子ども版NISAが始まる前に知っておきたいポイントとは 

生活するうえで税金は身近なものです。2015(平成27)年度税制改正大綱によって、さまざまな税の改正が発表されていますが、もう実施されたものもあり、これから実施されるものもありと、実は子育て世代にとっても目が離せないものばかりの内容であることはご存じでしょうか。消費税増税10%の実施が延期になったから税金なんて当分関係ない、では済まされません。
今回は、その税制改正大綱の中から、子ども版NISAについてお話ししたいと思います。
ご自分で、100万円までの投資をした時の利益が5年間非課税になるというNISAをされているかたもいらっしゃるかもしれませんが、既に開始しているNISAは20歳以上でないと口座開設ができません。ですが、子ども版NISAでは未成年の口座を開設することが可能となります。



そもそも「子ども版NISA」とは何か

この制度の一番の目玉は未成年を対象にしているということです。運用開始日は2016(平成28)年4月1日。その日から投資ができます。既にあるNISAの制度が始まる前にも、さまざまな金融機関から、口座開設の勧誘がきたものです。制度としては同じなのだからと、軽い気持ちでいつもの付き合いがある金融機関にそのまま口座開設を決めたかたも多かったようですが、金融機関ごとに取扱いをしている金融商品が実は違います。今更ですが、制度を利用するための最初のステップとして、どこのどんな金融商品で運用するつもりなのかを考えたうえで、金融機関を選別する必要があったのです。
子ども版NISAの口座開設は、2016(平成28)年1月1日から受け付ける予定となっています。一般的に、口座開設をするには住民票などを添付したうえで1、2か月程度かかっていたものが、今年の10月から順に通知されるマイナンバーによって口座開設までの期間が短縮される予定です。マイナンバーはこれまでの住民コードと違って、さまざまな用途が考えられていますので、まずは手続き上、簡略化できるというのは喜ばしいことです。



どんな使い方ができるか

大人と違うのは、金額の上限が80万円ということです。年間の最大80万円の投資で得た利益が非課税扱いとなります。子どもに毎年それだけの貯蓄をしているというかたにはなかなかお目にかかれませんが、祖父母や独身のきょうだいなど、子どもが少なくなってきている現状では、意外と進級のお祝い金や進学祝いにと、親族からまとまった金額が集まることがあります。それを最大5年で400万円、非課税で運用できるというのですから、ぜひ利用したいものです。
気を付けたいのは、親権者が定期預金、上場株式や投資信託に投資するのですが、絶対元本確保の安全商品ばかりというわけではありませんので、見直しも何もしないで置いておくための口座ではないという点です。そして、18歳までは引き出しできないことから、今すぐ使う予定のない余裕資金にするべきという点です。



ぜひ利用したい二重の非課税のメリット

2015(平成27)年1月の相続税の基礎控除がこれまでの6割に下がったという改正により、相続対策に興味を持つかたが増えてきました。そこで、年間110万円の非課税の枠内で子どもや孫に贈与を考えるかたも多くなっていますが、実はこのNISAを利用すると、贈与が非課税で投資の利益も非課税と、重ねて二重の非課税の恩恵が受けられるわけです。18歳の時点で払い出せれば、教育資金としても十分に役立つでしょう。
実は我が家では、子どもが12歳になった時点で、証券会社の子ども名義の口座開設をしています。私の世代では、親が子どもにお金の話をするなんてとんでもないという時代でしたが、もはや、賃金も右肩上がりは望めず、預貯金の利子もすずめの涙です。親としては、投資をして儲けてほしいという思いからではありません。将来子どもが大人になっても、超高齢化社会では満足できる額の年金が望めないという予測から、自分の老後資金は、投資を覚えていかないと成り立たない時代になってきているという意味で、少しでも経済に興味を持ってほしかったからです。



NISAを子どもと一緒に話し合ってみることから始めよう

この制度で運用は子どもが主体ではありませんが、将来大人になった時のNISAの利用や確定拠出年金の運用の練習も兼ねて、子どもとどんな商品で運用するか、話し合ってみるのはいかがでしょうか? 私も、最初自分自身が確定拠出年金に加入した時に、たくさんの商品の中からいくつかの商品を選ぶのにはずいぶん悩みました。ある程度の知識を持つ大人でもそうなのですから、大人になって、いきなり運用しなさいと言われても難しいものです。
NISAと一概にいっても、金融商品が金融機関によってもさまざまにありますと最初に申し上げましたが、着実に配当を目指すのか、好きな株の売却益を目指すのか等、投資のスタンスを選ぶところから始めましょう。何の予備知識もなく、商品を並べられても子どもは迷うものです。我が家でも子どもたちは「好きな株主優待がある」というスタンスで、まだまだリターンを求めて積極的に投資をする段階には至っていません。

子どもへの金銭教育はいきなりできるものではありません。できる時にできることを継続していくことがいちばん大事なのではないでしょうか。まずは、お小遣いがまだのお子さんはお小遣いから、ある程度お金が使えるようになったお子さんとは、来年の子ども版NISAが始まる前に税金や経済について話してみるのはいかがでしょうか。


プロフィール


當舎 緑

社会保険労務士、行政書士、ファイナンシャル・プランナー。資格取得をはじめ、教育・育児、マネーなど一般消費者向けのセミナー、執筆活動を行う。子どもにかけるお金を考える会(http://childmoney.grupo.jp/)のメンバー、一般社団法人かながわFP生活相談センター(https://kanagawafpsoudan.jimdo.com/)の理事でもある。金融機関での年金相談はじめ、区役所、県民相談の窓口での行政相談、病院でのがん患者就労支援相談の窓口で一般向けの相談にも応じている。家庭では3児の母でもある。

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