砂かぶれ様皮膚炎の症状や原因は? 手や足の裏にできる赤い斑点の正体

乳幼児がなりやすい皮膚炎の一つに、手のひらや足の裏に小さな赤いブツブツが多発する「砂かぶれ様皮膚炎」があります。砂にかぶれたように見えるため、このような名前で呼ばれていますが、原因はウイルス感染症という説が有力です。いったいどのような皮膚炎なのでしょうか。神奈川県立こども医療センター皮膚科部長の馬場直子先生に伺いました。



砂かぶれ様皮膚炎の症状は?1歳をピークに、0歳後半~4歳でなりやすい

砂かぶれ様皮膚炎というのは通称であり、正式には小児掌蹠丘疹性紅斑性皮膚炎(しょうに・しょうせき・きゅうしんせい・こうはんせい・ひふえん)といいます。

症状は、手のひらと足の裏に、1~2ミリの非常に細かい赤い丘疹がたくさんできて、次第にそれらがつながり、手のひらや足の裏の全体が真っ赤に腫れたようになっていきます。やがて腫れが引いていくと、薄皮がむけて、しわしわとなり、だんだんと治っていきます。その過程に約4週間と比較的長くかかるのが特徴です。
手のひらと足の裏以外に、赤い丘疹ができることはほとんどありません。まれに、頬や口の周りに丘疹ができる場合もあります。また、発熱も伴わないほうが一般的で、出ても微熱です。治るまで1か月近くかかりますので、保護者のかたは心配になると思いますが、深刻な病気につながるような皮膚炎ではなく、後遺症もありません。



かかりやすい年齢や季節は?

砂かぶれ様皮膚炎は、0歳後半~4歳児がなりやすく、1歳児で発症する割合が最も高くなっています。一度は経験したことのある子どもが大勢いる、一般的な皮膚炎です。



季節的には、5~6月をピークに春~初夏に発症がよく見られ、男女比は3:4で、女の子のほうがやや発症が多いようです。

砂かぶれ様皮膚炎の治療は?かゆみが強い時はステロイド軟膏などを

自然に治癒する良性の疾患で、治療は特にありません。しかし、かゆみがひどいのが特徴で、かゆくてしかたなく、夜、なかなか寝つけない場合もあります。自分でかいたり、手足を何かにこすりつけたりすると、患部が熱を持ってしまい、余計にかゆくなってしまいます。かゆみを抑えるためには、ステロイド軟膏(なんこう)などの炎症を抑える薬を塗るとよいでしょう。かゆみが引けば、かゆみによるストレスも収まっていきますし、そうすれば、遊びなどでほかに気を紛らわすこともできます。



また、薄皮がむけてかさかさしてきた時には、尿素軟膏や、ヘパリン類似物質(ヒルドイド)などを塗って保湿をします。良性の疾患ですから、保育園や幼稚園での生活には、何も支障はありません。炎症があまりにもひどい場合には、炎症を起こした手で遊具を触ったりすると、二次的に炎症が進んでしまうかもしれないので、外で遊ぶのは控えたほうがよいでしょう。

砂かぶれ様皮膚炎の原因は?ウイルス説が有力で再発の心配はほぼない

砂かぶれ様皮膚炎の原因としては、現在、ウイルス感染症が最も有力です。発症例が1歳児に多く、それがちょうど、公園で砂場遊びを始めるころであり、砂による刺激性の皮膚炎ではないかと考えられていたため、砂かぶれ様皮膚炎といわれていました。しかし、砂に触っていなくても同じ症状が出ること、また、一度発症すると、ほぼ再発しないことなどから、ウイルス感染症ではないかと考えられるようになりました。
接触性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎であれば、砂などに触った部分にだけ発症しますが、赤い丘疹は手のひら、足の裏にほぼ均等に発症することからも、ウイルスが原因だと考えられます。ウイルスが原因であると考えられてはいるものの、人から人への感染はありません。



かゆがるお子さまを見るとどうにかしてあげたいと思うかもしれませんが、赤い丘疹をなくすような根本的な治療法は現段階ではわからず、かゆみを抑えるための対処療法しかありません。自然に治るのを待ちましょう。

