小学女子の1割、中学女子の2割がほとんど運動せず-斎藤剛史-

 

文部科学省がまとめた2014(平成26)年度「全国体力・運動能力、運動習慣等調査」(全国体力テスト)で、運動が得意という子どもの割合が調査開始以来最高となりました。その一方、中学校では運動をする子どもとしない子どもの二極化が進んでおり、特に女子の約2割がほとんど運動していません。小さなうちから子どもに運動習慣をつけることが大切になってきているようです。

全国体力テストは、全国の小学5年生と中学2年生の児童生徒を対象に実施しているもので、2008(平成20)年度から始まり、今回で6回目(2011<同23>年度は東日本大震災のため中止)となります。民主党政権時代は抽出調査でしたが、前回の2013(平成25)年度調査からほぼすべての児童生徒を対象とする悉皆(しっかい)調査に戻りました。
全体的には子どもの体力は目立った変化は見られず、ほぼ横ばいとなっています。ただ、運動やスポーツが「得意」であると回答した子どもの割合は、小5男子が50.4%、同女子が31.7%、中2男子が31.9%、同女子が18.9%で、調査開始以来最高を記録しました。現在の学習指導要領は体育の時間が以前よりも増えているほか、「運動の楽しさ」を教えることが柱の一つとなっており、その効果が出てきたのではないかと文科省では説明しています。

しかし、問題もあります。学校の体育の時間以外で、運動したりスポーツしたりする時間が1週間のうち「60分未満」というのが小5女子で13.3%、中2女子で21.8%もいました。これに対して小5男子は6.3%、中2男子は6.9%でした。中学校は男女共に運動する生徒としない生徒の二極化が見られますが、特に女子は深刻な状況です。
週当たりの運動時間が「60分未満」の中2女子のうち67.9%が「運動時間ゼロ」でした。これは中2女子全体の14.8%が「運動時間ゼロ」となる計算です。二極化の原因は運動部に参加するかしないかで分かれるためで、運動部に参加しない女子の体力をどうやって向上させていくかが大きな課題と言えます。これについて文科省は、文化部の中でも体力トレーニングを取り入れている吹奏楽部や合唱部などの生徒は比較的に体力が高いことに着目し、トレーニングやレクリエーションなどさまざまな形で文化部の活動にも運動する機会を盛り込む工夫が必要だとしています。

一方、小学生の体力と幼児期の運動経験の関係を見ると、幼児期にサッカーだけやるなど「いつも同じ内容」のことをしていた子どもに比べて、「いろいろな内容」の運動や体を使う遊びをしていた子どものほうが男女共に体力が高いという結果が明らかになりました。たとえば、小5女子の体力テスト平均点は、いつも同じ内容をしていた者は54.1点、いろいろな内容をしていた者は55.7点となっています。
幼児期の子どもの体力づくりは、特定のスポーツだけをするよりも、多様な遊びや運動で体を動かすことがポイントだと言えるでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

子育て・教育Q&A