不登校の子どもは保護者から社会性を学ぶ。これから先を考える時に、大人がしたいこと[不登校との付き合い方(5)]

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子どもの話をまず聞くことで、悩みの原因がわかったら、その先のステップとして、「これからどうするか」を決めていくことになります。そのときに、大切にしたいことは、どんなことでしょうか。「不登校新聞」編集長の石井志昂さんと一緒に考えてみました。

オンラインでインタビューに対応してくださった石井志昂さん

この記事のポイント

本人の気持ちを尊重すると、力を発揮するときがやってくる

進学も含めて、「これから先、どうするか」について考えるとき、まずは子どもが提案することを聞いてください。子どもが提案することには、良いものもあれば悪いものもあるのは事実だし、大人としては人生経験から、「それは違う」と思うこともあるでしょう。

それでも、これは子ども本人の人生。本人が選びとることで、力を発揮するものです。大人は、その選択を支援することが大切です。

例として、小学校ではほとんど不登校でまともに勉強しなかったけれども、進学のたびに子ども本人に決定を委ねるようにしてきたという家庭があります。その子が進学した高校は、学力的には高い学校ではありませんでしたが、2年生になったころから、「公務員になりたい」と言い出し、勉強して職員になりました。本人の気持ちを尊重するほうが、力を発揮しやすいという一例です。

「あなたは大丈夫」と信じて応援することの大切さ

近頃、教育の個別最適化という言葉が聞かれるようになりました。かつてはスパルタ教育がよかったと言われたり、その後ゆとり教育がいいと言われたりもしましたが、そのどちらか一方がよいということではなく、その子に合った環境を整えることで子どもは伸びやすいという考え方です。

私が思う個別最適化とは、本人の意志を大切にすることです。もちろん、毎度うまくいくわけではなく蛇行するでしょう。でも、それが人生ですよね。自分が選んだ環境に身を置くことで、子どもはおのずと最適なルートを歩んでいくと思っています。

不登校の子どもの場合、学校に行かないために社会性が育たないと言われることがあります。でも、子どもは大人のことをよく見ているので、保護者から社会性を学ぶものです。もし、保護者が「うちの子は何もわからないから、道を間違えるだろう」と思っていたら、その子は「自分は何もできない」としか学ばない。一方で、「あなたはきっと大丈夫、幸せになれる」という目で見ると、根拠のない自信が子どもには育ちます。失敗するかもしれないけれど、アタックできる人になるでしょう。俳優や歌手などで成功しているかたたちの話を聞くと、親御さんがそういう根拠のない自信を子どもに与えて育てているということがあります。

保護者の思いは言葉よりも態度によって、時間をかけてしみこんでいく

ただ、ほんとうに自信を持ちにくい子どもに、そうした「あなたは大丈夫」といったメッセージを浸透させるには時間がかかります。それは、まるで石におでんのだしをしみこませるようなもの。それでも、保護者の思いは良くも悪くもしみていくものなんです。思い続けることが大切です。「何を言おうが言葉ではあまり伝わらなくて、姿勢で伝わる」というのは、永六輔さんの言葉です。

笑顔などの表情や、態度にあらわれてくるものから、子どもに伝わっていくもの。それをコントロールするのは難しいけれど、大ざっぱに言えば、保護者も子どもとの時間を楽しむということじゃないでしょうか。

子どもとの時間を楽しむためにも、一日1~2時間、子どもから目を離す時間を作るとよいですね。その間、子どもがゲームしていようが何しようがかまわないと決めたら、大人も気持ちがせいせいするはず。子どもにしても、ずっと見られていることはプレッシャーです。視線が外れることで、お互いに楽になります。これは心療内科の先生も話していたことです。

赤ちゃん時代を卒業したら、目をそらす時間がとても大切と、覚えておいてもよいのではないでしょうか。そして、子どもの選択を支援することは、遠回りのように見えて、子どもにとって大事なことになると思います。

まとめ & 実践 TIPS

今後の進路を決めて行くときに、その子自身の選択を大切にしてあげることが、その子に合った道となっていくはずです。そして、その子らしく伸びていくためには「自分はこれで大丈夫だ」という「根拠のない自信」が必要なことも。その自己肯定感を育てるのは保護者の態度によると考えられます。子どもの自己肯定感を育てるには、親子で笑顔でいることが必要で、そのためにも少し離れて子どもに寄り添うという時間が必要なのでしょう。

プロフィール


石井志昂

『不登校新聞』編集長。1982年生まれ。中学校受験を機に学校生活があわなくなり、教員、校則、いじめなどにより、中学2年生から不登校。17歳から不登校新聞社の子ども若者編集部として活動。不登校新聞のスタッフとして創刊号からかかわり、2006年に編集長に就任。現在までに不登校や引きこもりの当事者、親、識者など、400名以上の取材を行っている。

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