子どもが求めている「質問」とは?[やる気を引き出すコーチング]

「『何かあった?』『今日はどうだった?』と質問しても、子どもは『別に』と言うだけで、何も話そうとしないんです。明らかに、何かあったんだろうなという時も、言いたくないみたいで……。結局、質問しても、自分の子どもからはなかなか引き出せないんです」
顔を曇らせながら、そうおっしゃっていたAさん(小学5年生の男の子のお母さん)、コーチング講座に参加される中で、最近、お子さんとのコミュニケーションに変化があったようです。
「質問する目的を変えてみたんです。そうしたら、子どもがだんだん話してくれるようになってきました」
それはいったいどういうことなのでしょうか。私も深く納得させられたAさんの事例を、今回はぜひご紹介したいと思います。



子どもが求めている「質問」とは?[やる気を引き出すコーチング]


相手を「操作しようとする質問」は機能しない

Aさんのお話はこう続きました。
「『質問で本音を引き出そう』と私が思っていること自体が、子どもには気に入らなかったんだと思います。ある時、『また始まった! お母さんの誘導尋問』と言われました。せっかく子どものためにコーチングを勉強しているのに、カチンときました。でも、たしかにそうだったかも。『何かあったの?』と質問しながら、『答えを引き出してやろう! この子の課題をなんとか私が解決してやろう』という気持ちがずっと根底にあって、子どもが自分から話したいと思っていないのに、私が無理に誘導しようとしていたんだと思います。そうすると、よけいに話そうとしなくなっていく、というか、心を閉ざしていくんです」。

Aさんのお話を聴きながら、これまで私が接してきた高校生や大学生の言葉が思い出されました。
「そっとしておいてほしい時に、『何かあったの?』とつっこまれると、もう、『超うざい!』と思ってしまう。どうせ、話しても親の考えを説教されて終わり。話すだけめんどうくさい」
「『あなたのため』とか言いながら、結局、こっちの意見は聞かないで、親が行ってほしい方向にもっていかれる。そう思ったら、ぜんぜん聞けない」などの<子ども側の気持ち>です。
たしかに、そのとおりだと思います。「子どものため」と言いながら、実際は、「保護者の価値観に基づいた操作」になってはいないでしょうか。「相手を自分の思うように変えてやろう」という意図でなされるコミュニケーションに、相手はどうしても抵抗を覚えるのです。



子どもが興味をもつ話題について質問する

Aさんのお話に戻しましょう。子どもを操作しようとしていたことに気付いたAさんは、その後、お子さんとのコミュニケーションをどう変えたのでしょうか?

「それで、子どもはどんな話だったらしたいのかなと考えてみたんです。ゲームだけは、毎日熱心にやっているんですね。いつもは、『もうそれぐらいにしたら?』『宿題やったの?』なんて言うだけなんですけど、ゲームについての質問をしてみることにしました。『どんなゲームなの?』『どういうところが面白いの?』と。ゲーム中はうっとうしそうなので、ごはんを食べながら、そんな話をして聞いていると、どんどん話し始めるんですよ。『質問で考えや本音を引き出してやろう』と思うのはやめて、『この子が話したいことは何だろう? それを聞いてみよう』という気持ちで質問することにしました。質問の目的が、『引き出そう』から『子どもが話したいことを一緒に楽しく話そう』に変わった感じです。自然にわいてくるコミュニケーションが増えることで、学校であったことも自分から話してくれるようになりました」。

Aさんのお話から、コーチングの前提となる部分を、私もあらためて認識させてもらいました。「相手を動かす」のではなく、「相手が自ら動くのをサポートする」。これがコーチングの前提です。こちらの価値観や意図は脇に置き、お子さんが話したいこと、興味があることからまず聞いてみるのはどうでしょうか。

『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』『言葉ひとつで子どもが変わる やる気を引き出す言葉 引き出さない言葉』
<つげ書房新社/石川尚子(著)/1,575円=税込み>

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

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