中学受験をする家庭の夏休みvs中学受験しない家庭の夏休み

今回は、「中学受験をする家庭」と「中学受験をしない家庭」の夏休みの実態を、いくつかの調査から比較していきます。それぞれに見えてくる特徴や課題から、長い夏休みの有意義な過ごし方を、ご家族で考えていただけたらと思います。



(1)学校の夏休み事情
学校が長期休業期間を短くする傾向。さらに、夏休み中には補習も

まず最初に、夏休みに対する学校側の取り組みを見ていきます。

【図1 時間割を組むうえでの工夫 ~長期休業期間を短くしているか~(2010<平成22>年調査)】

図1 時間割を組むうえでの工夫 ~長期休業期間を短くしているか~(2010<平成20>年調査)

  • 注 Benesse教育研究開発センター「第5回学習指導基本調査」2010より


【図2 長期休業中における希望者に対する学習等の機会の充実状況(2009<平成21>年度計画)】
図2 長期休業中における希望者に対する学習等の機会の充実状況(2009<平成21>年度計画)


  • 注 文部科学省「平成21年度公立小・中学校における教育課程の編成・実施状況調査の結果について」より

●長期休業期間を短くする学校が約4分の1
新しい学習指導要領への移行で、増加した授業時数を確保するため、長期休業期間を短くする傾向がみてとれます。小学校で2割強、中学校では3割弱が長期休暇を短くしています。

●夏休み中に補習をする学校が小学校の半数、中学校では8割弱
長期休業中に学校が子どもたちに提供する場や機会を聞いたところ、「基礎学力向上や補充・発展的学習等のための学習の機会の提供」が、小学校で52.3%、中学校では77.1%。長い休みの間になんとか学力アップを図ろうとする、学校の熱意がみてとれます。



(2)中学受験する家庭の夏休みvs中学受験しない家庭の夏休み
中学受験を「する」「しない」で、夏休みは大きく異なる!

「中学受験をする予定の子ども」と「中学受験をしない予定の子ども」の夏休み期間中の時間の使い方を、比較していきます。

【図3 夏休みの平均生活時間(1日あたり)】
図3 夏休みの平均生活時間(1日あたり)

  • 注1 「まだ決めていない」と回答した家庭は省略
  • 注2 「しなかった」を0分、「4時間以上」を300分のように置き換えて算出


【学習面】
●<宿題以外の勉強(塾の時間を除く)>
「受験する子ども」:1年生28分→6年生で100分(6年間で、着実に増える)
「受験しない子ども」:1年生17分→6年生で20分(6年間、変わらない!)

「受験する子ども」は、高学年になるにつれ、家庭学習の時間が着実にのびてゆき、6年生では100分を超えます。一方、「中学受験をしない子どもたち」の家庭学習時間は、1年生~6年生まで変化なし。高学年でも20分前後に。
「受験する6年生」は、「受験しない6年生」の5倍以上、家庭学習しているとことになります。

●<夏期講習>
「受験する子ども」は、高学年になると1日あたり3.5時間~4.5時間
「受験しない子ども」は、高学年でも1日あたり1.5時間程度

「受験する子ども」の夏期講習の1日あたりの平均時間は、低学年でも1.5~2時間ですが、学年が上がるにつれどんどん伸びて5年生で3.5時間、受験が迫る6年生では一気に4.5時間に。
一方、「受験しない子ども」の場合は、学年が上がるにつれ10分程度伸び、高学年で1.5 時間強。
「受験する6年生」は、「受験しない6年生」の3倍近くを塾で過ごしているのが現実です。

【生活面】
●<屋外で遊ぶ・スポーツ><室内で遊ぶ(ゲーム以外)>
学年が上がるにつれ減る傾向にあるのは、この2項目

「受験する子ども」の屋外遊びやスポーツ時間は顕著に減っていきますが、「受験しない子ども」は微減程度。4年生までは「受験する子ども」と「受験しない子ども」の差は20~30分程度ですが、6年生では1時間以上に広がります。
<室内で遊ぶ>は学年が上がるごとに減りますが、<ゲーム>が増えることと関係がありそうです。

●<ゲーム><テレビ><ゴロゴロ・ボーっとする>
「受験する子ども」は学年が上がってもあまり増えず、6年生で減って合計3時間弱
「受験しない子ども」は学年が上がるにつれて増え、6年生でピークを迎え合計5時間強

「受験する3年生」の場合、合計3.5 時間弱となり、この数値は5年生まで大きくは変わりません。「受験する6年生」になると30分ほど短くなり3時間弱になります。
一方、「受験しない3年生」の場合は合計4時間強で、「受験する3年生」と比べると30分以上多くなります。
さらに「受験しない6年生」は合計5時間強で、3年生のときから1時間増え、「受験する6年生」と比べると2時間以上多く費やしていることになります。

●<本を読む>
「受験する」「受験しない」や学年による違いはない

読書時間は学年が上がっても微増する程度、受験するかどうかでの差もなく、1日30分前後です。


●<起床時刻・就寝時刻>
4年生まではほぼ同じ。高学年になると「受験する子ども」の起床時間が早く、就寝時間が遅くなる傾向

「受験する子ども」と「受験しない子ども」も、4年生までは差がなく7時ごろ起床、9時半~10時就寝。高学年になると、どちらもゆっくり起き、ゆっくり寝るようになりますが、「受験する子」のほうが早く起き、寝る時間は遅いので、睡眠時間は短いといえます。



<学習面&生活面のまとめ>
勉強時間の合計……「受験する6年生」は夏休みに1日6時間以上勉強。「受験しない6年生」は2時間で、4時間の差!

