「花粉症シーズン到来! 専門医に聞く、効果的な治療と対策」(後編)

 花粉症は、適切な治療を受けるとともに、日頃から対策することにより、辛い症状をかなり軽減することができます。近年は、副作用が少なく、眠くなりにくい薬も登場していますので、医師に相談してみるのがオススメです。花粉症対策をしっかりして、これからはじまる受験勉強に備えましょう!

医師と相談して最適な治療法を選択しよう

 診察では問診や所見によって症状のタイプを見極め、最適な治療法を選択します。「花粉症は大きく分けて、鼻水が止まらない『鼻汁・くしゃみ型』と、鼻づまりがひどい『鼻閉型』の2つがあります。さらに症状の出やすい時間帯や強さなどを考慮して、複数の薬を組み合わせて処方するのが一般的です」(田中院長)

 

スギ花粉症などのアレルギー性鼻炎に効く薬はたくさんありますが、副作用として眠気を誘うものは、勉強の妨げになるため避けたいところ。「『眠くなりにくい薬がいい』と伝えると、従来に比べて副作用が少なく、アレルギー症状の改善にも優れている第二世代抗ヒスタミン薬(アレグラ、エバステル、アレジオン、クラリチン、アレグラ、アレロックなど)が処方されることが多いでしょう。ただ、第一世代のほうが効き目が強いと感じるかたもいます。いくら副作用が少なくても、症状が緩和されなければ意味はありませんから、症状と副作用のバランスを見ながら決めていきます」(田中院長)

 

鼻閉型タイプの花粉症の治療法には、レーザー治療もあります。鼻粘膜にレーザーを照射することで、アレルギー反応を抑えるという治療でワンシーズンくらいは効き目が持続します。ただし、この治療は花粉が飛び始める前に受けるのが理想だということです。

 

 

今注目の「舌下免疫療法」で花粉症が完治するケースも

 花粉症を根本的に治す可能性のある治療として、最近、期待が高まっている舌下免疫療法があります。これはアレルギーの原因物質を粘膜から少しずつ体内に吸収させて体を慣れさせて、アレルギー反応を克服する減感作療法と呼ばれる治療法の一つ。従来、減感作療法は注射で行っていましたが、舌の下からスギ花粉のエキスを投与することにより、注射の痛みがない、自宅で簡単にできる、アナフィラキシーショックなどの重篤な副作用のリスクが小さいといったメリットがあります。逆にデメリットは、即効性がなく、3~5年の治療の継続が必要なこと、1年を通して定期的な通院が必要なことなどがあげられます。「舌下免疫治療を受けた患者のうち、2割は完治、6割は症状低減の効果が見られ、残り2割は効果なしと報告されています。12歳以上が対象のため、中学生でも受けることができますので、症状がひどい場合などは医師に相談してみるといいでしょう」(田中院長)

 

 

「なるべく花粉に接触しない」という基本の徹底を!

 次に日常的な対策について紹介しましょう。田中院長は、「花粉症は、鼻腔にたった20~50個の花粉が入るだけで症状が起こるといわれていますから、『なるべく花粉に接触しない』という花粉症対策の基本を心がけて生活してください」とアドバイスします。

 

【花粉が多く飛ぶ気象条件】

 ●最高気温が高い

 ●雨上がりの翌日で晴れている

 ●風が強い

 ●乾燥している

 

 

≪屋外≫

◎花粉用マスク、メガネを着用すると、体内に取り込まれる花粉の量は、それぞれ1/6、1/4程度に減少するといわれています。

◎天気予報の花粉予測に注意し、飛散量が多い日の外出は控えめにするか、対策に力を入れましょう。

◎外出時は、表面がツルツルした素材の上着を着たり、帽子やマフラーを着用したりして、花粉の付着を防ぎましょう。衣服にスプレーして静電気を抑え、花粉やホコリの付着を防ぐ商品も市販されています。

◎コンタクトレンズは、症状を悪化させるおそれがあるため、できるだけメガネを着用しましょう。

◎帰宅時は、玄関前で衣類や髪の毛に付いた花粉を払いましょう。屋内に花粉を持ち込まないためには、花粉症ではない家族の協力も不可欠。またペットについた花粉を払うことも忘れずに。

 

 

≪屋内≫

◎花粉の粒子は重いため1時間ほどで床に落下します。モップやぞうきんでこまめに床を掃除しましょう。

◎ドアや窓を閉めて花粉の侵入を防ぎましょう。空気の入れ替えは、花粉が飛ばない夜間に行います。

◎花粉が飛ぶ時期は、できるだけ布団は外に干さず、布団乾燥機などを使いましょう。干す場合は、しっかりと花粉をはたいてから取り入れ、さらに掃除機で吸い込みましょう。

◎花粉の粒子が細かく砕かれると軽くなって室内を浮遊することもあります。そんなときは空気清浄機の使用や加湿器で湿度を高めることも効果的です。


プロフィール


田中伸明

たなか耳鼻咽喉科院長。獨協医科大学医学部卒業。東京女子医科大学第二病院(現東医療センター)耳鼻咽喉科病棟医長、医局長などを経て、「たなか耳鼻咽喉科」の院長を継承。たなか耳鼻咽喉科/東京都豊島区目白5-4-7

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