病院に行き、症状が類似する皮膚疾患との鑑別を

砂かぶれ様皮膚炎は、熱もほとんど出ず、重症化しにくい、良性の疾患です。大流行するようなこともないために、一般的にあまり知られていないようです。だからこそ、経過観察をし、ほかの皮膚炎ときちんと鑑別するためにも、病院に行って、診断してもらうことをおすすめします。



初期症状などが似ている皮膚炎は3つあります。手足口病・川崎病・溶連菌感染症です。



手足口病は、手のひら、足の裏に水疱(すいほう)ができます。症状が現れる部位が砂かぶれ様皮膚炎と似ていますが、手足口病はしっかりした大きさの水疱がぽつぽつとでき、また、水疱は口の中にもできます。一方、砂かぶれ様皮膚炎は、1~2ミリの細かい丘疹が密集してできるという違いがあります。



川崎病は、手のひらや足の裏が真っ赤になって腫れて、最終的にずるっと皮がむけていくという特徴があります。その真っ赤になって腫れた状態が、砂かぶれ様皮膚炎と似ています。ただし、川崎病では発熱が持続するという特徴があり、その点が砂かぶれ様皮膚炎とは大きく違う点です。高熱が続くので、全身状態が違います。



溶連菌感染症は、かゆみを伴う赤い丘疹ができるという点で、砂かぶれ様皮膚炎と似ています。ただし、溶連菌感染症は手のひらと足の裏に限らず、全身にぶつぶつができます。また、のどの痛みや腫れの症状が出ること、発熱を伴うことが多く、そうした点で鑑別できます。



手足口病は、地域や時期によって流行が見られますが、砂かぶれ様皮膚炎は、特定の時期や地域で流行することが見られません。感染したとしても、不顕性感染の場合もあり、そのような子どもは大勢いると考えられます。そのため、予防という観点でできることはあまりないのが現状です。お子さまが普通に生活を送っていれば、ウイルスに感染する可能性はあり、また良性の疾患ですので、過度に心配することはありません。

小さな子どもにステロイドを塗っても大丈夫?

砂かぶれ様皮膚炎の対処療法として、ステロイド軟膏(なんこう)を塗ることを挙げましたが、小さなお子さまに塗ることに抵抗があるかたもいるようです。しかし、「かいちゃダメ」と言っても、小さな子どもには難しいものです。あまりにもかゆがり、ストレスがたまっているようであれば、薬を塗って、かゆみを抑えたほうが、子どもの精神的によいかと思います。



病院で診察を受け、ステロイド軟膏を処方されたのであれば、問題ありません。夜、お子さまが寝付いたら、薬を塗ってみてください。夜、寝付けないほどかゆいというのであれば、軟膏を丁寧に塗り込んで、余った部分をティッシュなどで拭き取るという方法ではどうでしょうか。しみこんだ薬は、なめても容易に取れず、口から薬が吸収されてしまうという心配も少ないと思います。また、ステロイド軟膏でなくても、ほかにかゆみを抑える塗り薬や、坑ヒスタミン剤の飲み薬でもよいでしょう。
また、保冷剤や冷やしておいた濡れタオルなどを当てて患部を冷やすと、かゆみを抑える効果があるので、試してみるのもおすすめです。



再発がほとんどないことからもわかるように、子どもが砂かぶれ様皮膚炎になったからといって、保護者が感染することもほとんどありません。また、不顕性感染のケースもあることから、お子さまが砂かぶれ様皮膚炎になったからといって、ほかの人との接触をまったく絶つ必要はありません。あまり神経質にならずに、いつもと同じように保育園や幼稚園での生活を送ってください。

プロフィール


馬場直子

神奈川県立こども医療センター皮膚科部長。滋賀医科大学医学部卒業。横浜市立大学医学部皮膚科、横須賀共済病院皮膚科勤務などを経て1994年より神奈川県立こども医療センター皮膚科医長。2002年から現職。横浜市立大学皮膚科臨床教授を兼任。

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