遊びが学びの土台を築く! プレイフルラーニング ~実践編~
前回、幼児期に「プレイフル」な遊びを経験したお子さまは就学後も学びの意欲が高いと紹介しましたが、具体的には保護者がどのような関わり方をすれば、お子さまの遊びをより豊かなものにすることができるのでしょうか。遊びの場面において、お子さまの成長を促す保護者の関わり方のポイントを、発達心理学がご専門の十文字学園女子大学 人間生活学部准教授の大宮明子先生にお伺いしました。
指示はNG! 保護者の関わり方のポイント
1)お子さまの視点で一緒に楽しむ
お子さまの視点に立ち、どんなことが好きなのか、注意深く観察しましょう。たとえば、新聞紙で遊ぶにしても、新聞紙をびりびり破く音に興味を持つお子さま、破った新聞紙のかたちに興味を持つお子さまもいるでしょう。興味を持った点を広げていくようにすると、遊びが豊かになります。
また、大好きな保護者が楽しそうにしていると、お子さまも保護者のまねをして遊びだします。保護者が義務的に遊ぶのではなく、心から楽しむことが大事です。
2)保護者がリードしない
お子さまが遊んでいるとき、保護者は「これで遊びなさい」「これを作りなさい」という指示的な言葉を使うことは避けてほしいですね。指示が多いと、子どもはいつも大人の顔色を見ながら行動することが多くなってしまいます。たとえば、積み木でも保護者が先に手を出すのではなく、「どうしたらいいのかな?」と子どもが考え、行動するように促してあげるとよいですね。
絵本の読み聞かせでは、お子さまが絵本のあるページに釘付けになっているのに「次のページを読むわよ」と先を急いでしまうかたがいます。一方、関わり方が上手なかたは読み聞かせをしながら、子どもの顔をとてもよく見ています。子どもの視線を見ると、何に興味を持っているかわかりますので、そういうときには読むのを中断して、「これは何かな?」と一緒にイラストをのぞきこむのです。子どもは保護者がそうしてくれると満足して、また読み聞かせに戻っていきます。物語の世界を深く味わえるようにサポートしてあげましょう。
3)夢中になっているときはそっと見守る
子どもが夢中になって遊んでいるときには、危険なことが起きないよう注意しつつ、そっと見守りましょう。うかつに声を掛けてしまうと、せっかく集中して遊んでいるのに、気持ちが途切れてしまいます。幼児期の後半になると、常に一緒に遊んでほしいのではなく、できたものを見てもらい評価を求めるようになってきます。「見てー」などと、お子さまのほうから声を掛けてくるので、それまでは見守ってあげてください。その際、「あら、どうやったの? 上手ね」とほめてあげると、得意になって説明してくれるでしょう。ほめてくれたことで、次への意欲が育まれます。
お子さま自身の気持ちを大切にした関わりを
お子さまの遊びに関わる際、注意していただきたいのは、「お友達は上手にできたのに」「○○ちゃんはどうしてできないの」などと、人と比較してしまうことです。お子さまの発達のペースや興味は千差万別ですから、保護者の想いを押しつけたり、他者と比較したりするのではなく、お子さま自身が本当にやりたいことを大切にしてあげることが大事です。前回お話ししたとおり、主体的に取り組んだとき、考える力や集中力、想像力が鍛えられ、学びの土台が作られていくからです。
また、失敗を責めたり、強く叱ったりすることも避けてほしいですね。保護者が「何をしているの!」「下手ね」と言うと、お子さまは「自分はダメな子なんだ」と自信をなくしてしまいます。これが頻繁に続くと、「失敗したらどうしよう」と、失敗に対して恐れを抱くようになり、遊びだけでなく、勉強や運動においても意欲的に取り組むことを避けるようになってしまうのです。
たとえ失敗したとしても、「失敗してもいいよ」「またやればいいじゃない」というおおらかな気持ちで接してあげましょう。時には保護者が失敗する姿を見せてあげると、お子さまもずいぶん楽になりますし、保護者自身も肩の荷が下りるのではないでしょうか。100%の正解の子育てはありませんから、あまりがんばりすぎないでほしいですね。
ただ、子育てを「がんばりすぎない」ことと「放任する」ことは違います。お子さまが何に興味があるのか、何を面白いと感じているのか、じっくり観察して、必要な時に声かけをしてあげることで、お子さまの遊びはより豊かなものになっていきます。ぜひ、お子さまのワクワクドキドキできる瞬間を共有して、より深められるようサポートしていただきたいですね。