マイナスの思い込みは子育てに禁物! 子どもを枠にはめずにのびのび育てるには【前編】

保護者の声掛けや態度が、子どもに思い込みを与えてしまっているという理論を提唱しているのは、四国大学教授で心理学の専門家・鈴木敏昭先生です。子どものころに抱いた思い込みが心に巣をくい、成長過程の中で考え方や行動へ表れることがあるといいます。保護者からのどのようなアプローチが、子どもに思い込みを抱かせてしまうのでしょうか。注意のポイントと対策を聞きました。



家庭のなかで思い込みが生まれる

子どもにとっての保護者は絶対的な存在です。特に、幼少期は家族だけが唯一の社会なので、思い込みはこの時期に根付くことが多いといわれています。

幼少期の子どもは、「保護者の期待に応えなければ」という思いを無意識に抱いているものです。たとえば、「よい学校に行くのがあなたのため」という保護者の言葉を、子どもは「保護者を満足させるにはよい学校に行かなければいけない」と思い込む可能性があります。「そんな思いで言っているわけではない」と感じるかたも少なくないでしょうが、思い込みは「言外のメッセージ」と呼ばれる言葉以外の意味を深読みすることで生まれるのです。

思い込みがどんな影響を与えるかは、人によって違います。ただ共通することは、マイナスの思い込みを抱いたまま大人になっていくと、本心を言えなかったり、我慢を強いた人生を歩んだりしてしまうなど、のびのび生きられない可能性があるということです。



思い込みを生む「ストローク」を認識する

思い込みのパターンの一つ「ストローク」という考え方には、「条件付きのストローク」と「無条件のストローク」があります。条件付きのストロークとは、「○○したら、△△してあげる」という表現。たとえば、「100点取ったら、おもちゃを買ってあげる」という声掛けです。このような声掛けから、「〇〇しないと、保護者の期待に応えられない」という子どもの思い込みが生まれる可能性があります。

一方で、「無条件のストローク」は、「生まれてくれてありがとう」という保護者の素直な気持ちを子どもに伝えていくことです。子どもが自分は存在するだけで保護者の喜びなのだと知ることは、今後生きていくうえで大きな支えになります。



禁止令という思い込み

保護者と子どもの関係でもう一つ重要なのが、「禁止令」という思い込みです。
「お兄(姉)ちゃんなんだから、しっかりしなさい!」という言葉から、子どもは「子どもでいてはいけないんだ」「甘えてはいけないんだ」という禁止令だと思い込んでしまうかもしれません。こうした禁止令が冷凍保存のように残り続け、大人になっても弱音を吐けないタイプになってしまうことがあります。
また、子どもの年齢不相応に世話を焼いてしまう家庭で育った場合は、子どもは「大人になってはいけない」という禁止令を受け取る可能性があります。この場合、成人しても誰かに依存してしまう傾向から抜け出せないこともあります。



マイナスの思い込みから抜け出す、「精密な言葉掛け」

思い込みはちょっとした配慮で防ぐことができます。また、一度抱いた思い込みも考え方一つで手放すことができます。

それには、思い込みの余地を廃し、子どもにもわかるような対話を意識した「精密な言葉掛け」が大切です。「よい学校に入るために勉強しなさい」という声掛けだったのを、「私はあまり勉強に集中できず、受験で悔しい思いをした。いま戻れたら、もっと勉強して絶対よい学校に入りたい。そうしたら、仕事の選択肢も広がると思う。あなたはどう?」というイメージです。
「子どもといつも一緒にいるからわかっているはず」という考えは禁物です。子どもには、保護者が思っている以上に、伝えたいことの背景を精密に話さなくては真意が伝わりません。考えを丁寧に伝えることで、子どもがマイナスの思い込みを抱くことを防ぐことができるのです。

思い込みは思考が停止すると、刷り込まれるという特徴があります。そのため、「どうして?」「なぜ?」と子どもと一緒に考えるクセをつけましょう。そうしたことの繰り返しが、マイナスの思い込みを防ぐ方法であり、また、保護者・子どもがお互いにマイナスの思い込みをしないように習慣づけていくことが大切だといえるでしょう。



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プロフィール

鈴木敏昭

鈴木敏昭

四国大学生活科学部児童学科教授。京都大学大学院教育学研究科修了。自己意識の構造をメインテーマとして、思い込みや人格形成などの研究をしている。

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