浪人を含む大学進学率が3年ぶりに上昇 過去最高を更新‐斎藤剛史‐

頭打ちとなったという見方も出ていた大学進学率(過年度卒業者=いわゆる浪人生=を含む)が3年ぶりに上昇し、過去最高を記録したことが、文部科学省の2014(平成26)年度「学校基本調査」(速報)でわかりました。

浪人生を含めた高等教育機関への今春の進路状況は、大学進学率は51.5%(前年度比1.6ポイント増)、これに短大を含めた進学率は56.7%(同1.6ポイント増)、専門学校進学率は22.4%(0.5ポイント増)で、高等教育機関(高専4年生などを含む)への進学率は80.0%(同2.1ポイント増)となり、初めて80%の大台に乗りました。
浪人生を含めた大学進学率の最近の動向を見ると、2011(平成23)年度の51.0%をピークに、12(同24)年度が50.8%、13(同25)年度が49.9%とわずかながらも2年連続して減少していました。それが2014(平成26)年度に上昇に転じた背景には、アベノミクスによる景気の回復傾向を受けて家庭の教育費負担に余裕が出てきたことなどが挙げられそうです。

では、このまま大学進学率は再び上昇に転じていくのでしょうか。どうも、そう簡単ではないようです。これまでは大学進学率が上昇すると、代わりに専門学校進学率が低下するという傾向がありました。しかし、今春の専門学校進学率は減少していません。それどころか、専門学校の学生数は5年連続で増加しています。また、今春の高校新卒者の就職率もアップしていることから、専門学校志望者や就職希望者が大学進学に進路を切り替えたということではなさそうです。
一方、今春卒業した高校生は、いわゆる「ゆとり教育世代」と呼ばれていた旧学習指導要領の最後に当たり、2015(平成27)年春の大学受験では数学と理科が、さらに16(同28)年春の大学受験ではすべての教科が、それぞれ新学習指導要領に切り替わります。このため、旧学習指導要領で学んだ現役生・浪人生の間では、新学習指導要領の「脱ゆとり世代」と競争したくないという安全志向から、上位大学を目指して浪人する者が少なかったと言われています。

大学教育全体から見れば、少子化により18歳人口が減少する一方、大学入学定員は拡大しています。私立大学の45.8%が定員割れしている中で、大学入試全体の難易度は今後も下がっていくものと思われます。景気の回復傾向とともに短大志望者を4年制大学に取り込む形で大学進学率はこれからも上昇していくことになるのか。それとも今春の大学進学率の上昇は、いわゆる「ゆとり教育」世代と言われる旧学習指導要領で学んだ者たちが、浪人することを忌避したことによる一時的な現象なのか。日本の大学教育の在り方を考えるうえで、来春以降の大学進学率の動向が注目されるところです。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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