「質問」になっていない子どもへの「質問」 [やる気を引き出すコーチング]

「子どもに質問しているんですけど、答えてくれないので、ぜんぜんコーチングの効果があがりません!」という声が、時々寄せられます。
コーチングでは、「~しなさい」と一方的に指示や命令をするのではなく、「どうしたいの?」「どうしたらいいと思う?」などの<相手が自分で考えるよう促す質問>をしていきます。そのほうが、自発的な行動につながりやすいのです。

ところが、実際にはなかなかうまくいかない現実があります。
ふだんから、「~しなさい」と言われ続けてきた子どもにしてみれば、いきなり、「どうしたらいいと思う?」と言われても、考えることに慣れていないため、うっとうしいだけだったりもします。面倒くさくなって、すぐに「わからない」と言ってしまうのもそのためです。自分で考える習慣を付けるためにも、あせらず、辛抱強く、質問を繰り返していくことが大切です。

ただ、質問の役割を果たしていない質問もあるようです。そこで、それらをふりかえってみましょう。

「なぜ」「どうして」の連発

先日も、街中で、小学校低学年ぐらいのお子さんに対して、お母さんらしき人が、声を荒らげている場面に出会いました。お子さんは、かなり激しく泣いています。お母さんは、「なぜこんなところで泣くの? どうして言うことが聞けないの?」と、イライラした声でたたみかけるばかり。なんだか、いたたまれない気分になってきました。

この場合、質問の形はしていますが、残念ながら、相手を責めるニュアンスしか伝わりません。相手に答える余地をまったく与えていませんので、言われたほうは、質問されたとは感じないのです。ただ叱られた、とだけ感じてしまいます。

じゃあ、コーチングではどうするの?という話ですが、「なぜ」と聞くかわりに「どうしたの?」「何かあったの?」と穏やかな声で質問します。泣いているのには、それなりの理由やきっかけがあったはずです。それを確認したうえで、「どうしたいの?」「今、どうすればいいかな?」などの質問をしていきます。子どもを責めるような言い方をするのではなく、純粋に、子どもの状況や気持ちを聞いて、対応を一緒に考えます。大人が感情的にならなければ、子どもも冷静に考えようとします。

「なぜ」「どうして」を使わないようにするだけでも、ずいぶん、お子さんとのコミュニケーションが変わるはずです。

「はい」「いいえ」しか引き出さない限定的な質問

「毎日、何度も子どもには質問をしていますよ」とおっしゃるかたでも、質問の内容を聴いてみると、「もう起きた?」「準備できた?」「ごはん食べた?」「宿題終わった?」……。たしかに、質問の形はしていますが、子どもは質問されたとは思っていないでしょう。
「まだやってないんでしょ。早くしなさい!」という指示命令形として受けとっています。「はい」か「いいえ」しか引き出さない限定的な質問だけで、やる気や自発性を引き出すのは、残念ながら、まず無理です。

「どこまで準備できてる?」
「あとどれぐらいかかりそう?」
「何時までに終わらせる?」
「何からとりかかる?」
など、相手が考えるような質問をしていくのがコーチングです。

ここでも、「どうして」を除く「ど」のつく質問や、「何」から始まる質問を、穏やかな口調で投げかけることがポイントです。ここを意識するだけでも、子どもたちは、けっこう自分の考えを話してくれるようになるものです。あきらめずに、試してみていただくとよいでしょう。

(筆者:石川尚子)

プロフィール


石川尚子

国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチ。ビジネスコーチとして活躍するほか、高校生や大学生の就職カウンセリング・セミナーや小・中学生への講演なども。著書『子どもを伸ばす共育コーチング』では、高校での就職支援活動にかかわった中でのコーチングを紹介。

お子さまに関するお悩みを持つ
保護者のかたへ

  • がんばっているのに成績が伸びない
  • 反抗期の子どもの接し方に悩んでいる
  • 自発的に勉強をやってくれない

このようなお悩みを持つ保護者のかたは多いのではないでしょうか?

\そんな保護者のかたにおすすめなのが/
まなびの手帳ロゴ ベネッセ教育情報サイト公式アプリ 教育情報まなびの手帳

お子さまの年齢、地域、時期別に最適な教育情報を配信しています!

そのほかにも、学習タイプ診断や無料動画など、アプリ限定のサービスが満載です。

ぜひ一度チェックしてみてください。

子育て・教育Q&A