「考える道徳科」、家庭や地域にも積極的に公表

「道徳の時間」を教科に格上げする小・中学校学習指導要領の一部改訂案について現在、パブリックコメント(意見公募手続)が行われています(3月5日まで)。細かい字句修正はありそうですが、教育再生実行会議の第1次提言(外部のPDFにリンク)(2013<平成25>年2月)から文部科学省の有識者懇談会報告(外部のPDFにリンク)(同12月)を経て中央教育審議会答申(外部のPDFにリンク)(14<同26>年10月)と議論を重ねてきただけに、大筋で変更はないものと見られます。小学校は2018(平成30)年度から、中学校は19(同31)年度から、教科書を使った新しい「道徳科」(特別の教科 道徳)の授業が始まります。

道徳教育が各教科なども含めた「学校の教育活動全体を通じて行うもの」であることは変わりませんが、改訂案ではその目標を「生き方を考え、主体的な判断の下に行動し、自立した人間として他者と共によりよく生きるための基盤となる道徳性を養うこと」(総則)としました。
そのうえで道徳科の授業は、先の道徳教育全体の目標を踏まえて「よりよく生きるための基盤となる道徳性を養うため、道徳的諸価値についての理解を基に、自己を見つめ、物事を多面的・多角的に考え、自己の生き方についての考えを深める学習を通して、道徳的な判断力、心情、実践意欲と態度を育てる」(小学校)などとしました。「考え」させることを通じて道徳心を培おうとする姿勢が鮮明になっています。

具体的には「善悪の判断、自律、自由と責任」(小)、「節度、節制」(小・中学校)、「真理の探究」(小)、「礼儀」(小・中)、「友情、信頼」(同)、「公正、公平、社会正義」(同)、「家族愛、家庭生活の充実」(同)、「我が国の伝統と文化の尊重、国を愛する態度」(中)などのキーワードを示しながら、扱う内容を示し、これらを話し合ったり書いたりする「言語活動」などを通じて、多様な感じ方や考え方に接するなかで一人ひとりが考えを深め、判断し、表現する力を育むことができるようにするとしています。
また、これまでにも行っていた情報モラルの指導はもとより、「持続可能な開発のための教育」(ESD)なども取り入れて、身近な社会的課題を自分との関係で考え、解決に寄与しようとする意欲や態度を育てるよう努めるとしました。
中教審では現在、指導要領全体の全面改訂(小学校は2020<平成32>年度から、中学校は21<同33>年度からの見通し)の審議を行っていますが、諮問では「アクティブ・ラーニング」(課題の発見と解決に向けて主体的・協働的に学ぶ学習)の導入などを提言していました。「考える道徳科」の授業は、それを先取りしたものとなるでしょう。

総則では、道徳科を含めた学校の道徳教育の全体計画や諸活動について、情報を積極的に公表したり、家庭や地域の人々の、積極的な参加や協力を得たりすることも求めています。教科書の発行を待たず、各校の判断で先取り実施することもできるとしていますから、お子さんの通う学校で道徳の授業がどう変わろうとしているのか、注目したいものです。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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