国立大学の「意欲的改革」を大学選びの参考に-斎藤剛史-

年が明ければ大学入試センター試験が始まり、いよいよ本格的な入試シーズンが到来します。受験生に限らず大学進学を希望する生徒やその保護者にとって、志望校選びのためにどんな資料を調べればよいかは重要な問題です。特に国立大学では、グローバル化への対応など大学改革が急速に進められています。そのようななかで注目される資料として、国立大学の「通知表」とも言える業務実績評価があります。文部科学省が発表した2013(平成25)年度の国立大学の業務実績評価では、22大学が意欲的な計画を策定していると認定されました。

大学改革の一環として国立大学は2004(平成16)年度から法人化され、各大学の独立性・自律性が高められました。また、各国立大学には中期目標(6年間)の策定が義務付けられ、文科省の国立大学法人評価委員会が毎年、各大学の計画の進捗状況などをチェックする仕組みになっています。これが国立大学の「通知表」とも言える業務実績評価です。
2013(平成25)年度、90大学・機関のうち89大学・機関が「計画的に取り組んでいる」との全体評価を受けましたが、東京工業大学のみが「重大な改善事項がある」とされました。元教授による科学研究費補助金の不正使用が明らかになり、法令順守の面で問題があると判定されたようです。また、「業務運営」「財務内容」「自己点検・情報公開等」の各評価項目では、すべての国立大学が「順調に進んでいる」または「おおむね順調に進んでいる」などの評価を受けましたが、「法令順守等」の項目では東京工業大学以外にも14大学が「やや遅れている」と判定をされています。

さらに業務実績評価の特徴の一つが、国立大学の中でも特筆される取り組み、「戦略性が高く意欲的な目標・計画」の策定、各評価項目における注目される取り組みなどの具体例を紹介している点です。2013(平成25)年度は「戦略性が高く意欲的な目標・計画」を立てているとして22大学が新たに認定されました。その内容を見ると、北海道大学では研究者個人ではなく一線級の研究グループを海外から誘致する計画を持っているほか、京都大学ではトップレベルの研究者を海外から招いて海外大学との共同学位教育プログラムを行う「スーパーグローバルコース」(仮称)を計画しています。長崎大学では同大の得意分野である熱帯医学でロンドン大学と連携し、世界で活躍できるグローバルリーダーの育成を計画しています。

大学ごとにまとめられている業務実績評価は組織運営などが中心であるため、保護者や大学志望者にとってやや硬い内容かもしれませんが、各大学がどんな改革をしようとしているのかを理解する参考になるかもしれません。さらに、急速に変化しつつある国立大学の実情を知ることもできるでしょう。
大学選びでは、どうしても偏差値資料や華やかな広報資料などに目が行きがちですが、各国立大学の特徴や課題などを知るため、このような資料にも注目されてはいかがでしょうか。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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