小学生のお金教育は「定額のおこづかい」「イベント」「お手伝い」で磨こう

今年の夏は、いくつかの親子向け講座の企画や運営、教育現場の研修に関わる機会がありました。およそ2年前に消費者教育推進法が制定され、私のような現場の担い手も、その始動を感じるようになってきたわけです。
金融経済教育においては、2014(平成26)年6月に「金融リテラシー・マップ」が作成されました。これは、省庁や関係団体などで組織する金融経済教育推進会議が、世代ごとに最低限身に付けるべき金融リテラシーについて、具体的な目標などを体系的に網羅したものです。
とはいえ、金融リテラシーは実際にお金を使ったり任せたりすることが前提のレッスンです。そこで、今回は小学生で身に付けたい力を中心にご紹介しつつ、家庭での実践方法を考えてみましょう。


【小学生で身に付けたい力】(金融リテラシー・マップより抜粋)
・必要なものと欲しいものを区別し、計画を立てて買い物ができる。
・お金の役割、勤労、生活への備えを理解し、貯蓄する態度を身に付ける。
・お金の貸し借りをはじめとする金融トラブルを知り、調べて商品を選択する。困った時は相談する。


学年が上がるにつれて、できることや興味が広がる小学生期。家庭では、金融リテラシーの基礎を「定額のおこづかい」「イベント」「お手伝い」で実践できそうです。それぞれの具体例を挙げてみました。

≪定額のおこづかい≫
日常の買い物では、必要なもの(ニーズ)を購入して余裕があれば欲しい物(ウオンツ)を買うという優先順位があります。保護者が買い物をする姿を見て商品の選び方を学び、定額のおこづかいでは、自分の欲しいものを優先すると文具などの必要なものが買えずにあとで困るということを学ぶ時期です。
そのため、おこづかいは保護者との約束の下、自分の気持ちと葛藤するということに本当の意味があります。つまり、おこづかいで何を任せるのか、「約束」が大事です。その約束も保護者が決めた一方的なものではなく、子どもと相談して決めることです。相談の内容は、金額ではなく「何を任せるか」と、それに付随するルールです。
たとえば、子どもと相談して、おこづかいで文具(鉛筆・消しゴム・ノート)とお菓子を任せることにし、記録(おこづかい帳)をつける、お試し期間を設けて見直しをするというルールを決めたとします。
おこづかいの金額は、鉛筆・消しゴム・ノート・お菓子の月平均の予想額+αを設定します。予想額を渡すためにはデータが必要ですから、保護者のほうも家計簿などで記録をつけておく必要があるかもしれません。逆に、家計データがこのように活用できるとなれば、家計管理のやりがいがあるとも言えますね。大人も軌道修正しながら家計を管理していることを子どもに伝える、よい機会でもあります。

≪イベント≫
定額のおこづかいの前段階として、旅行・お祭り・ホームパーティーなど、非日常での買い物を任せてみるのも一つです。学年などを考慮して任せる内容や金額を決め、そして任せるにあたり2、3のルールを作ります。
たとえば、家族のお祝い事やクリスマスのホームパーティーをする場合、部屋の飾りつけと皆で楽しめるプログラムを考えて、1,000円の予算でグッズや材料をそろえて作るというようなものです。ルールとしては、予算オーバーはしない、全員が参加できる、きょうだいで任せる場合はそれぞれのアイデアを取り入れる、などを入れます。
旅行やお祭りでは、一つは予算内で家族全員のおやつやおつまみを買う体験、ほかにも、旅行・お祭り用におこづかいをもらったなら、身近な人へのお土産や自分の欲しいものを買う体験などができそうです。余ったおこづかいが一定額であれば、金融機関で自分の預貯金通帳を作る体験などもさせてあげたいですね。
ちなみに、我が家では息子が小学生だった時に地域のお祭り用のおこづかいを渡したところ、飲み物、食べ物、おやつ、スーパーボールすくいのゲームなど、バランスよく使い切って楽しんでいました(もちろん使い切ってよい金額しか渡していなかったというのが本当のところですが……)。

≪お手伝い≫
自分のことは自分でできるようになること、そして家族の一員としての役割を果たすことが、お手伝い本来の目的です。家族の一員としてのお手伝いとおこづかいがもらえる労働の対価としての線引きは、実は難しいところです。
お手伝いをしておこづかいをもらうという報酬制のご家庭もあると思います。報酬制の前提は、きちんとやらなければ支払われないということを理解させるという側面があるでしょう。報酬制によってお手伝いが完成度の高いものになっていけば、一定の目的を果たしたことになります。ただし、お手伝いが面倒だからおこづかいはいらないということにならないよう、年齢や能力に応じたお手伝いを子どもと話し合って決めていく必要はありそうです。

また、おこづかいがもらえるお手伝いは特別なことをしたときに限定するという方法もあります。たとえば、庭・花壇の手入れ、DIYなど家の修繕、季節の家財の手入れ・出し入れなどを手伝った時です。逆に、子どもにいつもと違うお手伝いにはどんなものがありそうか考えさせる方法もありますね。報酬を払う場合は、請求書を書かせてみるのもよい経験になるかもしれません。そして、家族が報酬なく家事をしていることに気付くことで、勤労への感謝を育む機会にもなるでしょう。

プロフィール


中上直子

ファイナンシャル・プランナー、消費生活コンサルタント。
マネー、消費生活、消費者教育などをテーマに編集・執筆、教材企画、講座講師、講師養成などで活動。日本消費者教育学会会員。
子どもにかけるお金を考える会メンバー
https://jpn01.safelinks.protection.outlook.com/
一般社団法人消費生活総合サポートセンター(Cサポ)理事
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