<宿題以外の勉強>と<夏期講習>を合わせると、「受験する6年生」は6時間以上、一方、「受験しない6年生」は2時間で、4時間の差がつきます。
まだ受験勉強がそれほど激化していないと思われる3年生を比べてみても、「受験する3年生」は1日3時間弱、「受験しない3年生」は1.5時間強となり、受験を予定している家庭では、倍近く勉強していることがわかります。

リラックスタイムの合計……「受験する6年生」の場合は5時間弱。「受験しない6年生」の場合は9時間弱で、4時間多くゆったり
自由な時間である<屋外で遊ぶ・スポーツ><室内で遊ぶ(ゲーム以外)>、<ゲーム><テレビ><ゴロゴロ><本を読む>の6項目の合計してみると、「受験する6年生」の場合は5時間。「受験しない6年生」の場合は9時間で4時間の差がつきました。
ちなみに、「受験する3年生」の場合7時間弱。「受験しない3年生」の場合は8時間強で、小学3年生の段階でも1時間以上の差があります。



「中学受験する子ども」の保護者の悩み
「勉強中心の夏が少しかわいそう」という悩みが多数
一方で、「時間の使い方を覚えた」という声も

中学受験を見据えて過ごした夏休みの感想を、保護者のかたにお聞きしました。そのなかから代表的なものをご紹介します。

・中学受験を控えているので、学校のお友達と遊ぶ時間がとれなかったことが、かわいそうだったかもしれません。(茨城 小6男子のお母さん)

・小学5年生なので、友達がお受験や野球、サッカーで忙しく、ほとんど一緒に遊べなくて、とてもさびしい感じでした。(大阪 小5男子 母親)

・受験がなければもう少し子どもらしい生活が送れるのに……と思う部分もあるが、忙しくても時間は作れるものなので、やりくりして遊ぶ時間も確保できた。子ども自身もタイムマネジメントを会得するよいチャンスだと思った。なので、夏休みにネガティブなイメージはない。(東京 小6女子のお母さん)

・受験勉強が忙しく、ストレスをどう発散するか迷ったが、自習室でクラスの仲間と勉強することで、友達もでき、勉強もはかどったようだ。(大阪 小6女子のお母さん)

・今年は受験生なので、ほとんど塾通いでかわいそうだった。自宅にいるときくらいは休養させてあげたかったけれど、宿題が多くあり、それも難しかったです。(京都 小6女子のお母さん)

・塾の宿題も学校の宿題も多すぎた。毎日泣きながら宿題を夜遅くまでやっているのを見ているのは、親としてもつらい。受験の子は、学校の宿題の量が選べたらいいのに……。(東京 小6女子のお母さん)

・受験勉強がきちんと身に付いているか心配。(神奈川 小6女子のお母さん)

・上の子どもが中学受験なので、それに付き合って小3の妹をなかなか遊びに連れて行ってやれなかったことが申し訳なかった。(東京 小3女子のお母さん)


(まとめ)
「中学受験する子ども」の夏休みは勉強中心。特に高学年はストレス緩和や時間配分に工夫を
「中学受験しない子ども」の夏休みは遊び中心。いろんな体験を取り入れて。


「受験する6年生」は≪6時間勉強して、5時間リラックス≫
「受験しない6年生」は≪2時間勉強して、9時間リラックス≫
こんな、顕著な違いが見えた今回の調査結果。

受験を控えた高学年の子どもたちは、楽しい夏休みを勉強に当ててがんばっています。その姿を見守り応援する保護者のかたも、「もっとゆっくりさせてやりたい」「もっと子どもらしく遊ばせてやりたい」という思いをいっぱいに抱えていらっしゃいます。だからこそ、限られた時間を上手に使おうと親子で工夫した、という感想も聞かれました。

「受験しない子ども」たちには余裕が見られますが、自由時間を何に使うのか考える必要はあるでしょう。外での遊び時間は、6年生以外では受験する子と30分程度しか違いませんし、本を読む時間はほぼ同じ。大きな違いは<ゲーム>や<テレビ>などにかける時間です。

「夏休みはどんな体験でも、体験したほうが成長を実感できる」という調査結果があります(小学生の夏休み調査 ‐小学生の保護者を対象として‐(2009年))。旅行やキャンプに行かなくても、「工場見学や施設見学をする」「海水浴や川遊びをする」「図書館に行く」、さらには「家の手伝い」といったごく身近な体験が成長のきっかけとなります。

夏休みの短縮や学校での補習もあり、受験に関わらず夏休みは忙しい……といった声も聞かれます。しかし、ちょっとした時間のやりくり・心配りで夏休みの充実度は格段にアップします。夏休み直前にご家族で夏の計画を見直されてはいかがでしょうか。


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