「就活」時期の見直しは逆効果? 大学改革で問われる企業の採用意識

「就活」時期の見直しは逆効果? 大学改革で問われる企業の採用意識大学生の就職活動(就活)の期間が、2015(平成27)年(2016<同28>年春卒業生)から「後ろ倒し」になった。大学での学習時間を確保するための対策だったが、実際には活動が長期化するなどの混乱が生じつつある。「問題が出てきたから元に戻せばよいという単純な話ではない」と語る教育ジャーナリストの渡辺敦司氏に、ベネッセ教育情報サイトが話を聞いた。

 

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就活時期の見直しは、安倍晋三首相の要請に応じた経団連が、会社説明会などの広報開始を3月1日以降(従来は前年12月1日以降)、選考開始を8月1日以降(同4月1日以降)に遅らせる指針を定めたものでした。しかし表向きはこの指針を守っていても、インターンシップなどが事実上の選考の場になっている側面もあります。

 

文部科学省が5月、国公私立大学・短大82校とその学生(就職希望者3,887人)を対象に実施したアンケート調査によると、大学側の6割が就活期間の長期化を指摘。学生も3人に2人が3月から企業にエントリーし、半数近くが4月から面接を受け始めたと回答しています。

 

就活の問題を考える時、大学でどんな学生を育てるのかということが忘れられがちなのも見逃せません。「高大接続改革」の背景には、大学での4年間の教育を通じて、社会で通用する汎用的能力(学士力・人間力・社会人基礎力)を育てるべきとの考え方があります。一つの授業に対して学習時間を十分に確保するために、履修登録できる授業数の上限を設ける制度を強化すべきとの声もあるほど。2・3年生で可能な限り単位を取り、あとは就活という発想自体が通用しなくなるのです。

 

企業側も、大学での育成が不十分な学生を「青田買い」することの深刻さを認識すべきでしょう。少子化によって、難関大学といえどもハードルは下がってきています。今後の入試改革で、大学名に依存した採用はさらにリスクが高まるでしょう。大学教育の変化に沿った採用慣行の確立が求められます。

 

出典:「就活」時期の見直しは大学教育を最優先で -ベネッセ教育情報サイト

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