『ベネッセ進学フェア2015』講演会【第1回】「2016年度入試 押さえておきたい時事問題」

社会科入試問題の専門家、早川明夫氏が、2016(平成28)年度入試における時事問題の傾向と対策を解説します(『Benesse進学フェア2015』講演会 2015<平成27>年5月、東京国際フォーラムより)。

<Benesse進学フェア2015 早川明夫さん講演会(動画)>



入試における時事問題とは

入試における時事問題とは、主に入試の前年に起こった出来事を指します。中学校の先生がたは夏休みに問題を作成することが多いので、出題される時事問題は、夏休みあたりまでのことが主だと考えられます。しかし、12月ごろに起こったことが、翌年の入試問題で取り上げられることもあります。すなわち、出題の中心は夏休みまでの出来事ですが、重大な出来事が起こった場合には、夏休み以降の出来事であっても出題される可能性が高いといえます。



周年問題……2016年度入試では「戦後70年」に注目

受験する前年(2015<平成27>年)、あるいは受験する年(2016<同28>年)を基準として、10年前・50年前など、節目の年の出来事もしばしば問われます。これを「周年問題」といいます。2015年の400年前(1615<慶長20>年)には、大坂夏の陣で豊臣氏が滅びました。


70年前(1945<昭和20>年)の終戦後の重要な出来事は、出題の可能性が極めて高いでしょう。1945年7月26日に、アメリカ・イギリス・中国の3か国が日本に無条件降伏を求める「ポツダム宣言」が発表されました。その後、9月2日に日本は降伏文書に署名(調印)し、降伏しました。そのため、日本が全面降伏した日付は、1945年9月2日です。玉音放送のあった8月15日ではありませんので、気を付けましょう。

また、1945年に起こった重大な出来事を並べ替える問題の出題が予想されます。並べ替え問題は、受験生の苦手とするところです。歴史の流れを頭に入れておきましょう。



2015年入試の出題傾向……世界遺産に登録された富岡製糸場が頻出

2015年度入試に出題された事項のうち、いちばん多く取り上げられたのは、世界遺産に選ばれた「富岡製糸場」でした。

実際の入試問題で見てみましょう。


問題:富岡製糸所が建設された理由として誤っているものを選びなさい

ア. 工場建設に必要な広い土地が用意できたから
イ. 製糸に必要な水が確保できたから
ウ. 機械を動かす燃料の石油が近隣でとれたから
エ. 生糸の原料の繭(まゆ)が確保できたから


工場を建てる際の立地条件を問う問題です。正解は「ウ.」です。燃料として使われていたのは、「石油」ではなく「石炭」でした。

最近は、社会科で用語を問われることが増えており、用語を一つひとつきちんと理解しているかどうかが重要です。たとえば、「製糸」とは「繭から生糸をとる」ことです。「養蚕」とは「蚕を飼って繭を作らせる」ことです。このような、言葉の意味をしっかり理解することが大切です。理解することで、記憶がより定着します。富岡製糸場の開業は1872(明治5)年で、新橋~横浜間に鉄道が開通したのと同じ年です。また、この年は、近代的な学校制度を定めた教育法令である「学制」が頒布された年でもあります。こうしたことも含め、いろいろな角度から出題されますから、しっかり覚えておきましょう。



教科の枠を超えた横断的な学習を

また、理科でも富岡製糸場が取り上げられました。蚕は以前から生物学の研究には欠かせない、チョウやガの仲間に分類される昆虫です(蚕の成虫はガです)。幼虫の足の数や形、成虫になるまでの脱皮の数(幼虫の時に4回、繭の中でさなぎになる時1回、成虫になる時1回)などが、実際に出題されました。いろいろな角度から富岡製糸場を考える必要があるといえます。

さらに、「社会」「理科」の枠にとらわれない、教科の枠を超えた横断的な学習が求められています。
ロケットの打ち上げ基地はなぜ種子島にあるのでしょうか。ロケットの打ち上げには地球の自転が利用されます。赤道に近いほど自転のスピードは速く、打ち上げに適しています。ですから、日本ではいちばんふさわしい場所は本来なら沖縄だといえます。しかし、ロケットの打ち上げ基地を作ろうとした時、沖縄はアメリカ軍の占領下にあり、建設することができませんでした。
ロケットの打ち上げについて理解するには、社会と理科の両方の知識が必要なのです。



世界で起きているさまざまな時事問題

世界地理がかかわってくる問題もあります。クリミア半島をめぐるロシアとウクライナの争いは、地図を見るとよくわかります。したがって、世界のことでも日本のことでも、地名が出てきたら必ず地図帳で確認することが大事です。



2016年度入試の出題予想

2016年度入試で問われると予想されるのは次のような事項です。

 ●国連防災世界会議が仙台で開催
 ●北陸新幹線開業
 ●18歳の選挙権(改正国民投票法)

テストでは「満点を取らなくてはならない」と考えているかたがいますが、その必要はありません。満点ではなくてもよいので、合格点を取ることを目指しましょう。難しい問題に対する対策でいちばんよいのは、特に対策を立てず、手をつけないことです。難問に時間をかけるよりも、基礎・基本の習得に時間をかけるのが賢明です。



プロフィール


早川明夫

社会科入試問題研究の第一人者。大学付属中高の教頭を経て、文教大学で社会科の教員養成にあたった。現在、文教大学地域連携センター講師。主な著書に『応用自在』『考える社会科地図』『総合資料日本史』『地図っておもしろい!』(監修・執筆)ほか多数。『ジュニアエラ』の総監修者。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A