子どもが加害者になる前に備えておきたい保険のはなし
兵庫県で、全国で初めて、自転車保険の加入を義務化する法律を条例案として提出することがニュースで報道されました。子どもは、普段「守るべき存在」として、保護者、地域の方々、学校の先生など、さまざまな目に囲まれていますが、子どもが「加害者」になるというリスクはあまり考えたくないせいか、備えているかたはまだまだ少ないように感じます。今回は、このリスクに着目し、備える保険を考えてみたいと思います。
次々と出される高額賠償の判例
兵庫県によると、県内では自転車と歩行者による事故が2013(平成25)年は04(同16)年の1.9倍に増加する一方、自転車保険の加入率は24%にとどまっているようです。ところが、昨年7月には神戸地裁で60代の女性を自転車ではねて、寝たきりの状態にさせてしまった少年の保護者に、9,500万円の賠償を命じる判決が言い渡されるなど、子どもが「加害者」となることが、想定されるようになってきました。自転車は、原則として車道を走ることが義務付けられているものの、自転車にはサイドミラーが付いていないことも多いですし、自転車専用道路もなかなか確保できていないのが現状です。そこで、車道を走るスピードのまま歩道を走るなど、マナーの悪化を招き、加害者となる事件が発生しているのです。携帯電話を操作しながら無灯火で走行して、女性と衝突した女子高校生が約5,000万円の賠償を命じられた判決もあります。そんな子どもの不注意な加害事故に対して、高額な賠償金額を請求される事案が次々と判例として上がってきています。
自転車保険以外の選択肢もある
実は、単独で自転車保険に加入しなくてよい方法があります。それが、TSマーク付帯保険と個人賠償責任保険という保険です。
TSマーク付帯保険というのは、自転車安全整備店の整備士に点検・整備を受け、TSマークが貼られた自転車乗車中の事故による死亡・障害・けが・損害賠償を補償する保険です。
そして、もうひとつの個人賠償責任保険は、日常生活上、他人のものを壊したりして賠償責任を負ったときに、賠償金額を支払うというものです。この保険は、特約で加入することも多く、自動車保険や火災保険など一見関係なさそうな保険に、知らずに特約で付加する場合も多いものですが、保険料もそれほど高くなく、特約で付けることもできるからこそ、付けずにそのままになっているご家庭もあるのが現状です。
学校に通学する子どもは守られているものの
自転車事故を含め子どもに何かあったときのために、学校やPTAが加入してくれる保険もあります。その保険で子どもは守られているといえますが、一体、どんなときに役に立つのか、ここで横浜市の学校での一例を挙げておきましょう。
意外と学校に行くだけで、知らない間に保険に加入してもらっていることに気付くかもしれませんが、加害者になった場合に対象となるものが少ないというのが現実なのです。一度、4月に学校から配布された書類を見直してみるのはいかがでしょうか。
自転車保険の加入内容とは
兵庫県では、独自に自転車保険を設定して、自転車購入者に保険加入を促す予定で、その詳細についてはこれからですので、今ある自転車保険の特徴を見ておきましょう。
自転車保険の特徴は、自転車に搭乗中の事故で本人がけがや死亡をしたときに保険金が支給されるのが特徴ですが、特筆すべきは、歩行者相手だけでなく自動車相手の交通事故も対象となることでしょう。今回、歩行者との高額賠償を事例に挙げていますが、バイクと衝突したり、自動車と衝突したりという大事故も想定されます。そうなると、更に事故の衝突の衝撃も大きくなるでしょうし、もし、示談ということになると、個人で対応することは難しいでしょう。そこで、法律相談や弁護士費用が補償される保険もあります。
神戸の判決の場合は、保護者の監督責任が果たされていないということで賠償命令が出された点でインパクトがありました。いったん賠償金額を請求されてしまうと、免除されることはありません。子どもに賠償請求が出されても、子どもが払えなければ、もちろん、保護者も連帯責任として賠償をする必要が出てきます。保険は「お守り」です。何もなければもちろんよいですが、何かあったときに、自分の努力や誠意だけでまかなえるケースばかりとは限りません。ついつい、子どもは弱者と考えがちですが、加害者になることもありえます。こんなときにも対処できるよう、ぜひ、お子さまをお持ちのご家庭では、自転車のマナーやルールを子どもに教えるだけでなく、加害者になった場合に備える保険も忘れずに対策を取っていただきたいと思っています。