国公立大のAO入試定員が過去最高に センター試験課すケースも-斎藤剛史-

文部科学省が発表した2015(平成27)年度の「国公立大学入学者選抜の概要」で、来春の国公立大学入試でAO入試と推薦入試を実施する大学数がそれぞれ過去最高となったことがわかりました。文科省が進めようとしている大学入試改革に向けた布石とも言えそうです。

来春入試でAO入試を実施するのは、国立大学が47校139学部(前年度より1校増、3学部増)、公立大学は24校33学部(同1校増、2学部減)で、合計71校172学部(同2校増、1学部増)。推薦入試を実施するのは、国立大学が75校266学部(同1校減、2学部減)、公立大学が82校167学部(同3校増、3学部増)で、合計157校433学部(同2校増、1学部増)。AO入試と推薦入試の実施大学数はいずれも過去最高となりました。ただ前年度と比べると、どちらも2校の増加にすぎません。
国公立大学の学部全体における実施率は、AO入試が30.6%(同0.1ポイント減)、推薦入試が76.9%(同0.7ポイント減)、国公立大学の募集人員全体に占める割合は、AO入試が2.7%(同0.1ポイント増)、推薦入試が15.2%(同0.1ポイント減)となっています。

注目されるのが、AO入試の募集人員の推移です。少し前までは、私立大学を中心にAO入試や推薦入試が実質的な「学力不問入試」となり、学力低下の一因になっていると批判され、国公立大学の間でもAO入試などに対する批判が強まっていました。ところが、政府の教育再生実行会議が「1点刻み」や「一発勝負」の入試から「多面的・総合的な評価」による入試への転換を打ち出し、受験生の能力・適性などを多様な方法で丁寧に評価するよう求めてから、AO入試などに対する風向きが変わってきたようです。
AO入試の募集人員は2012(平成24)年度の3,362人をピークに減少していましたが、15(同27)年度は3,387人(前年度比171人増)と3年ぶりに増加し、過去最高となりました。さらに、東京大学は2016(平成28)年度入試から実質的にはAO入試に近いとも言える「推薦入試」を導入するほか、京都大学も従来の推薦入試やAO入試を改革した「特色入試」を実施するなど、今後もAO入試などの拡大が予想されます。
もう一つの注目点は、推薦入試やAO入試で大学入試センター試験を課すところが増えていることです。来春入試でセンター試験を課すことにしている国公立大学は、AO入試が31校70学部(前年度より4校増、4学部増)、推薦入試が81校183学部(同2校増、9学部増)となっています。学力検査を課さないことが多かったAO入試や推薦入試も変化しつつあるようです。

国公立大学におけるAO入試の増加などは、早ければ2021(平成33)年度入試からとも言われている国の大学入試改革に備えて、大学側が動き出しつつあることを示しているとも言えそうです。多面的・総合的な評価による入試への試金石として、国公立大学のAO入試などの今後の動向が気になるところです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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