「学んだ量」から「学ぶ力」へーこれが大学入試トレンド

高校生の保護者世代の中には、「大学入試はたくさん暗記した方が有利」「問題の数を解けば、入試直前からでも実力はアップできる」といったイメージをお持ちのかたもいらっしゃるかもしれません。しかし近年、入試は「高校でどれだけ知識を得たか」を測るものから、「身につけた知識をどれだけ活用できるか」「大学に入って、よりよく学び続けられるか」を見るものへと大きく変わりつつあります。保護者世代の学力観、入試観を変える大学入試のトレンドをご紹介します。


講義や実験、発表まで!大学の学びを先取りした3日間の入試

 大学入試において暗記やドリル学習による知識が一定量必要なことは、今の入試でももちろん変わりません。しかし最近は、いわゆる重箱の隅をつつくような、細かい知識を問う問題よりも、獲得した知識をもとに、それを活用する力を問う問題を出す入試が着実に広まっています。

 

最近の入試の傾向を表すキーワードは「思考力」「判断力」「表現力」と言われています。これは、知識を活用する力、いわゆるPISA型学力の土台になるもので、2013年度から高校でも全学年で全面実施されている新課程においても重視されている力です。

 

そうしたことを背景に、保護者世代にとっては驚くような入試も生まれています。お茶の水女子大が2017年度から導入を予定している新型AO入試(新フンボルト入試)では、文系は「図書館入試」、理系は「実験室入試」と題して、模擬授業やグループ討議・実験など3日間にも及ぶ2次試験を行います。ペーパーテストに黙々と取り組む入試ではなく、大学教員の講義を受け、他の受験生や大学生と協同して学習を深めながら、各自のレポートにまとめ、個人面談で面接官と共に学習のプロセスを振り返ったり、成果を確認したりする、まさに大学での学びを体験するような入試です。

 

このほか、既に京都工芸繊維大で実施されているAO入試(ダビンチ入試)でも、講義や課題提示を受けてのレポート作成や資料読解、グループディスカッション、プレゼンテーションなどのプログラムが入試に取り入れられています。こうした新しいタイプの入試で見ようとしているものは、「受験勉強で得た知識の量」だけではなく、「大学入学後の伸びしろ」です。また、受験生にとっては、大学の学びを先取りするような入試を体験することで、大学が求める力を理解、実感できるというメリットがあります。

 

 

東京大や京都大でも「学ぶ意欲」を見る入試がスタート

 ペーパーテストだけで合格者を選抜する既存の入試とは異なる入試は、さまざまな大学で実施されていますが、2016年度入試から東京大で推薦入試、京都大で特色入試が導入されることも大きな話題となりました。

 

東京大、京都大どちらの入試でも、センター試験が課され、その成績が合否を大きく左右するのは一般入試と同様です。しかしそれだけにとどまらず、書類審査や面接、外国語などの外部テストの成績、そしてグループディスカッションや口頭試問などを課し、大学・学部が求める学力、意欲を多面的・総合的に評価していくのです。

 

知識の量だけでなく、思考力や判断力、表現力などの「大学に入ってから学ぶ力」を測る入試は、多くの場合、大学の入学定員内の一部を選抜する入試です。それは、こうした入試は手間暇がかかり、たくさんの受験生を選抜することが難しいからです。しかし、文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会は、これからの大学入試のあり方について現代社会で必要な「知識・技能」「知識・技能を活用する力」「意欲・経験・多様性」をバランス良く測るような多面的・総合的な入試を、すべての大学で実施していくよう求めています。ペーパーテストの中でも、単なる暗記では太刀打ちできない問題が増えるなど、大学入試は確実に変わりつつあるのです。

 

 

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