金環日食など2012年の天文関係のトピックスを知る
2012年5月21日、日本の多くの地域で、太陽が月に隠されてドーナツのように見える「金環日食」が観察可能となります。日本で観察できるのは25年ぶり、東京では173年ぶりというとても貴重な機会です。中学入試の理科では、珍しい天文現象をきっかけに、関連した天体についての知識や考えを問われる問題がよく出題されます。そこで今回は、金環日食をはじめとする2012年の天文関係のトピックスについて解説しましょう。
クイズde基礎知識
金環日食とは?/どこでどのように観察できる?/どんな時に起こる?/2012年6月6日に太陽の手前を横切る惑星は?/金星ってどんな星?
時事問題を学ぶきっかけになる題材をクイズ形式でご紹介します。基本情報の整理に、親子で時事問題について話題にするきっかけに、入試・適性検査対策に、お役立てください。
Q1
金環日食とはどんな日食のこと?
A.月の周りから太陽がはみ出して見える日食のこと
B.太陽が月によって全部隠される日食のこと
C.太陽の一部だけが月に隠される日食のこと
A1 正解は 「A.月の周りから太陽がはみ出して見える日食のこと」 です。
提供:猪名川天文台
猪名川天文台ホームページより
( http://www.town.inagawa.hyogo.jp/~etc/Astropia/Nissyoku/nissyoku.htm )
日食とは、月によって太陽の一部または全部が隠されてしまう天文現象で、地球から太陽を見た時、月が太陽の手前を横切るために起こります。Bの「太陽が月によって全部隠される日食」は皆既日食(皆既食)、Cの「太陽の一部だけが月に隠される日食」は部分日食(部分食)といいます。そして、皆既日食のように月が太陽を完全に覆い隠すのではなく、太陽のほうが月よりやや大きく見えるため、月の周りから太陽がはみ出して見える日食を金環日食(金環食)といいます。
皆既日食の時には、辺りが夜のように暗くなって星が見え、太陽の周りにプロミナンスと呼ばれる炎が出ている様子を観察できます。金環日食ではそこまで暗くはなりませんが、晴れていても曇ったかのように薄暗くなり、太陽がドーナツ状に見える様子を観察できます。
日食は、さまざまな条件が重なって初めて観察できます。観察できたとしても部分日食のことが多く、皆既日食や金環日食を観察できる機会はめったにありません。2012年5月21日に日本で金環日食が観察可能となりますが、これは日本では1987年9月23日以来、25年ぶりのことです。次回は18年後の2030年ですから、とても貴重な機会といえます。
Q2
金環日食が起こる場合、日本各地でどのように観察できるか、正しいのはどれ?
A.日本のどこでも同じ時刻に観察できる
B.日本のどこでも観察できるが、時刻は場所によって違う
C.日本のどこでも観察できるわけではないが、時刻は同じ
D.日本のどこでも観察できるわけではなく、時刻も場所によって違う
A2 正解は 「D.日本のどこでも観察できるわけではなく、時刻も場所によって違う」 です。
皆既日食や金環日食が起こる場合でも、どこでも観察できるわけではありません。2012年5月21日に日本で金環日食が観察できるのは、下の図の帯の上の地域に限られ、それ以外の地域では部分日食しか観察できません。そして、日食が観察できる時刻も地域によって異なります。なぜ、このようなことが起こるのでしょうか。
提供:国立天文台
国立天文台ホームページより( http://naojcamp.mtk.nao.ac.jp/phenomena/20120521/about.html )
月が太陽の手前を横切る時、地球には月の影ができ、時間と共に影の位置は移動していきます。上の図の帯は、その月の影の跡をつなげたものだと考えてください。月は西から東(日本から太陽を見ると右から左)に向かって太陽を横切るように見え、月の影の位置は地球上を西から東(上の地図では左下から右上)に移動していきます。この帯の上の地域では、太陽が月によってほとんど隠されるので金環日食が観察できます。ただし、観察できるのは月の影に入っている間だけなので、観察できる時間は地域によって違います。そして、日本でも帯の上にない地域では観察できません。
25年前(1987年)の金環日食は日本では沖縄本島などのみ、18年後の2030年の金環日食は北海道などのみですから、それに比べると、上の図で示した2012年の金環日食は、とても広い範囲で観察できるといえます。例えば東京で金環日食が観察できるのは江戸時代の1839年9月7日以来実に173年ぶりのことです。
Q3
皆既日食が起こるか金環日食が起こるかは、太陽と地球と月の位置関係によって決まります。金環日食が起こることがあるのはどんな時?
