魚を捕る水田漁労(ぎょろう)を行っていました。また、信州などの海から遠い内陸では、水田を利用したコイの養殖などもさかんに行われていたのです。
水田は豆や麦の栽培地でもある
日本の水田では、田植えの前になると、水漏れを防ぐために、田と田の間をしきる畦(あぜ)をきれいにする作業をおこなっていました。そして、その畦(あぜ)に大豆や、小豆、空豆などをまいて栽培していたのです。ここでとれる豆の量は相当なもので、畦(あぜ)でとれた分で、一年間に使うお味噌用の大豆をすべてまかなえる場合もあったとか。
また、水田は稲作をしない冬の間は、乾燥させていわゆる乾田にすることができ、そこで小麦や大麦を育てることができました。そこで作られた小麦は粉にしてうどんなどにすることができ、大麦はお米に混ぜて炊いて食べるなど、それぞれ日本の日常的な食材として、とても重要な役割を果たしてきたのです。
日本の食材は水田から
米、魚介類、豆や麦。これらはすべて、古い昔から今日に至るまで、日本の家庭の食卓に欠かすことのできない食材ばかりです。かつて、これらのすべてを手に入れることができたのが水田という土地でした。この水を入れた田んぼが、私たちの食卓にもたらしてきた価値ははかりしれず、そこにはまさに日本の食の原点が存在しているといってもよいでしょう。
参考:新谷尚紀編著『読む・知る・愉しむ 民俗学がわかる事典』(日本実業出版社)