教育委員会はどんなことをしているのか 論議の前に実態を知ろう-斎藤剛史-

教育委員会制度の見直しが進んでおり、今通常国会に関係法案が提出される予定です。法案が成立すれば、地方教育行政の在り方が大きく変わることになります。しかし、教育委員会とはどんなものか詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。今回は保護者などにも身近な存在である市区町村教育委員会の実態を見てみましょう。

一般的に「教育委員会」には、非常勤の教育委員による合議体としての「狭義の教育委員会」と、具体的な教育行政を担う組織である教育委員会事務局を指す「広義の教育委員会」の2つの意味があります。保護者や教育関係者などが普段、教育委員会と呼んで話題にしているのは役所の組織である「広義の教育委員会」でしょう。ところが、現在議論されている教委制度改革は「狭義の教育委員会」のほうなのです。
では、「狭義の教育委員会」とはどんなものなのでしょうか。教育委員は、一般市民の中から首長が議会の同意を得て任命します。代表は教育委員長ですが、実際には教委事務局を指揮する常勤職員でもある教育長が中心的存在となっています。「狭義の教育委員会」は法律で地方教育行政の執行機関(責任者)に位置付けられていますが、実態は形骸化していて教育行政の責任能力がないと批判する声も多くあります。

文科省の2011(平成23)年度教育行政調査によると、市区町村の教育委員(教育長を除く)の平均年齢は59.3歳、職業は定年退職者など「無職」が35.3%、学者・医師・技術者など「専門的・技術的職業従事者」が23.6%、企業役員など「管理的職業従事者」が18.9%などです。一方、市区町村教育長は平均年齢63.4歳で、教職経験者が69.8%、教育行政経験者に広げると78.7%を占めます。データだけで見ると、教育長は元校長や元教委事務局幹部ばかりという指摘もあながち間違いとも言い切れないようです。
次に教育委員会の仕事ぶりを文科省の2012(平成24)年度教育委員会現状調査から見ると、地方教育行政にかかわる内容を審議する教育委員による「教育委員会会議」の年間開催数は、都道府県・指定都市が平均29.8回に対して市区町村は平均15.4回、さらに年間の総会議時間は都道府県・指定都市が平均53.5時間、市区町村が平均24.7時間でした。つまり市区町村では、月1.3回、1回当たり1.6時間の会議で教育行政の審議が行われているということになります。また、会議の内容について議事録を公開していない市区町村は48.7%、保護者や地域住民に対する公聴会を実施していない市区町村は69.4%、保護者や住民の要望や苦情を聴取するアンケート調査を実施していない市区町村は89.5%でした。

このような実態をどう判断するかは、見方によってさまざまでしょう。ただ、一つ指摘しておきたいのは、原則公開となっている教育委員の会議の年間傍聴者数がゼロだった市区町村が全体の68.3%に上っていることです。「狭義の教育委員会」の問題の背景には、住民などの教育行政に対する無関心も関係していることを見落としてはいけないでしょう。


プロフィール


斎藤剛史

1958年茨城県生まれ。法政大学法学部卒。日本教育新聞社に入社、教育行政取材班チーフ、「週刊教育資料」編集部長などを経て、1998年よりフリー。現在、「内外教育」(時事通信社)、「月刊高校教育」(学事出版)など教育雑誌を中心に取材・執筆活動中。

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