A.太陽—月—地球の順に一直線に並び、月の位置が比較的太陽に近い時
B.太陽—月—地球の順に一直線に並び、月の位置が比較的地球に近い時
C.太陽—月—地球の順に一直線に並んだ時
A3 正解は 「A.太陽—月—地球の順に一直線に並び、月の位置が比較的太陽に近い時」 です。
提供:猪名川天文台
猪名川天文台ホームページより
( http://www.town.inagawa.hyogo.jp/~etc/Astropia/Nissyoku/nissyoku.htm )
皆既日食も金環日食も、太陽—月—地球の順に一直線に並ぶ時に起こります。ただし、月が相対的に見て太陽と地球の間のどの位置にあるかによって、皆既日食になるか金環日食になるかが決まります。どうしてそのような違いが起こるのか、詳しく説明しましょう。
太陽の周りを回る地球の軌道と、地球の周りを回る月の軌道は、どちらも真んまるではなくだ円形になっています。このため、地球から太陽までの距離も、地球から月までの距離も一定していません。地球からの距離が近くなれば、地球から見た太陽や月の見かけの大きさは大きくなり、地球からの距離が遠くなれば、地球から見た太陽や月の見かけの大きさは小さくなります。そして、Bの「太陽—月—地球の順に一直線に並び、月の位置が比較的地球に近い時」は、地球から見た月の見かけの大きさが太陽の見かけの大きさより大きいため、月によって太陽が完全に隠され、皆既日食が起きます。一方、Aの「太陽—月—地球の順に一直線に並び、月の位置が比較的太陽に近い時」は、地球から見た月の見かけの大きさが太陽の見かけの大きさよりわずかに小さいため、月によって太陽が完全に隠されず、月の周りからはみ出して見え、金環日食が起こるのです。
Q4
2012年6月6日に太陽の手前を横切る惑星は?
A.水星
B.金星
C.火星
A4 正解は「B.金星」です。
日食は地球から見た時に月が太陽の手前を横切るために起こる天文現象ですが、月ではなく金星や水星が太陽の手前を横切ることもあります。これを日面経過(日面通過、太陽面通過)といいます。地球から見た金星や水星の見かけの大きさは月よりも小さいため、日食の時のように太陽を覆い隠すことはなく、黒い点となって太陽の前を横切っていくように見えます。
2012年6月6日には、金星の日面経過を全国で観察できます。惑星の日面経過が日本で見られるのは2006年11月9日の水星の日面経過以来です。金星や水星で日面経過が起こるのは、地球よりも内側で太陽の周りを回っている惑星だからです。地球よりも外側を回っている火星や木星、土星などの惑星で日面経過が起こることはありません。
Q5
2012年8月14日には、金星が月によって隠される「金星食」が起こります。金星について述べた次の文のうち、正しいのはどれ?
A.金星は真夜中には見えない
B.金星はいつも同じ大きさに見える
C.金星は自ら光を出して輝いている
A5 正解は 「A.金星は真夜中には見えない」 です。
月が惑星の手前を横切るため、その惑星が隠されてしまうことがあります。2012年8月14日の未明には、ほぼ日本全国で、月によって金星が隠される様子が観察できます。この天文現象を「金星食」といいます。
金星は、地球よりも内側で太陽の周りを回っている惑星です。太陽と月を除けば最も明るい天体ですが、太陽のように自ら光を出して輝いているのではなく、月と同じように太陽の光を反射して輝いて見えます。このため、月と同じように満ち欠けをします。また、地球よりも内側で太陽の周りを回っているので、地球からはいつも比較的太陽の近くに見えます。このため、観察できるのは明け方や夕方だけで、真夜中に見えることはありません。また、地球からの距離も一定ではなく、地球に近づいた時には大きく、遠ざかった時には小さく見えます。