世界が動いた! 脳を明らかにするあの3大プロジェクトとは?
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人間の心の所在と言われている脳。私たちの日々の行動から、記憶や思考まで担っている大事な部位です。しかし、その役割をどう行っているのかはよくわかっていません。そこで今、人間の脳を理解するために、世界各地で取り組みが盛んになっています。どの取り組みも、目指すところは脳の構造、とりわけ神経細胞・ニューロンがつくるネットワークを明らかにし、脳が働くときの様子を再現することです。

先駆けとなった欧州のHuman Brain Project
最初に声を上げたのは欧州でした。2013年1月に10年間での達成を目処に計画されたのが、Human Brain Project。
このプロジェクトでは人の脳の働きを明らかにするために、スーパーコンピューターでの脳シミュレーションを完成させることを目標にしています。コンピュータ上で脳のネットワークと働きを再現させようというわけです。
2023年には計画の達成とともに、脳や精神の疾患を治療する診断方法や治療法が生まれ、シミュレーションのために発達したスーパーコンピューターの恩恵によって、省エネルギーで高性能なコンピュータや新しいロボット制御技術といった、さまさまな技術発展を及ぼすと期待されています。
オバマ大統領が宣言したBRAIN Initiative
アメリカも脳の構造を明らかにすることに意欲的です。欧州と同時期の、2013年4月にオバマ大統領が演説で発表した一大プロジェクトがBrain Research through Advancing Innovative Neurotechnologies(BRAIN) Initiative。
政府が主導するものの、民間や研究機関にも協力を呼びかけ、国を挙げた一大プロジェクトとなっており、ナノ科学や脳のイメージング技術、工学、情報学などの新しい科学技術を応用して、次世代技術の開発によるツール作りから始まっています。
技術開発には、観測装置や通信技術、コンピュータの発達といったさまざまな技術限界を突破することが必要とされており、計画が成功した暁には、多大な恩恵がもたらされるはずです。もちろん、脳疾患や精神疾患へのアプローチもされています。
日本で始まったBrain/MINDS
実は、日本でも脳機能を明らかにしようという試みが始まっています。それが2014年10月に始まった、革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト(Brain/MINDS)。欧米の試みとの違いは、南米に生息し、人間のように社会性に富んでいるサル、コモン・マーモセットをモデルとしたことです。
遺伝子改変し、人間と同じ脳疾患をもつマーモセットをつくり、解析をするなどして、人間の脳の働きをモデル化しようとしています。マーモセットを使った実験は、脳科学研究、とりわけ脳疾患の研究ではよく行われており、日本がリードする技術です。
この伝統的な技術に、ナノ分野や脳のイメージング技術の発達を達成することで、革新的な技術発展がなされるだろうと期待されています。欧米よりも堅実な方法をとっている、と言えるかもしれません。
各国が独自に取り組む脳研究プロジェクト。どれも本気で脳という人体の謎に取り組んでいます。科学のメスが入ることでどこまで脳を解明できるのか、とても楽しみですね。
参考:
Human Brain Project
https://www.humanbrainproject.eu/
The BRAIN Initiative
http://braininitiative.nih.gov/
革新的技術による脳機能ネットワークの全容解明プロジェクト
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