ロンドンでの日々~夫の海外転勤と娘とわたし【第16回】ロンドンの子どもの放課後

この連載では、ある共働き家庭の海外転勤前後の様子を具体的にご紹介します。前回はロンドンでの保護者の学校へのかかわり方についての内容でした。今回は、子どもの放課後の過ごし方についてお伝えします。



夫の仕事の都合で、高校生の娘と3人で住み始めたロンドン。生活のいろいろな場面で、日本との違いに「へえー」と思うことが多々あります。前回はその中から、保護者の学校へのかかわり方についてご紹介しました。今回は、放課後の子どもの過ごし方を取り上げます。

放課後の過ごし方というと、日本の場合は小学生なら仲のいいお友達と遊びに行ったり、学校で放課後のクラブ活動がある場合はその練習に参加したり、習い事や塾に通ったり、保護者が働いている場合は学童保育に通ったり……というのが一般的な過ごし方でしょう。ロンドンの子どもたちも同じような放課後を過ごしているのでしょうか? 今回は主に小学生の放課後を中心にご紹介したいと思います。

まずは、学校のクラブ活動について。もちろん、地域や学校による違いはあると思いますので私の知っている範囲での話になりますが、ロンドンでも放課後にクラブ活動を行っている学校は多いようです。アフタースクールクラブといって、学校の先生や、テーマによっては外部講師を招いて、アート、スポーツ、音楽や外国語など、いろいろなテーマの活動が行われているようです。中には、ガーデニングや乗馬など、イギリスらしいクラブがある学校もあるようです。クラブは無料の場合もあるようですが、材料費などの実費がかかったり、外部講師が指導してくださる場合は、1回あたり1~数ポンド、実費相当分を学期分ごとに払い込んで参加したりするようです。継続して同じクラブに参加するお子さんもいれば、1学期間参加し終えたら、次は別のクラブに移ることも気軽にできるようです。
 
また、学校のクラブ活動とは別に、サッカーや、教会の合唱団、オーケストラなど、地域の中にも子どもが参加できる活動がたくさんあるようです。イギリスにはチャリティーと呼ばれるNPO・NGOのような非営利団体がたくさんあり、そういう団体が行政からも助成を受けながら運営している場合も多いようです。実際に高校生の娘の友達でも、地域の活動に参加しているお子さんが何人かいます。

では、そういうクラブ活動に参加していない子どもは?というと、もちろん、日本の子どもと同じで放課後は友達と遊ぶわけですが、日本の子どもたちとはちょっとスタイルが違っています。前回もご紹介したように、ロンドンでは登下校も保護者やそれに代わる大人の付き添いが必要なので、放課後や休日に子ども同士が遊ぶ場合も、大人が付き添ったり、送り迎えしたりすることになります。

ちなみに、ロンドンではどうやって子ども同士が遊ぶのかというと、「プレイデート」というスタイルが多いようです。「デート」というと男女で?と思ってしまいますが、別に男女関係なく、あらかじめ約束してお互いの家に遊びに行く遊び方をこう呼ぶようです。小学生のお子さんをお持ちの友人に聞いたところ、このプレイデート、日本のように子どもが3人以上集まって群れて遊ぶというスタイルではなく、基本的には約束した友達同士の2人で遊ぶそうです。保護者は子どもを連れて行ったら、遊び終わるころに迎えに行く場合もありますし、そのまま保護者同士でおしゃべりをして、家族ぐるみでおつきあいになるという場合もあるようです。

また、以前も紹介しましたが、ロンドンでは塾はほとんどなく、塾通いというのは一般的ではありません。ただ、保護者の駐在等でロンドンに住んでいる日本人のお子さんは、日本人向けの塾がいくつかあるので、放課後や土日に塾に通っている場合が多いようです。特に、日本人学校ではなく現地の学校やインターナショナルスクールに通っているお子さんは、国語(日本語)など日本では学習するはずの教科や、日本に比べて進度が遅い教科を、帰国時に向けて補完しなければなりません。普段の学校の宿題とは別に塾に通って塾の宿題もこなし、さらに土曜日は日本語を補う補習校に通い……と、とても忙しい生活を送っているお子さんも多いようです。もちろん、それに付き添う保護者のかたも送迎、宿題のフォローなど負担は大きいようです。

最後に学童保育についてご紹介します。日本同様に、共働きやひとり親家庭の増加で、学童保育ニーズはロンドンでも年々高まっているようで、役所等のホームページでもアフタースクールケア(学童保育)については近年力を入れている様子がうかがえます。学童保育については、日本の場合は、多くが小学1年生から3年生まで、放課後と土曜日のみですが、ロンドンでは小学1年生から6年生まで、時間帯も平日の放課後はもちろん、早朝(ブレックファストクラブ)や休日(ホリデークラブ)でも利用できる場合が多いようです。

しかし、日本の学童保育との違いで何より一番大きいと思ったのは、学童保育に対する日英の考え方の違いです。日本は保育園もそうですが、保護者の不在の時間に「預かる」という発想で「福祉」としての色合いが強く、学校教育とは切り離されているように感じます。しかし、イギリスの場合は放課後にさまざまな活動を提供することで、子どもが自己肯定感を持てるチャンスを作り、それが学校での学習にもよい影響を与えるという一つの教育活動の流れの中に位置づけられているそうです。基本的な考え方が違えば、活動内容も自ずと違ってくるのではないかと感じます。

ロンドンの学童保育で、その考え方が具体的にどれほど実現されているのかを見る機会は残念ながら無かったのですが、「預かる」という発想ではなく、学校の授業以外でも自分が輝くことができる活動を放課後に子どもたちに経験させ、自信を持たせるという考え方は、学童保育で過ごす子どもが増えている日本でも、今後ぜひ取り入れていってほしいと、娘を学童保育に通わせながら働いていた私としては切に思いました。

次回は、ロンドンの子育て環境についてお伝えします。


プロフィール



大学卒業後、約25年間、(株)ベネッセコーポレーションに勤務。ベネッセ教育研究開発センター(現・ベネッセ教育総合研究所)で子育て・教育に関する調査研究等を担当し、2012(平成24)年12月退職。現在は夫、娘と3人でロンドン在住。

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