『ベネッセ進学フェア2015』講演会【第3回】2016年度 中学入試・後悔しない受験校選び

私学教育研究の第一人者である森上展安氏が、受験校選びのこつについてお話しします(『Benesse進学フェア2015』講演会 2015<平成27>年5月、東京国際フォーラムより)。

<Benesse進学フェア2015 森上展安さん講演会(動画)>



学校選びで後悔しないために

「後悔しない受験校選び」でいつも申し上げているのですが、入学して「この中学校は合わない」と思ったなら、なるべく早く、ゴールデンウィーク明けにでも学校を変えたほうがよいでしょう。「そんなばかな」と思われるかもしれません。「後悔しない」という点からいえば、「合わない」ということはないに越したことはありませんが、もし「合わない」のであれば、早く変えたほうがよいと思います。

決める基準は、得意なものがあり、楽しい生活ができる学校かどうかです。「主要5教科」ではなく、むしろ「技能4教科」の美術や体育、音楽などが得意で活躍できる、あるいはクラブで活躍できると、お子さまは学校に自分の根城ができて、楽しい生活を送ることができます。そのような場合、その学校は「合っている」といえます。



中学校時代にはリーダーシップを身に付けさせたい

リーダーシップを養成できるのは中学校時代くらいです。マイナーなスポーツなどを選べば小さな単位でリーダーになれるでしょう。小さい集団でリーダーシップをとる経験を、中学校時代に経験しておくとよいでしょう。
学校は勉強するところですから、勉強はできるに越したことはありません。「できる子が偉い」のも事実です。ですから、入学後、なるべくお子さまが成績で上位に入れる学校を選んだほうがよいでしょう。ただし、入試の成績が振るわなくても、入学後にがんばればよいのです。ただ、入学後にがんばらなくなるお子さまもいらっしゃいます。せめて中2までは、しっかりがんばってください。



新しい大学入試に対応するために……数学と英語をどうするか

私立大学の文系学部であれば、数学を勉強しなくても入学できる時代が長く続きました。しかし、これからの高等教育において、数学は必須になると思われます。したがって、数学的素養をどのように身に付けるかということが、かなり重要です。今後の、センター試験に代わる大学入試は、数学をある程度組み込んだものになるでしょう。先日、文部科学省が国立大学に文系学部の再編を求めました。実際にどうなるかはまだわかりませんが、現実に、そういう方向性が打ち出されているのです。

また、大学入試が変わろうと変わるまいと、英語はなんとかしなくてはなりません。実際、大学入試に「TOEFL」(英語を母国語としない人々の英語能力を判定する、世界規模のテスト)などが導入されることが、ほぼ決まっています。コンピューターを使ったテストになるでしょうから、発音(オーラル)の部分も必要です。アメリカでは、小・中・高を通じて、ずっと「show and tell(相手に対して物事を話し伝えること、プレゼンテーション)」をしています。自分の言葉で、絵に示して説明することを、何回も何回もやらせます。

いま、いろいろな学校で英語を身に付ける試みがされています。インターナショナルスクールに行くお子さまもいますし、海外の大学との交流をしている学校もあります。これらの中でいちばん大事なのは、実際に大学などのプロの教育者から、指導を受けることです。



新しい大学入試に対応するために……IBと多面的評価

さらに、IB(International Baccalaureate、国際バカロレア<世界共通の大学入学資格を与える教育プログラム>)の導入も進んでいます。既に筑波大・岡山大・国際教養大・玉川大・上智大・関西学院大等が、IBディプロマ(IBの卒業証明書)で進学できるようになりました。2016(平成28)年には東京大や京都大が一部で導入します。おそらく18(同30)年くらいまでには、そのほかの主要大学でも導入が進むと思われます。これにともなって、今後は高2・高3では英語で教科の勉強をし、それを生かして進学するルートが、日本国内でもできてくるでしょう。

大学入試における多面的評価も広がるでしょう。実際には面接等でお子さま本人の中学校・高校の業績を聞くことです。今までの入試では、入り口で人数等を規制してきましたが、入試人口の減少で変化が生まれています。
たとえば、今年度、神奈川県の私立女子中学校は、おおむね志願者が少なめで、低い倍率でした。受験生が東京都の学校へと流れたためです。倍率が低ければ、その学校は学力の高さを維持できません。つまり、入試で生徒を絞り込むことが難しくなっているのです。だからといって「楽だろう」と易きに流れると、どんどんアジア各国など、近隣諸国との競争に勝てなくなってしまいます。

これまで難しかった学校に入りやすくなっている今だからこそ、英語や数学をきちんとした基準で、きちんとした能力を身に付けて送り出してくれる学校を選ばなければならないといえます。



時代の変化に対応したネットワークづくり

校外のいろいろな機関など、外の世界とうまくネットワークを組んでいる学校が、今の時代にはふさわしいといえます。ICT(情報通信技術、ITにネットワークの概念を加えたもの)で、どこにいてもつながっている世の中ですから、本当に信頼して話をできるかどうかという部分には、長い付き合いが必要で、それには学校の人脈やネットワークが生きてきます。現代の日本は、「無縁社会」などとも言われますが、学校のネットワークは、まだ生きています。中学校・高校と仲のよい学校はたくさんあります。ぜひ、仲のよい学校に入学し、将来に伸びる可能性があり、うまくいかなかった場合にも、声をかけてくれる仲間を得る場として学校を選ぶとよいでしょう。


プロフィール


森上展安

森上教育研究所(昭和63年(1988年)に設立した民間の教育研究所)代表。中学受験の保護者向けに著名講師による講演会「わが子が伸びる親の『技』研究会」をほぼ毎週主催。

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