山口もえさんに聞く「のんびり、ゆっくり『好き』を育てる」【第2回】子どもの「好き」を育てるには?
16歳でデビューし、おっとり、マイペースなキャラクターで親しまれている山口もえさんは、現在7歳の女の子と3歳の男の子のお母さん。2010(平成22)年にはタレントで初の野菜ソムリエ中級資格を取得されています。
前回に続き、今回は忙しい日々のなか、マイペースで楽しむもえさん流子育てと食育について伺いました。
ママ友の言葉に救われる
子育てはなるべく一人で抱え込まず、助けてもらえる時は母や事務所のスタッフに力を借りるようにしています。親しいママ友達とお互いに「私に時間がある時は面倒を見るから、どうしてもの時はお願い」という関係ができているととても助かりますよね。話を聞いてもらうだけでも本当に気が楽になります。
現在7歳の長女は、とにかく離乳食を食べない子どもでした。どんなにがんばって作ってもさっぱり食べてくれないので、ママ友達に相談したら、彼女は笑って「大丈夫だよー、ミルクだけで育つ子はいないから!」って言ってくれたんです。おむつがなかなか取れないのを心配していたら「早くパンツになっちゃうと、それはそれでトイレ探すのが大変だよー」と(笑)。そういう考え方もあるなーと思ったら、気持ちがすっと軽くなりました。
子育ては子ども本位になりがちだけれど、自分の状態も一歩引いて冷静に見なきゃと思っています。眉間(みけん)にしわを寄せてがんばるお母さんより、にこにこしているお母さんのほうが子どもはうれしいんですよね。
「私、今日疲れてない?」と自分に聞いてみて、疲れていたら「今日のおかずはレトルトにしちゃおう!」という日もいっぱいあります。育児書などの情報に振り回されすぎずに、自分が楽しめる「我流」のスタイルを探すことも大切なんじゃないかなと思います。
野菜ソムリエを目指したきっかけ
野菜ソムリエの資格を取ったのは、初級が2007(平成19)年、中級が2010(同22)年でした。おなかに授かった長女を最初の検診で見た時は小さな小さな「丸」。それが、次の検診に行くと頭と手足ができていて、「この命は、私が食べたもので大きくなるんだなあ」と実感した時に、もっと食について知りたいと思ったのが勉強を始めたきっかけです。中級の時は、娘をひざの上で遊ばせながら勉強しましたね。娘が赤いシートをスタンドに透かして「ゆうひー」なんて言っている横で、「ほんとだー」って相づちを打ちながらチェックペンで暗記したり(笑)。中級は野菜の流通やマーケティングまで幅広く学ぶ必要があり、プレゼン形式の口頭試問も難しくて3回落ちました。でも、「1年がかりで作った料理本の発行までには取らねば!」というプレッシャーもあり、なんとか合格できました。
資格を取ってからはスーパーに行くのが楽しくなりましたね。カボチャ一つとってもさまざまな品種があり、すべて味が違います。梨などは旬が短く、「幸水」「豊水」「秋月」……と数週間で食べ頃の品種が移り変わっていくので、その時期にしか味わえないおいしさを楽しめます。野菜は冷蔵庫に入れてもちゃんと生きていますし、置き方次第で味も違ってくるので、おいしいうちに余すところなく食べてあげたくなりますね。
苦手な野菜が食べられるようになる呪文!?
私が好き嫌いなく育ったのは、祖母の影響が大きいと思います。「大根を食べると色白さんになれるわよ」「長ネギを食べると、頭がよくなるのよ」というふうに、苦手な野菜のよいところを教えてくれたんです。私も祖母のように、子どもに野菜のよさやおいしさをいっぱい伝えてあげたいですね。
長女が小さいころは「魔法の呪文」がありました。お鍋を混ぜながら、「おいしくなーれ♪」と歌って、「ほら、おいしくなったでしょ」と言うと、苦手なものも「ぱくっ」と食べてくれていたのですが……小学生になり、呪文も効かなくなってきたので(笑)、最近の作戦は「このおいしさ、わかる?」「大人になったらわかるわよ」です。背伸びしたい年頃ですから、一生懸命食べようとしてくれます。3歳になる長男は、豚汁にするとなんでも食べるのに生野菜は苦手。でも、温野菜が食べられるなら、今はそれでいいかなと思うようにしています。
育ててわかる、野菜の力
子どもと一緒にベランダや貸し農園で、野菜を育てるのもいいですね。うちでは昨年、千葉の貸し農園で枝豆やナス、キュウリなどの夏野菜を育てたのですが、子どもって土に触れるととても元気になりますね。最初は「靴の中に土が入った!」って騒いでいましたけれど、すぐに裸足で走りまわって大変でした。「土の中から芽が出て、つるが伸びて花が咲いて、やっと実ったナスなんだ!」とわかると、食卓にいきなり出てきたナスより親しみがわくようです。「八百屋さんに並んでいるきれいな野菜は選び抜かれた子たちだけれど、こんなふうにぐにゃっと曲がった野菜だっておいしいんだ!」ということを、自分たちが育てた夏野菜を載せたピザを食べて実感してくれたんじゃないかなと思います。
「とくべつな時間」がくれるもの
子どもが秘めている可能性は、非日常的な体験がきっかけで伸びていくそうです。非日常といっても海外に行ったりする必要はなく、動物園や水族館など、保護者のかたが好きなところへ子どもを連れていって一緒に遊ぶのもいいし、おうちでお誕生日などの「とくべつな時間」を楽しむのもいいと思います。私にとっては、前回お話しした初めてのバレエ鑑賞がまさに夢のような体験で、一生の宝物になりました。
それだけでなく、誕生日にも特別な思い出があります。子どもの頃、母に「お誕生日に何が欲しい?」と聞かれて「果物をお腹いっぱい食べたい!」と言ったら、本当にイチゴやブドウやオレンジなど、フルーツをたっぷり用意してくれたこと。スイカを丸ごとくりぬいてフルーツバスケットを作ってくれたこと……。その時の幸せな記憶があるから、私は料理好きになったのかもしれません。「とくべつな時間」は「大好き!」という気持ちと深く結びついています。
最近子どもたちと過ごした「とくべつな時間」は、子どもの日のお風呂タイム。その日だけシャボン玉とアイスクリームをOKにしたんです。お風呂でシャボン玉を好きなだけ吹きまくって、のどが乾いたら甘いアイス。ゴールデンウイークにどこへも連れていってあげられなかったので、代わりに一日だけはめを外すのもいいかなって。もちろん、子どもたちは大はしゃぎでした。
これからも子どもたちと、宝物のような思い出をたくさんつくっていきたいなと思います。
『お野菜たっぷり! 山口もえの親子ごはん』 <祥伝社ムック/山口もえ(著)/1,008円=税込> |