ケータイ・スマホに「家庭ルール」を‐渡辺敦司‐

進学・進級のお祝いや連絡用にと今春、お子さんにスマートフォン(スマホ)など携帯電話(ケータイ)を買い与えたご家庭も多いのではないでしょうか。今や子どもが最初に親しく接する情報機器といえばパソコンよりケータイ、それもスマホという時代になりつつあります。しかし上手な使い方を身に付けないまま与えてしまっては、さまざまな弊害や危険も避けられません。一方で情報機器は今後の学習はもとより将来の社会人生活のためにも不可欠なものですから、いつまでも持たせなければよいというものでもありません。これを機に家庭でしっかりとしたルールを作り、危険を避けたり上手に使いこなしたりする力を子どもたちに付けていく必要がありそうです。

当サイトの「教育相談室」を見ても、みんな持っているからと小学生のお子さんにケータイをせがまれることは少なくありません。しかも最新機種ということで、最初からスマホを与えるケースが急速に広がっています。内閣府の2013(平成25)年度調査(外部のPDFにリンク)によると、ケータイ・スマホを持つ小学生のうち60.6%と多くが「子ども向け携帯電話」ですが、スマホも16.3%と6人に1人。前年度(7.6%)に比べれば倍以上で、しかも子ども向けスマホは2.7%だけで、残り13.6%と多くが大人も使うスマホです。中学生では4人に1人だったのが2人に1人に、高校生に至ってはスマホではない日本独自に発展した「ガラパゴスケータイ」(ガラケー)を持っている子のほうが少数派になっているのが現状です。

ケータイ・スマホを持つ子どもの安全を守る最低限の保障が有害情報を遮断してくれる「フィルタリング」であり、販売業者には説明が義務付けられているため、お子さんに買い与えたかたは購入時にきちんとすすめられたことと思います。しかしフィルタリングの利用率は、むしろ前年度に比べ減っています。これはフィルタリングを付けると、子どもにも人気の無料通信ソフト「LINE」などが使えなくなるためだと見られます。
警察庁のまとめ(外部のPDFにリンク)によると、サイトを通じて子どもが犯罪に巻き込まれるのは、今や出会い系サイトよりも普通のコミュニティーサイトであり、しかも低年齢化しています。LINEなどは知り合い同士でしか利用しないはずですが、IDを交換する掲示板によって知らない人も入ってきます。コミュニティーサイトはケータイ・スマホのみならず通信機能のあるゲームにもあり、そうしたサイトをあえて狙って子どもになりすましてアクセスしてくる大人さえいます。使い過ぎも含め、機能だけではなかなか防ぐことはできません。

東京都青少年問題協議会は春休み前、インターネット依存を予防するための緊急メッセージを出しました。この中で保護者に対しても、「今や子供のメディア教育は、家庭教育の必須事項の一つ」だとして、子どもと十分に話し合ったうえで家庭のルールを作るよう促しています。同協議会の言うように、情報化社会を「生きる力」を子どもに身に付けさせるためにも、家庭の役割は大きいでしょう。


プロフィール


渡辺敦司

著書:学習指導要領「次期改訂」をどうする —検証 教育課程改革—


1964年北海道生まれ。横浜国立大学教育学部卒。1990年、教育専門紙「日本教育新聞」記者となり、文部省、進路指導問題などを担当。1998年よりフリー。初等中等教育を中心に、教育行財政・教育実践の両面から幅広く取材・執筆を続けている。

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